いつ離せばいいんだ?
……これ、いつ手を離せばいいんだ? もう、手を差し出して、二人は俺の手を握ってから馬車を降りている。
俺はてっきり、馬車を降りたら手を離して、そのまま公爵家の中に行くんだと思っていたんだが、二人は全然手を離してくれる様子が無かった。
いや、正確には、体の向きを変える為に、一度は手を離してくれたんだが、何故か、また手を握られたんだ。
……分からない。だから一瞬、勝手に二人の手を離そうかとも思ったが、そんなことをして、こうやって手を繋いで家まで行くのが普通だった場合、二人に恥をかかせてしまうし、離せなかった。
それとなく、手を離さなくてもいいのか? という意図を込めて、俺はヘレナ……はやめて、アリーシャの目を見たんだが、小さく首を傾げられただった。
……これでいいってことか?
「……では、私はこれで」
俺がそうしていると、公爵家部下の男はそう言って、俺たちの目の前から消えていった。
そして、それと変わるようにして、スラッとした身長で上手くまとめられた短めの髪の大人なイメージが強いメイドが俺たち? ……いや、ヘレナとアリーシャなのか? ……まぁ、それはともかく、こっちに近づいてきた。
「初めまして、メイド長のクローリスと申します。お嬢様方お二人を助けてくれたことを公爵家に仕えるメイドを代表して、お礼を申し上げます」
「……大丈夫……ですよ。気に、しないで」
いや、だって、元はと言えば誘拐したの俺なんだもん。
マッチポンプ感が凄くて、マジで申し訳ない。
「ありがとうございます。……まだまだ感謝の気持ちを伝えたりませんが、旦那様がお待ちですので」
そう言って、メイド長……クローリス、さん……心の中だし、失礼なのは分かるが、呼び捨てでいいか。
クローリスが代表して、俺たちを案内してくれた。
正直、最初に話しかけられた時は、やっぱり今二人と手を繋いでいるこの状況がおかしいんだと思ったけど、特に何も気にしてる様子はなかったし、やっぱりこれが普通なんだろう。
そもそも、そうじゃなきゃ、説明がつかないしな。
アリーシャはこんな方法で俺をからかうようなタイプじゃないと思うし、ヘレナは単純にプライドが高いから、俺なんかと理由もなく手を繋ぎ続ける訳が無いしなと思うし。
……そう思いはするんだけど、なんか、違うんだよなぁ。……今の状況をもし、俺が見てる側だったとしたら、ただ美少女二人と手を繋いで、エスコートっていうより、イチャついてるように見える気がするし。
……それでも、二人が手を離す様子がないんだから、これでいいんだと思う。
さっさと公爵様に会って、帰……る家は無いから、この街……公爵領を離れよう。
俺にとってここは、いつ俺の犯罪がバレるか分からない地雷なんだから、さっさと離れるに限る。
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