第7話 女子高ってこんな感じ?
朝目が覚めると見慣れた風景は一変しており、一瞬何が起こっているのか分らずパニックになりかけた。
着ているのは今まで使っていた中学時代のジャージではなく、ピンクと白のチェック柄に袖や襟にフリルいっぱいの可愛らしいパジャマだし、ベッドのシーツやカーテンはピンクに変わっており、枕元にはぬいぐるみが置いてあった。
ちょっとしたパニックになった後、昨日のことを思い出し始めた。
昨日ヘトヘトになりながら転校初日を終え、家に戻ると部屋の中が一新されていた。
いままでのプラモデルや漫画であふれていた男子高校生の部屋から、カーテンや机など新しいものに替えられたおり、ピンクを基調とした女の子らしい部屋になっていた。
本棚の漫画も少年漫画から少女漫画に変えられえている。
こんなことをするのは、あいつしかいない。
「もしもし、葵、僕の部屋勝手に変えただろ?」
慌てて葵に電話すると、向こうも待ち構えていたのかワンコールでつながった。
「気に入ってくれた?」
「なんで部屋まで変えるんだよ」
「だって、友達家に呼んだ時に部屋が女の子じゃないと、バレるかなと思って。私って、優しいでしょ。学校に行っている間に、業者にお願いして変えてもらったの」
本当は葵に無理やり女の子にならされているのだが、設定上はトランスジェンダーということになっている。確かに、プラモデルや少年漫画が並んでいる前の男子高校生の部屋を見られたら、本当のことがバレるところだった。
「たしかに、そうだな」
「でしょ。あとそれと、ベッドの下にあったいやらしい本はお母さまに返しておいたって、連絡があったわよ」
「ベッドの下って!」
慌ててベッドの下をみてみるが、隠しておいたあの本がなかった。
「夕貴ってああいうのが好きなんだね。豊胸手術したくなったら、いつでも言ってね。そしたら、本買わなくてもすむでしょ」
ベッドの下にあった、苦労して手に入れたいわゆる18禁の本も没収されたようだ。巨乳好きなの葵にばれてしまい、恥ずかしさのあまり一方的に通話を終えた。
昨日のやり取りを思い出したところで、ベッドから起きて朝の準備に取り掛かる。女の子の準備は男よりも何倍もかかってしまう。
あわただしく朝ごはんを食べた後、髭を丁寧に剃り、寝ぐせを直す。
なんとなく前髪が気になってしまい、何度も調整を繰り返す。
制服に着替えた後は、もう一度鏡の前に戻りリボンが曲がっていないかなどチェックする。女の子になると鏡を見る回数が増えてくる。
そのたびに、女装している自分を見ることになるので嫌ではあるが、鏡を見て微調整を繰り返すたびに女の子に近づく気がして、結局何回も見てしまう。
学校に着き教室に入ると、すでに葵は着ており友達と仲良く談笑していた。
「葵、おはよ」
葵にあいさつした後、カバンから教科書を取り出して机に入れていると、急に後ろから抱き着かれた。
「夕貴、おはよ。ちゃんと一人でこれたね」
「まあ、なんとかね。って、なんで、抱き着くの」
「女の子同士、普通だよ。よしよし、ちゃんとブラジャーもしてるね」
耳元で葵が小声でつぶやいた。胸を揉む指の動きがくすぐったい。
「ん、もうやめて」
「あら、感じちゃった?」
膨らんできた下半身をみんなにバレないように、必死に手でおさえている僕の姿をみて笑いながら葵は去っていった。
完全に
1時間目の英語の授業が終わると、僕は葵のもとへと向かった。
「葵、トイレに行きたいんだけど、ちょっとそれで……」
「えっ、なに?」
葵の耳元で伝えた。
「女の子のトイレのやり方がわからないって?しょうがないな」
恥ずかしい内容なので、ヒソヒソ話で葵にお願いしたのに、葵はわざと周りに聞こえるような声で返事をした。
近くにいた右田さんと佐野さんも笑っている。
クラス中から注目を浴びるなか、葵に手を引かれながら教室を出た。
女子高であるこの学校には男子トイレは教室とは別棟にある職員用しかなく、足早にトイレへと足を進める。
職員用トイレには、男の先生は数名しかいないこともあり誰もいなかった。
「って、なんで葵も入って来るの?」
「別に誰もいないからいいじゃない。それに、口では説明しにくし」
葵と一緒にトイレの個室に入った。
「それでさ、トイレの時ってスカートどうするの?」
昨日トイレするときはどうするのかわからず、下に降ろすと床につきそうなので、いったん脱いでから用を済ませた。
毎回脱ぐのも大変だし、女子ってみんなどうしているんだろうと疑問に思っていた。
葵は僕のスカートに手をかけると、一気に腰の上まで上げ、たくし上げた。
「ほら、こうやってスカートを上に上げて、束ねてわきに挟んで固定するの。わかった?」
そうか、降ろすんじゃなくて、上に上げるのか。逆転の発想に感心してしまった。
「難しくない?」
「慣れれば大丈夫よ。スカートが床についても、便器についてもダメだからね。今日は下着水色なのね。昨日のピンクもよかったけど、水色もいいね」
そう言って葵は笑いながらトイレの個室から出て行った。
トイレのやり方に感心していたので、葵に下着を見られることは忘れていた。そのことに気付くと急に恥ずかしくなって、顔が熱くなってきた。
上にたくし上げて束ねて、わきで挟んだまま用を足すって、女子って器用なんだなと感心しつつトイレを済ませた。
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