護衛なんだし
「そのお方はどなた、ですか?」
仕方なくフィオラの元に気絶している襲撃者を連れて戻ってきた俺は、開口一番にそう聞かれた。
「フィオラの命を狙おうとしていたから、捕まえた」
「わ、わたくしの、ですか?」
だから、正直にそう答えたんだが、フィオラは動揺したようにそう聞いてきた。
……? 何を動揺してるんだ? 聖女なんて大層な肩書きがあるんだし、狙われるのも不自然なことでは無いだろ。……いや、俺の感覚がバグってるだけで、命を狙われるってのは普通に考えたら嫌か。
俺だって、組織の奴らは仕方ないとして、公爵家には命を狙われて追われたくなんてないしな。……時間の問題かもしれないけど。
「そう言ってるだろ」
「……そう、ですか。……何故、かは分かっているのですか?」
「いや、それは後で尋問でもして貰え」
「……はい」
明らかにフィオラの元気が無くなってきてる。……街に着いたらもう逃げるから、俺にはもう関係ないとはいえ、街に着くまでが気まずいだろ。
「フィオラ、ちゃんと俺が守ってやるから、安心しろ」
そう思った俺は、そう言った。
街に着くまでではあるがな。……どうせこいつ以外には襲ってくるやつなんて居ないし。
「は、はい」
すると、フィオラは安心してくれたのか、そう言って頷いてくれた。
そして、そこからフィオラは何故か一言も喋ることなく、目的地の街が見えてきた。
いや、俺としてはフィオラが話しかけてこないのはありがたいけどさ、つい昨日……というか、今日あの街を出たばかりの時とかまたお話しましょうみたいなことを言ってたのに、なんで一言も話しかけてこないんたま? いや、ありがたいんだし、単純に興味本位だ。
「もうすぐ到着致しますよ」
そう思っていると、御者のそんな声が聞こえてきた。
やっと逃げられるな。
「……あなたは、どうやってその人を見つけたんですか? 周りを警戒したい、というのは嘘、ですよね」
……あ、あれ? もしかして、あの時の言葉、嘘って判定になってたのか? い、いや、犯人は捕まえてるんだ。だったらここは知らんぷりでいこう。
「なんの事だ? 俺はちゃんと警戒して、こいつを見つけたんだぞ?」
事実だ。
なんとなくの場所は分かってたとはいえ、警戒してなかったら見つけられなかったかもしれないしな。
「……そう、ですか? ……では、一つだけお聞かせください」
「……なんだ?」
突然フィオラにそんなことを言われた俺は、身構えながらそう聞き返した。
「わたくしの為、ですか?」
「え? あ、あぁ、そうだよ。フィオラに死んで欲しくなかったからだ」
聞きたいことってそんなことかよ。
身構えて損したな。
俺は護衛なんだし、フィオラの為に決まってるだろ。
「ッ、そう、ですか」
すると、俺の返答を聞いたフィオラは何故か動揺したようにそう言っていた。
? よく分からんけど、まぁ、別にいいか。
もうそろそろ街の門のところに着くし、馬車に近づいておくか。
そう思った俺は、フィオラを襲おうとしていた奴を持ちながら、馬車に近づいた。
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