第47話 激闘の果てに
「終わった……」
さすがに体力の限界だ、もう立っていられない。
1時間以上ぶっ通しで戦い続けるなんてダンジョンでもあり得ない、加えて後半はEランクのモンスターばかり。
秘剣も奥義もこんなに使ったのは初めてだ、いくら昔に比べて成長したとはいえ無茶をしすぎたかもしれない。
しかしデュランダルはやっぱり燃費が悪い。
奥の手だから、と言ってしまえばそれまでなのだが、今回改めてその弱点が浮き彫りになってしまった。
それに、単なる予感でしかないのだが、今回の一件はこれで終わりではない気がするのだ。
むしろ、何か良くないことの始まりなのでは──
「悠真くん、大丈夫?」
由那が俺の顔を覗き込みながらそう言った。
「ああ、大丈夫だけど」
「そっか、それならいいんだけどなんか怖い顔してたから」
「ごめんごめん、疲れすぎててさ」
どうやら顔に出てしまっていたらしい。
もしもこれが何かの予兆だとしたら、俺も今以上の力を手にする必要があるかもしれない。
そうなったらデュランダル以上の秘剣を生み出すことになるのだが、その辺は一旦置いておくとしよう。
俺は身体を起こし、その場に座ったまま振り返る。
霜の巨人が出てきた時は本当にどうなるかと思ったが、結果的に学校の被害はゼロ。
今は素直にこれを喜ぶべきだ。
「凛さん、本当にありがとうございます。おかげで助かりました」
「気にしないで。それよりもごめん、遅くなってしまった」
「大丈夫ですよ、一番大変な時に来てくれましたし」
「本当はもう少し早く来るつもりだった。ただ道中にもモンスターがいたせいで時間がかかってしまった」
「えっ、ここ以外にもいたんですか?」
「ええ、規模はここが一番だったけれど」
ますます嫌な予感が増していく。
過去にダンジョンからモンスターが現れた事例では多くても数体程度だったらしい、明らかに今回のそれは規模が違いすぎる。
「何が起きたんでしょうか」
「私にはわからない」
「この辺りの調査、した方がいいよね……?」
「そうだな、まずはそれ優先か」
とりあえずモンスターが出現した以上、この周辺にダンジョンがあるはず。
とはいえ今までは聞いたことがないので、恐らくはここ数日で新たに生成されたものだろう。
内部調査もいずれ行わなければならないだろうが、一旦場所だけでも確認して協会の方へ報告しておく必要がある。
「はぁ、しんどいけど行くかぁ……」
戦うのはまだしも普通に動くことはできる。
重たい体に鞭を打ち、俺たち四人は高校周辺にあるであろうダンジョンの入り口を探すことにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「見つからないな……」
探し始めてから1時間、俺たちは一つも見つけられずにいた。
「この近くはだいたい探したよね?」
「うん……結構見て回った……」
高校を中心とした半径数100mの範囲はざっと歩き回ったはず。
あれほどのモンスターが出現したのだから、複数のダンジョンが見つかってもおかしくないと思っていたのだが、結果はゼロ。
それよりも不可解なのは──
「そもそも痕跡がないわ」
どこかのダンジョンからモンスターが現れ、ソイツらがグラウンドへと押し寄せていたのならば、グラウンドから入り口までモンスターが行軍した痕跡が残っているはず。
だがそういった類のものは一つも見つかっていない。
高校の周囲は普段となんら変わらない景色が広がっており、グラウンドにだけモンスターと戦闘の跡が広がっているのだ。
「一体どうなってるんだ」
ここからわかることは、モンスターはあの霜の巨人のようにグラウンドに直接現れたということ。
ということはグラウンドに直接ダンジョンが生成され、俺たちはそこから現れたモンスターと戦い続けていたのだろうか。
なぜ今は入口がないのかは気になるが、もしかしたら戦闘の途中で消えてしまったのかもしれない。
「ダメだな、これ以上考えたってわかるはずもない」
少なくとも今すぐに答えが出る問題ではなさそうだ。
幸いにも救援を要請した時の協会が派遣した探索者はこっちに向かっている、後の詳しい調査は一旦彼らに任せることにしよう。
「俺たちは一旦学校に戻ります、一応授業の時間ですし」
「わかった、それじゃあ今日の夜……はどうなるかわからないから、明日また集まりましょう」
「わかりました。集合は俺の家でいいですよね」
「ええ、それでいいわよ。じゃあね」
そう言うと凛さんはとんでもない速さで走っていった。
そっちの方向には駅はないのだが、大学まで走って行くつもりなのだろうか。
ここに来るまでもモンスターと戦っていたらしいし体力お化けだな。
「それじゃあ私たちも戻ろっか!」
「そうだな、てか今頃どうなってんだろ」
パニックになっていなければいいが。
そう思いながら帰って俺たちを待ち受けていたのは、予想外の展開だった。
「悠真!お前がニルだったのかよ……!」
「悠真くんだけじゃなくて二人も!」
「まさかうちのクラスに世界最強パーティがいたなんて……」
あれだけの人数の前で、注目も集まる中、秘剣も奥義も使ってしまったのだ。
いくら格好が配信中と違って制服だったとしてもバレるに決まってる。
そう、俺はこの日ついに自分がニルであったと身バレしてしまったのであった。
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