第11話 姉妹の家出

☆上原佳奈サイド☆


お姉ちゃんにケーキを買って行くのは.....ふと浮かんだ案だ。

だけどお姉ちゃんは心からツンデレの様に喜んでいた.....。

本当に嬉しいと思う。


思いながら屋敷の廊下を歩いていると。

目の前に.....父親が立っていた。

何の用事だ。


「.....何の用事。お父さん」

「佳奈。佳菜子の様子はどうかな。学校の」

「そんな事をいちいちお父さんに報告しないといけないわけ?」

「大切だな。.....そもそもお前は成り行きで養っている様なものだ。その為に仮にも報告の義務はある」

「.....」


私は不愉快な感じでお父さんを見る。

お父さんに養ってもらっている。

確かにその通りだがその言い方だと何か違和感を感じる。


思いながら私はお父さんを見る。

養ってもらっているのは事実である。

だから何も言わないけど。

思いながらゴルフウェア姿のオールバックに話す。


「.....何だその目は。.....そんなに不愉快なら家を出て行け」

「.....何もないです。お父さん」

「そうか。では報告を聞こう」

「お姉ちゃんはいつも通りですよ」

「.....そうか。時にあの少年とまた付き合っているのか」

「そうですね。.....それが?」

「あの少年は不愉快だ」


そう言いながら眉を顰めるお父さん。

流石にそれは私でもピクッときた。

そして、お父さん。そんな事言わないでくれる。そりゃあ昔は私が悪かったけど今は良い人だから、とも話す。


「何処が良いのか分からないのだが」

「お姉ちゃんと私が好きな相手にそんな事言わないでくれる?」

「私は佳菜子に取り憑く輩は排除しなくてはならない。佳菜子は政略結婚の為に居るのだからな」

「.....」


このクソ親父。

思いながら私は踵を返す。

それから私はお姉ちゃんの部屋のドアをノックする。

するとキィッとゆっくりドアが開いてから私の顔を見てくるお姉ちゃん。

私はお姉ちゃんに向きながら、お姉ちゃん。家を出ない?、と話してみる。


「.....家を出る?.....でも生活は.....」

「それは後回し。みんな悪い様に言うから私もう我慢できない」

「.....そうね」


お姉ちゃんは私を招き入れた。

それから私はベッドに腰掛ける。

そしてお父さんに対しての事を愚痴ったりする。

するとお姉ちゃんは頷きながら話を聞いてくれた。

珍しいものであるが。


「分かった。そこまで言うなら出て行こうかしら。.....家はどうするのかしら」

「お母さんの妹さんに保証人になってもらってから.....」

「でも準備が掛かると思うわ。.....そうだ」

「?.....何?」

「智の家に行かない?」


それは無理でしょ、と言いながら私は否定する。

だがお姉ちゃんは横に首を振る。

それから、まあ相談してみないと分からないでしょ、と言う。

私はその言葉に、でも警察にいくかも、と話すと。

お姉ちゃんは、だったら妹さんに許可を貰おう。一旦ね、と笑みを浮かべる。


「.....それで良いのかな」

「じゃないとどうしようもないでしょ。お母さんもお父さんも本当に.....分からず屋だしね」

「そうだけど。.....でも智くんに迷惑だしそれによく考えたらお金が」

「大丈夫よ。こんな事もあろうかとお小遣い貯めていたから」

「お姉ちゃんは用意周到だね」


用意周到っていうか。

当たり前の事っていうかね、と切り出すお姉ちゃん。

それから複雑な顔をするお姉ちゃん。

私はその姿に、?、を浮かべる。

するとお姉ちゃんは、とにかく。今日の夜にでもやりましょう、と向いてくる。


「そうなると智くんに連絡しないと」

「そうね。.....智に連絡してそれからね」

「まあ彼なら納得してくれるだろうけど。暫く泊めてって言っても」

「そうね。でも念の為に連絡必要ね」


それから取り敢えず智くんの家に泊まる計画になり始めた。

家出というかボイコットというか反逆というか。

とにかくそこら辺あたりだ。


何というかこの気持ちがお父さんに繋がれば良いけど。

思いながら私は電話を掛ける。

智くんに、だ。



当初は驚いていたが。

智くんは事情をくんで納得してくれた。

だけど正直言って年頃の女の子と男の子が一緒の生活。


周りから見てもちょっとイかれている様に見える。

だから配慮はしないと。

早めに出て行くつもりだった。


「お姉ちゃん。忘れ物は無い?」

「無いわ。行きましょう」


それから私達は智の家に行く事にした。

そしてドアを開けて外に出る。

そうしてから私達は移動を開始.....というか。

何だ?

屋敷のセキュリティはそこそこなのに全てが上手くいきすぎているというか簡単すぎる気がする。


「お姉ちゃん。何か違和感感じない?」

「.....そうね。屋敷を抜け出すのが軽すぎる気がするわ。.....まあでも大丈夫よ。きっとね」

「うん。お姉ちゃんがそう言うなら」


そして私は歩く。

すると道を辿って行っていると向こうの方から智くんがやって来た。

運動着姿の智くん。

私達は顔を見合わせる。


「お前ら。よく抜けれたな。大丈夫なのか?」

「.....そうね。これは何か罠かもしれないけど。今は考えている余地はないわ」

「そうだね。お姉ちゃん」

「.....そうか。.....じゃあ来てくれ。早速だけど家に上がってくれ」

「智」

「.....?.....どうしたんだ?」


有難うね。唐突な事なのに引き受けてくれて、とお姉ちゃんは頭を下げる。

すると智くんは、気にする事はない。.....まあ昔は昔。今は今だしな、と返事する。

私はその言葉に驚きながら。

智くんから目を逸らした。

この人は本当に優しいな、と思いながら。

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