どこにそんな要素があったんだよ
「……連れてきた」
あれから、街に着いた俺は宿に連れてこられていた。
そして、リアがそう言って、宿の一室に俺を連れて入っていった。
「先程ぶりですね」
すると、そこには椅子に座って紅茶か何かを飲んでいるフィオラがいた。
……良かった。……いや、別に良くは無いけど、フィオラだけなのは不幸中の幸いってやつだろ。
だって普通にリアが居るんだし、あの二人がいることも想定してたんだしな。
「……まぁ、そうだな」
そう思いながらも、取り敢えずフィオラが怒ってるのか怒ってないのかが分からなかったから、当たり障りがないように、そう答えた。
「それで、何故、わたくしからいきなり逃げたのかを聞いてもよろしいのでしょうか?」
ダメだ。……そう言いたいけど、そんなことを言っていい雰囲気じゃないよな。……ただ、正直に言う訳にもいかないし、嘘をついてもバレる。
救いなのは、フィオラに怒ってる様子がないってことかな。
「リア、説明頼む」
こういう時は、リア頼みだ。
さっきみたいに追われる側だったり、敵に回したら怖すぎる存在ではあるけど、味方ならリアはめちゃくちゃ心強いんだよ。
「……襲われそうになってた。だから、フィオラを守るためにフィオラから離れた。それで、離れたところでそいつを倒した。それだけ」
……なんか、俺の事をめちゃくちゃ信用してくれてるリアには本当に申し訳なくなってくるな。
……これ、酔ってたとはいえ、絶対体を重ねたからだよな。
「そうなのですか?」
「そうだな。俺が襲われた」
襲われた事は事実だから、そう聞いてくるフィオラに向かって、堂々と俺はそう言った。
「そうですか。……一応言っておきますけど、わたくしはそんなことだろうと思ってたんですよ?」
いや、全然普通に俺が死にたくないから、逃げようとしただけだけど。
「ただ、わたくしの話を聞いたノエリア様が飛び出して行ったんですよ」
「……違う。……違くないけど、私だって信じてた。ちょっと、心配だっただけ」
……それ、俺が逃げないか心配だったってことだろ? 信用してないじゃん。……いや、信用しないで正解なんだけどさ。
俺、あのままだったら普通にラミカと一緒に逃げてたし。
「……リア、そういえばなんだが、アリーシャとヘレナもこの街にいたりするのか?」
そう思いながらも、フィオラが別に怒ってるわけじゃないと知った俺は、そう聞いた。
だって、気になるじゃん。……別に会いたいって訳じゃないぞ? もしここに居るのなら、またリアを護衛としてどこかに行く可能性だってあるし、逃げるチャンスが産まれるかもしれないんだし、そういうのは知っときたいだろ。
「……居る。でも、今二人は忙しいから、会えないかも」
「そうか」
さっきも思ったけど、別に会いたいわけじゃないからな? ……まぁ、そんなこと言ってリアに後で二人に伝えられたら面倒だから、言わないけど。
「では、わたくしはもう一仕事してきますね。また明日、護衛をよろしくお願いします」
「あー、いや、もう護衛はいいのか?」
ラミカを信用していないわけじゃないけど、ラミカが把握してない暗殺者を用意されてる可能性だってあるし、一応、フィオラの近くに居ときたいと思って、俺はそう聞いた。……まぁ、ラミカなら、把握してなかったとしても、気配で察して処理してくれるだろうし、ら本当に一応だ。
「はい、今日はもう自由にしてくれて構いませんよ?」
「……いや、言い方が悪かった。もう少し、フィオラと一緒にいたい。護衛として、一緒に居たらダメか?」
「へっ? あ、は、はい。わ、わたくしとしても、護衛が側に居てくれるのは心強いですし、大丈夫ですよ」
良かった。
これで断られてたら、リアを説得して、こっそりとフィオラの近くにいることになってただろうしな。
「……浮気? ……二人以外、許してないのに」
そう思っていると、リアは服を少し引っ張ってきて、小さくそう言ってきた。
違う。今のやり取りのどこに浮気の要素があったんだよ。……いや、そもそもの話、仮に俺がフィオラに告白か何かをしてたとしても、別にリアと付き合ってるわけじゃないんだから、浮気にはならないんだよ。……あの日の後ろめたさがある限り、そんなこと言えないけど。……俺だって、リアの事が嫌いなわけでは無いし。
と言うか、むしろ二人は良かったのかよ。……ならなんでラミカの時はあんな感じだったんだ? ラミカの場合はふざけて言ってるって気づいてたからか? ……まぁ、別になんでもいいか。
「違う」
そう思いながらも、俺はちゃんと否定の言葉を口にした。もちろん、浮気に対しての言葉だ。
「……そう。……私も行きたいけど、もう休憩時間も終わるし、私は戻るね」
「ん? あ、あぁ」
マジかよ。リア、休憩時間でここにいたのかよ。
と言うことは、ラミカが早くフィオラを狙ってる奴を始末してくれたら、逃げられるってことか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます