第12話 どれだけクソッタレな世界でも

☆上原佳菜子サイド☆


私達が彼に何をしたのか。

彼は全て知っている。

なのに私達を受け入れてくれた。

彼は本当に.....優しいお人よしだと思う。


思いながら私はリビングに上げてもらう。

それから佳奈と一緒に周りを見渡す。

あの時から時間は経過した。

だから何もかも変わっているけど。

暖かみは変わらない。


「まあ何もない場所だけどさ。ゆっくりしていってくれ」

「そんな事ないよ。智くん。ありがとう」

「いや。ありがとうって言われても本当に何もない場所だからさ」

「そんな事ないよ。智」


私は言いながら荷物を広げる。

それから私は荷物を取り出してみる。

すると佳奈が手伝ってくれた。

私はその事に佳奈をチラ見しながら作業を進める。


「なあ」

「.....何?智」

「また.....いきなりだったな。.....どうしたんだ?」

「私が我慢できなくなったから。だから家出したの」

「佳奈が?.....そうだったのか」


親父さん厳しいもんな、と苦笑いを浮かべる智。

すると佳奈は眉を顰めながら、そうだね、と返答した。

それから、あんなの親父じゃない、とも言葉を出す。

私はその姿を見ながら手を止める。

そして智に向く。


「佳奈が救ってくれたの」

「え?.....何を?」

「私をだよ。.....有難い事だよ」

「佳奈が?.....そうなのか」

「そうだね。ね?佳奈」

「いや。救った訳じゃないけど」


言いながら佳奈は赤くなりながらそっぽを向く。

私は、素直じゃないな、と思いながらも。

嬉しく思いながら、今日はありがとう。路頭に迷うところだったから、と智を見る。

智は、お前らに酷い事をされたのもあったけど.....その前に何かを考える必要があったから。ちょうど良かった、と笑顔になる智。


何も変わらない屈託ない笑顔だった。

と同時に。

やはり胸がちくっと痛んだ。

あれだけ酷い事をしたし、と思いながら。


「でも智。断る時は断ってね。私達に。貴方は本当にお人よしだから」

「嫌な時はノーと言うよ。大丈夫だ」

「そうだね」


そうしていると智は周りを見渡してから、日も遅いしお風呂入ったらどうだ、と私達に提案してくる。

私達は顔を見合わせて、良いの?、と返す。

すると、そうだな。気分転換に、と笑みを浮かべる智。

私達は顔を見合わせてから。

じゃあ借りよっか、と佳奈が言うので私も入る事にした.....あ。そうだ。


「じゃあ昔みたいに3人で入ろっか。良いでしょ?」

「.....良いわけないだろ!?お前は何を言っている!?」

「お、お姉ちゃん。流石に恥ずかしいかも」

「そっかー。残念。じゃあ今度一緒にお風呂入ろうか。智」

「.....!?」


智は真っ赤になりながら横を見る。

あははウブだ。

だけどその反応も新鮮で嬉しいもんだ。

思いながら私は、じゃあ入ろうか。佳奈、と言う。

そして私達はお風呂を借りた。



「ねえ。お姉ちゃん」

「.....何?」

「お姉ちゃんは智くんが好きなの?」

「.....そうだね。私は昔から好きだよ」


浴槽の中で話し掛けてくる佳奈。

私はその姿を見ながら身体を洗う。

すると佳奈は、お姉ちゃんは.....その。

やっぱり優しい所に惹かれている?、と言ってくる。

私が好きな理由としてそして継続して好きなのはそれだね、と回答した。


「.....そうなんだね」

「でもそれがどうしたの?」

「い、いや。何でもない。.....ちょっと不思議に思っただけだね」

「不思議に.....成程ね。.....もしかして佳奈も好きなの?」

「.....そ、そんな訳ない!私は違う」


佳奈はバタバタと反応する。

私はその姿を見ながらニヤニヤする。

怪しいなぁ、と思いながら。


だけどまあ詳しくは聞かないでおこう。

佳奈の意思も尊重したい。

思いながら私は浴槽に入る。


「私は智が離れて行く時に智を好きって気付いたの」

「7年間彼氏を作らなかったのは.....」

「そういう事。私はこの身を智に全てあげたいって思うしね。純潔の方が男の子は喜ぶから」

「.....それ以外にもあるの?」

「.....それ以外?」

「お姉ちゃんは.....智くんを大切にしたいって思う以外にも.....」


そこまで見抜かれているとは。

思いながら私は天井を見上げてみる。

それから、私は家族も救いたいって思ってる、と告白した。

だから智と結婚して私は大きな存在になるんだ、と佳奈に、であるが。

佳奈はかなり大きな衝撃を受けていた。


「家族も救うって.....あんな親父とか救いようがないよ」

「確かにそうかもしれない。.....だけど佳奈考えてほしい。仮にも何年か前までマシだったでしょ?」

「それは確かにそうだけど.....」

「だからもう一度家族の絆を取り戻したくてね」

「.....お姉ちゃん.....」


私は優しすぎるだけかもしれない。

だけど私は願う。

佳奈の居場所もそうだが全てを守りたいと。


傲慢かもしれないし実際無理だろう。

こうなった以上は、だ。

だけどやれるだけやってみたいのだ。

昔を取り返す為に。


「冷水かぶって頭冷やして考え直したい」

「.....お姉ちゃんは全く。.....でもそういうところもお姉ちゃんだね」

「でしょ?ははは」


そして私は佳奈の頭を撫でる。

それから私は喜美の事を思い出す。

確かに私は妹を守りたかったんだな、と。

その様に、だ。

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