失恋墓地 [シュール]

振られてしまった。


私はトボトボと街を彷徨った。


気がつくと見知らぬ店の前に立っていた。

やたらとギラギラしたネオンの看板には『失恋墓地』と書かれていた。


中に入るとそこはカウンター席のみの狭いバーだった。

店内は薄暗く、いくつもの蛍光色の飾りがブラックライトに照らされている。


カウンターの向こうに性別年齢不詳の店員が一人。

他に客はいない。


「いらっしゃい」


店員が言った。


そのまま出るわけにはいかない雰囲気だ。

ジンライムを注文した。


それを飲むと私はとても酔っ払ってしまった。


店の壁に大きく映像が映し出された。


それは私を振った男の顔だった。

随分と冴えない顔に思えた。


映像は彼の鼻の穴を拡大していった。

私は失望した。鼻の穴にはまるで魅力を感じなかった。


このタイミングで、頼んでもいないのに店員が飲み物を出してきた。

ソルティードッグだった。


私はそれを口に運んだ。しょっぱさが心地よかった。


「クソが変われば日も変わる」


店員がボソリと言った。


意味はわからないが名言だなと思った。

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