俺の勘は最近よく当たる

 いざ街に入ろうという時に、困惑したように、門番に声をかけられた。……多分、俺が。

 いや、よく考えたら、人間を一人持ちながら街に入ろうとする奴がいたらそりゃ止めるよな。

 いくら聖女の近くにいるとはいえ、止めないわけにはいかないよな。


「俺は聖女の護衛で、こいつが聖女を襲おうとした」


 そう思いながらも、俺は簡潔にそう言った。

 別にもういつでも逃げられるんだし、急ぐ理由も無いんだけど、なんとなく、早く話を済ませて、俺はここから離れたかったんだ。


「……ッ、少々お待ちください」


 すると、俺の言葉を聞いた門番は聖女に……フィオラに一瞬だけ視線を向けると、慌てたようにそう言って走っていった。

 ……ただの門番なんだし、上司を呼びに行ったってところかな。


 馬車も止められてるし、門番が上司を連れてくるのを待とうとしていると、急激になにか嫌な予感がした。

 

「おい、あんた、コイツ、もう少しで目を覚ますだろうから、捕まえといてくれ」

「えっ!? あ、ちょっと!」


 そんな嫌な予感に襲われた俺は、その嫌な予感を無視する……なんてことはなく、近くにいた衛兵かなんかにそう言って、スキルを解除しながらフィオラを襲ってきた奴を無理やり渡して、街から離れるように走り出した。

 俺は最近勘がいいんだ。最初アリーシャの家から逃げようとした時だって違和感を覚えたし、フィオラのところに連れてこられるって時も嫌な予感があった。

 絶対、今はこの勘に従った方がいい。

 そう思いながら、更に走るスピードを上げて、森の中に入った。


 ここまで来れば……いや、もう少し走るか。

 今日はずっと歩きっぱなしだったし、フィオラを襲ってきた奴を捕まえたりもしたし、普通に疲れてるんだ。……まぁ、組織にいた時の方が休み無しでもっと疲れるようなことをしてきてたんだけどさ。

 ……とにかく、疲れてきたから少し休もうとスピードを落とそうとしたんだけど、俺の勘が休まずに走った方がいいと否定するから、勘に従って休むことなく走り続けた。


「グルルルルル」


 そうして走っていると、そんな唸り声を上げながら獣の魔獣が現れた。

 ……なんでいるんだよ。この辺に魔獣が出るなんて話、聞いたことないぞ。……本当に運が悪いな。


 そう思いながら、いつも通りスキルを使って後ろに回り込んだんだが、その瞬間、魔獣は俺の首元を噛みちぎろうと反応してきやがった。

 

「ッ」


 あっぶな。……前世の記憶を思い出して初めてだな。リア以外にこのスキルに反応されたのは。

 と言うか、どうする? なんか相手の魔獣が無駄に俺を警戒してくれてるから、馬鹿みたいに突っ込んで来ないけど、痺れを切らして馬鹿みたいに突っ込まれた時点で俺終わるぞ。

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