半分ろうそく [ファンタジー]

付き合い始めて1週間。高田君の自宅にお呼ばれした。


高田君は大富豪の御曹子。イケメン。さらにミステリアス。ファンも多い。

そんな人と私がお付き合いするだなんて夢のような話だが、何しろ告ってきたのはあちらなのだ。


それにしても想像を絶する豪邸だ。

城と言ってもいいくらいに。


玄関から入るとだだっ広いエントランスに高田君がひとり立って出迎えてくれた。


「暗くてごめん。停電してしまったんだ…」


高田君が言った。


確かに屋敷の中は真っ暗だった。

高田君の持っているロウソクの灯りだけが頼りだった。


…持っているロウソク?


いや、違った。高田君の指から直接炎が出ているのだった。


彼の方からふわっとアロマのような香がした。


「た、高田君! それ…!?」


「あ、これ? 僕、半分ろうそくなんだ。母さんがろうそくで」


…え、どういうこと? と思ったが、高田君があまりに当たり前に言うので、私はそれ以上何も聞けなかった。


ただ、指から炎を出している高田君が最高にかっこいいと思ったんだ。

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