第三章 王山と周りが守りたかったもの

佳奈の病気

第16話 訳がわからん

☆有山智サイド☆


男女と共にグラウンドに集まってから俺は.....当然だが選手から外れた。

考え事をしながら空を見上げる。

それから俺はぼーっとしているといきなり首筋に冷たさが広がった。

慌てて見るとそこに笑みを浮かべた佳奈が。

何をしているのだ。


「はい。さーくんこれ」

「.....スポドレ?どうしたんだ?」

「買ってきた。抜け出した」

「.....お前という野郎は」

「だって先生甘っちょろいし」

「まあそうだが授業中に勝手に抜け出して中庭に行くとは.....」


思いながらも俺は冷たいスポドレを受け取る。

それからそれを飲みながら前を見る。

というかスポドレを受け取るのって俺じゃなくね?

リア充というかアイツらだろ。


「良いのか?佳奈」

「何が?」

「これはアイツらが受け取るべきだろ。選手として1番手の王山とか」

「.....さーくんに飲んでもらいたいから」

「.....」


小っ恥ずかしいセリフをよくもまあ平然と。

思いながら俺は真っ赤になる。

そして横を見ていると選手として活躍している.....上の名前忘れたけど絢音とか茜?だっけか。

そっちの方角を見る佳奈。


「さーくん。内緒にしておいてね。この共同生活は」

「.....それはそうだろうな。内緒にしないと苦しいと思う」

「だね。.....こんなの知られたら碌でもない事になると思うし」

「だな」


そんな会話をしながら前を見ていると王山が抜けてきた。

それから駆け寄って行く佳奈を見る王山。

何か会話をしている。


俺はその姿を見ながら空をまた見上げてみる。

すると王山が横に腰掛けてきた。

汗をかいてもその汗を俺達側が拭いたくなる構図だ。

爽やかすぎてドン引きである。


「やあ」

「.....絵になる構図だな」

「ははは。よく言われるね」

「.....何の用事ですかね」

「言ったろ。俺は君と話したいって」

「.....」


そんな事を本気にすると思うかね?このモブが。

思いながら俺はジト目で王山を見る。

王山の元には恋の感じの女子が寄って来る。


それを軽く受け止めながら俺にニコッとする王山。

不気味です。

俺はドン引きしながら少し離れた。

すると王山が聞いてくる。


「.....君は.....佳奈とはどういう関係なのかな」

「.....どういう関係とは?」

「言葉通りの意味さ。.....君は不思議な感じがする。佳奈にとって特別な、ね。.....俺達も佳奈を大切にしたいけど君からは別の目的を感じられる」

「.....ああ。そっち方面.....」


俺はスポドレを置きながら顎に手を添える。

するとそのスポドレを見ながら俺にニコッとする。

俺は汗をかきながら王山を見る。

何だってんだ、と思いながら。


「.....君は佳奈が特別な様に見える。そして佳奈も君を特別視している。君達の関係が気になるね」

「そんなに良いもんじゃないですが?」

「そうは言うけどね。気にならなかったら俺は君に声なんかかけないよ」

「.....」


嫌に挑発的ですね。

死んで下さい。

思いながらも俺はそんな事は言わずそのまま、そうかな、とだけ告げる。

それから手を広げて反応する。

否定する様に、だ。


「.....俺と佳奈はそれ以上でもそれ以下でもない関係ですがね」

「そうか。.....やっぱり意味は面白いね」

「面白味なんか持てる訳がないですね」

「いや。君は十分面白いよ」

「お世辞は要らないんですけど」


お世辞か。

でも俺はお世辞という言葉は嫌いだからね、と言いながら真っ直ぐに真剣な眼差しをする王山。

何だろうな。

ニコニコしたり真剣な顔をしたり忙しい野郎だ。

考えつつ見ていると王山は、さて、と立ち上がる。


「.....俺は飲み物を.....ってみんながくれたか。他の人達と関わってくるよ」

「勝手にどうぞ」

「ははは」


そして王山はそのまま駆け出してクラスメイトと関わっていく。

俺は溜息を吐きながら空をまた見上げる。

そうしていると今度は先生と話していた佳奈が戻って来る。

それから俺にニコッとする。

どうした?佳奈、と聞くと.....佳奈は、王山くんと何を話していたの、と聞いてきながら横に腰掛ける。

俺は肩を竦めた。


「.....世間話だな」

「.....そっか。.....でも珍しいな。王山くんが君に話しかける。っていうか私達以外の他人に学校で積極的に話しかけるの」

「そうなのか?珍しいのか?アイツ学校一のスーパースターだろ」

「.....人は単細胞生物じゃないからって前言ったよね。.....王山くんも家の事が色々あるみたいでね」

「あー」


そういう意味でな。

俺は考えながら、つまり面倒なわけか、と聞くと。

佳奈は、王山くんは大きくはあまり関係性を作りたがらないね、と苦笑する。

成程、と思いながら視線だけ動かしながら佳奈を見る。

佳奈は空を見上げた。


「空見上げるの好きだねぇ」

「空は良いぞ。星とか見るの好きだから」

「そっか.....確かに楽しいもんね。天体観測」

「.....だろ?」

「君と一緒だから」

「.....それは余計だな」


うふふ、と言いながら目を細める可愛げギャル。

この野郎、と思いながらも何も言わず。

俺は静かに空を見上げた。

そして佳奈とぼーっとする。

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