何故か修羅場

 よし、俺にはラミカっていう下手したらリアと同等くらいに強い心強い味方がいるんだ。

 なんとかなるだろ。


「こんなところで、何してるの?」


 そう思っていると、さっきのラミカみたいに突然俺の目の前に俺と同じ黒髪の少女、リアがそう言いながら現れた。

 ……まぁ、そうだよな。……リアだと思ってたよ。なんでいるのかは知らないが、何となく察してたよ。

 ただ、これはどっちなんだ? ……俺が逃げたことに気がついてるのか、気がついてないのか。


「いや、たまたま知り合いを見つけてな。フィオラの護衛もあそこまで送り届けたなら、もういいと思ったし、ここで見逃したらもう会えないと思ってな?」

「……そうなの?」


 俺がそう言うと、リアはラミカに向かってそう言っていた。

 頼むから、話合わせてくれよ?


「ん〜? そうなんじゃない〜?」


 よし、良かった。ラミカが話を合わせて……はくれてないかもしれないけど、余計なことを言わなかっただけで十分だ。なんか上手く誤魔化せたっぽいしな。

 

「と言うか〜、誰〜?」


 そう思っていると、今度はラミカの方からリアのことを聞いてきた。

 ……なんて言うのが正解だ? 正直に公爵家が抱えてるSランク冒険者だって言った方がいいのか? ……分からないな。……いや、もうラミカは組織を抜けるって言ってるんだし、別に正直に言ってもいいのか。


「あれだ、公ーー」

「恋人」

 

 俺が正直にそう言おうとしたところで、俺の言葉に被せるようにしてリアがそう言ってきた。

 ……否定したい。凄く、否定したい。……でも、実際恋人同士の人がすることをしてるのは事実だし、言い返せない。……いや、俺は無理やり襲われたんだけどさ!


「は? ねぇ、どういうこと〜?」


 そう思っていると、ラミカが笑顔でそう聞いてきた。

 ……なんか、ラミカ元先輩の笑顔が深まった気がする……どういう感情なんだよ。……祝福してくれてたりしないかな? しないよね。

 ただ、怒ってるとも思いにくい。……だって、仮に、仮にだけど、俺とリアが付き合ってたとして、怒る意味が分からないし。……じゃあ、消去法で悲しんでる? いや、それもおかしいだろ。

 やっぱ分かんねぇ。


「体だって重ねた」


 違っ……くないけど、それマジで今言わないで欲しかったな。

 ほら、見ろよ。お前は組織に命を狙われている最中に何をしてるんだ? って感じでラミカ元先輩の笑顔が更に深まっていっただろ。

 違うんだよ。俺が襲われた側なんだよ。ラミカなら分かるだろ? 俺とリアの間にある実力の差を。襲われたら抵抗できないんだよ。


「……体? ねぇ〜、ほんとにどういうこと〜? あいつが勝手に言ってるだけだよね〜?」

「…………一応、事実ではあるな。……俺の意思じゃないけど」


 ラミカに笑顔でそう聞かれた俺は、小さくそう言った。……最後の方は特に小さく。

 

「ふーん、つまり、無理やりってこと〜?」


 ラミカ……そんなに大きな声で言わないでくれ。リアに聞こえるだろ。


「無理やりじゃない。合意の上」


 ほら、案の定聞こえてるじゃないか。……それと、全然合意の上じゃないからな? めちゃくちゃ強引だったからな? 酒に酔って記憶を改ざんでもしたか?


「……ん〜、どっち〜?」


 ラミカ、お願いだから俺に聞かないでくれ。

 俺が襲われたってのは事実だし、二回目は置いておくとして、一回目は俺が無理やり酒を飲ませた結果あんなことになったんだし、あんまり本人には言いにくいんだよ。

 今言ったら絶対リアに聞かれると思った俺は、ラミカから目を逸らして、言った。


「ほ、ほら、もういいだろ? 取り敢えず、俺はラミカと用事があるから、またな、リア」

「ん〜? うん、そうだね〜」

「……怪しい。……私も、行く」

 

 リアからさえ離れられればラミカという強力な味方を連れて逃げることができるから、そう言ったんだけど、リアがそんなことを言ってきやがった。

 ……いや、そもそもの話、あの二人の護衛はどうしたんだよ! ……俺が人のことを言える立場じゃないことは分かってるけどさ。

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