第18話 再見!(ツァイツェン!)

☆上原佳菜子サイド☆


正直に言うと私は佳奈を汚い手から守れなかった部分もある。

佳奈は自ら望んでお見合いをした事がある。

それも全て私の知らぬ間に、だ。

その事に私は衝撃を受けたのを覚えている。


佳奈も当時は守りたいものがあったみたいだが。

思いながら私は休み時間に外を見る。

すると喜美がやって来た。

それから、姫、と言ってくる。


「.....何だか向こうの教室が騒がしいよ」

「どうやらその様だね。何かあったみたい」

「何があったんだろうねぇ」

「.....まあ大丈夫だよ。あの教室には智がいるから」

「ほほう。姫が信頼を寄せる男子ですな?」

「そうだね。信頼を寄せているね」


私は彼が好きだから、と言いながら喜美を見る。

喜美はニコッとしてから、すりすりー、としてくる。

私はうざったくそれを引き剥がしながら、全く、と言う。

姫のけちー、と喜美はムスッとする。


「でも姫は本当に彼が来てから元気になったよね」

「そうかな?私は.....普通だと思うけど」

「それは無いねぇ。姫は女の子っぽくなった」

「いや.....それって褒めているの?貶しているの?」

「うーん。どっちもかなぁ」


ジト目をしながら私は喜美を見る。

喜美はウインクした。

それから、テヘッ、とする。

私は、全く、と思いながら喜美を見る。


「.....でも喜美。私は貴方も信頼している。貴方が居なかったらどうしようもなかった部分もあったわ」

「お!?そう言ってくれるの!?姫!」

「私は.....貴方には感謝しているよ。これでも」

「おー。姫。らしくないね」

「酷いね.....貴方」


上げて落としている感じがする。

だけど喜美はいつもこんな感じだし。

まあ問題ないといえば問題はないのだが。

考えながら私は喜美を見る。

喜美はニコニコしながら、すりすりー、とまたしてくる。


「.....喜美。有難うね」

「私は姫を愛していますんで」

「うん。有難うね」


そして私は喜美を引き剥がす。

それから私は苦笑いを浮かべた。

すると喜美は、姫。私は貴方の恋が実る事を祈っている。.....だから、と切り出してくる。

私は柔和になった喜美の顔を見ながら頷く。

そして喜美は何か取り出す。


「ジャーン」

「.....何これ?」

「水族館。イルカショーチケットですよー」

「.....そうだけど.....これが?」

「智くんをデートにさそっチャイナ」


私は数秒間チケットを見てからボッと赤面する。

へ!?、と思いながら。

このチケットは私が早くから予約したチケットでナス。だから行ってもらわないと困るぜよ、とニヤッとする喜美。

姫に行ってもらわないとねぇ、と。


「は、嵌めたね。喜美」

「嵌めた?これは計画的運用と言います」

「言いません。全く.....」

「智くんとデートしチャイナ。色々聞かせてクレメンス」


2000円も払ったんですよ、とニコニコする喜美。

いや.....そのお金払うよ?、と困惑して言うが。

姫。そんなものは要らないから。

思い出だけ話して、と笑顔になる喜美。


「.....相変わらずだね。貴方も」

「私は常に姫の幸せの為に動いているのだー」

「やれやれ.....」


そしてチャイムが鳴る。

それから喜美は私に、再見!(ツァイツェン)、と言いながら去って行った。

私はその姿に苦笑いを浮かべながら水族館のチケットを見る。


本当に私には勿体無いぐらいの友人だな。

思いながら私は.....窓から空を見上げた。

じゃあ行くしかないよな、とも思いながら。


☆上原佳奈サイド☆


私は躁うつ病になった事がある。

その理由としては私の付き合っていた彼氏に暴力を振るわれた経験から。

そして.....色々あって。

だから私は引きこもったりしたけど。

お姉ちゃんが私の手を引いてくれたのだ。


「.....」


生きなければ。

そう思いながらもがいていた矢先の事。

私はさーくんとまた再会してしまい。

彼はうつ病を患っている事を告白した。

同じだと思ったのだが。


「.....はぁ.....」


私はそう溜息を吐きながらさーくんを見る。

やっぱり格好いい顔だよな、と思いながら見つめる。

そして私は前を見る。

黒板の羅列が私の頭に入る。


「.....」


私達がさーくんにした事。

きっと.....ストレスが溜まっていたからしてしまったのだろうけど。

だけどそれでも反省しかない状態だ。

ずっとさーくんが好きだったから。

愛情の裏返しだったのだろうけど.....。


「.....私もお姉ちゃんもなんて愚かだ」


そんな事をさーくんに察されない様に呟きながら私は黒板を見る。

それから黒板に書かれている文章を書き写す。

私はアホだから。

こうして書かないと全てを忘れてしまう。


「.....勉強して。.....今は忘れよう」


私はそんな事を呟きながら必死に勉強をする。

その中で浮かんでくる涙を静かに拭いながらその時間を過ごす。

何とか考えを一方通行に出来た。

それから私は涙で濡れたティッシュを片付けていると。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る