第13話 第一回ダンジョン探索講座

 放課後、俺は予定通り配信のためにダンジョンに来ていた。

 今日来ているのはBランクダンジョン、最も難易度の低いダンジョンである。


「どうも、ニルです!今日はBランクダンジョンの『希望のほとり』にきています!」 


 このダンジョンの内部には雄大な自然が広がっており、穏やかに流れる大河のほとりには、年中満開の桜が咲き誇っている。

 そのため観光地として有名であり、またダンジョン探索の初心者にもおすすめとされていることから、いつもたくさんの人で賑わっている。


「今日は第一回ダンジョン探索講座、ということでいろいろな基本について教えていきます!」


 歩夢さんと話し合った結果やることになった、モンスターの倒し方やダンジョン探索のポイントを教える配信。

 まずは基本のキから、と思い最初は誰でも来れるBランクダンジョンを選んだ。


 とはいえ実はBランクダンジョンはこれが二回目、今までDランクの自分にとっては格上と思っていたので来たことはなかった。

 ただなにも知らないままで配信をするのも怖いので事前に情報を調べたのと、一昨日の放課後に試しに潜って軽くモンスターと戦ってきた、その結果これが二回目。


 これだけの知識で講座なんてできるのかと少し怪しいが、まあやるしかない。


「この辺りは観光客も多いので、ちょっと奥の方に行きますね!」


 ただここは半分観光地になっているため、なかなかモンスターも入り口付近には現れない。

 なので俺はダンジョンらしさの増す奥地へと移動した。


「この辺ならちょうどいいかな」


 景色はそれほど変わらない。

 寝転がったら心地良さそうな草原と、どこから吹いているのかわからない風に舞う桜吹雪が視界一面に広がっている。


「それにしてもホント綺麗だな、そう思いませんか?」


 チラリとコメント欄を見ると、なぜか違うことで盛り上がっている。

 ここまで来るスピードが速かったとかなんとか、というか今日も10万人近い人が来ている。


「みなさん来てくれてありがとうございます、それじゃあ……お、来た!」


 タイミングよくモンスターが来てくれた。

 Bランクダンジョン定番のゴブリンが三体。

 コイツらなら俺も一昨日に戦った上に色々調べ尽くしたので、細かい解説も可能だ。


「ダンジョンといったらモンスター、人間を襲う危険な存在です。ただ倒した時に取れる魔石や素材はすごく有用、というのはもうみなさん知ってますよね」


 俺は手頃なナイフを二本、手のひらの上に創造する。


「売ればお金になったり便利に使えるので、基本は倒していきましょう。こんな風に」


 投げたナイフが頭に突き刺さり、二体のゴブリンは消滅する。

 

「お、出ましたよ」


 霧散して消えた後に残ったのは、ゴブリンの爪や牙、そして魔石。

 わざと残した一体が飛びかかってきたので、俺は身を翻して避ける。

 というか邪魔なので、剣を地面に突き立てて光の結界を創り出し、その中にゴブリンを閉じ込めた。


「爪や牙は矢尻に使うのもいいですし、こうやって飛び道具に使うのもありですよ」


 俺は爪を人差し指と中指で挟んで持つと、親指で弾いて飛ばす。

 こうして飛び道具として使えるのは便利で、俺も昔は割と使っていたことがある。

 初心者のうちは結構おすすめの技術だ。


「あとはゴブリンの紹介もしますね」


 結界を解くと同時にゴブリンの頭を掴み、近くを飛ぶカメラに向ける。


「ご覧の通り爪や牙はありますがそこまで力はないため、腕や足が吹っ飛ばされる心配はありません。毒もないので安心です、もしやられたら今見えるようにその辺の薬草を塗れば大丈夫です」


 ゴブリンに苦労する人は少ないかもしれないが、一応弱点なども紹介しておこう。


「弱点は基本人間と同じ、まず額を狙えば大丈夫です、あとは心臓ですね。耐久力もそこまでないので、狙うのが苦手な人は思い切り強い衝撃をぶつけるのもありです。ゴブリンに関してはざっとこんな感じです」


 特にこれ以上話すことは思いつかない。

 ゴブリンを宙に放り投げ、落ちてきたところを斬りつける。

 その身体は他の二体と同様霧散して、素材を落としていった。


「これは後で拾ってお金にしましょう。それじゃあもう少し進みますねー」




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




史上最強の男 ニル専 part.26


64:名無しの探索者

今日はBランクダンジョンか、龍の巣窟行くと思ってた


65:名無しの探索者

無双を期待してたんだけどな


66:名無しの探索者

は?なんだ今のスピード


67:名無しの探索者

強化魔法なしでこれって速すぎだろ


68:名無しの探索者

コイツ人間か?


69:名無しの探索者

ここマジで奇麗だな、行ってみたいわ


70:名無しの探索者

ゴブリンか、さすがに俺でも勝てる


71:名無しの探索者

>>69

行ったことあるけどおすすめ


72:名無しの探索者

なんだよ今の技


73:名無しの探索者

こんなふうに(投げたナイフを正確にゴブリンの頭に命中)


74:名無しの探索者

些細な動きで強さがわかるのヤバイ


75:名無しの探索者

爪や牙の説明じゃなくてその謎の結界を説明してくれ


76:名無しの探索者

これなんかの魔法?見たことない


77:名無しの探索者

障壁魔法ではなさそうだしなんだこれ


78:名無しの探索者

こうやって(爪を指で弾丸のように飛ばす)


79:名無しの探索者

これ漫画で見たことあるわ


80:名無しの探索者

俺らが気になってるとこ一つも説明してくれないwww


81:名無しの探索者

当然と思ってやってること全部異常だよな


82:名無しの探索者

平然とゴブリンつかむのか


83:名無しの探索者

扱い慣れしすぎだろ、どんだけ戦闘経験あるんだ?


84:名無しの探索者

その辺の薬草ってどれ?


85:名無しの探索者

ここ草原なんですが……


86:名無しの探索者

植物学者にしかわからねーよww


87:名無しの探索者

薬草あったんだ、てことはコイツ全部区別ついてんのか?


88:名無しの探索者

ダメだ、参考になる話してるはずなのにほかのこと気になりすぎて頭に入ってこない


89:名無しの探索者

!?


90:名無しの探索者

今すごいことしなかったか?


91:名無しの探索者

腕の動き見えなかった


92:名無しの探索者

消える前のゴブリン100カ所くらい斬られてなかった?


93:名無しの探索者

コイツ本気でやべーよ


94:名無しの探索者

ガチ恋勢と荒らしの末路


95:名無しの探索者

やっぱ今のも特に言及はなしか


96:名無しの探索者

人類には早すぎた配信

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