第7話 七色の世界

☆有山智サイド☆


佳奈が来るのが遅いと思って戻って来たらリア充の一味に囚われていた。

俺はその事に盛大に溜息を吐きながら、佳奈?、と声を掛けると。

リア充のトップとされる王山に引き留められた。

それから、佳奈を連れて行くな、と言われる。


「いやいや。そもそも佳奈は、モノ、じゃないから」

「君は何も分かってないな。俺たちにとっても佳奈は大切なんだよ」

「.....だから連れて行くな?.....それはおかしいんじゃないか」


俺はそう言いながら、佳奈を束縛する真似はやめてくれ、と告げる。

すると4人から睨まれる。

だけど俺はこの場から立ち去る訳にはいかなかった。

このままで終わらせて良い訳が無い。

そしてどうしようも無い睨み合いが続いていると。


「はい。そこまで」


と手を叩いて声がした。

背後を見ると佳菜子が立っている。

俺はその姿に驚きながら見ていると佳菜子はリア充達を見て俺を見ながら、離してくれる?仮にもその子は私の妹だから、と真剣な顔をして言う。


するとリア充達は困惑しながらも佳奈を離してくれた。

そんな佳菜子に聞いてみる。


「何故お前がこの場所に居るんだ?」

「簡単だよ。用事があったから。でもまさかこんな馬に遭遇するなんてね」

「.....そうか」


そんな感じで俺は複雑な顔で話す。

すると佳菜子は、どっか行きたいんでしょ?、と俺と佳奈を見る。

それから、今日だけは譲るから。行って、と笑みを浮かべた。

その言葉に佳奈は、お姉ちゃん?、という感じで目を丸くする。


「今日だけは助けたついでに譲ってあげるけど。だけどいつもこうだとは思わないでね」

「.....お姉ちゃん.....有難う」

「有難う。佳菜子」


そして俺と佳奈はそのまま教室を後にしてから下駄箱にやって来る。

それから佳奈と俺は靴を出しながら居ると。

佳奈が俺に向いてくる。

赤くなってモジモジしながら見上げてくる。


「.....智くんも有難う」

「俺?俺は何もしてない。ほぼアイツに助けられた」

「そう言うけどね。.....智くん。私は君に助けられてばかりだよ」

「そうか」

「お姉ちゃんにも君にも助けられてばかりで何だか複雑だね」

「それはそれで良いんじゃないか。いつか借りを返してくれたら良いよ」


俺はそう言いながら佳奈を見る。

佳奈は驚きの眼差しをしながら俺を見ていたが。

やがて、うん、と赤くなって頷く。

それから俺はその顔を見ながら、じゃあ行くか。ケーキ屋とやらに、と言うと。


俺の手を握ってくる。

いや違う。

俺の腕に腕を絡ませてきた。

所謂.....恋人がよくやる様な。

な!?


「今日ぐらい良いよね」

「な、何をしているんだ!?」

「見て分からない?恋人繋ぎ」

「それは分かるけど.....何でそれをしてくるのかって聞いている」

「それはまあ感謝の気持ちだよ」


そして佳奈は胸を押し付けてくる。

これは破壊力が凄まじいな。

思いながら俺は首を振りながら佳奈を見る。

佳奈は心底嬉しそうな顔でそのまま俺と一緒にケーキ屋に向かった。



ケーキ屋とは言っても小さなケーキ屋だった。

落ち着いた雰囲気の店内である。

だけどカウンターが有り。


そこでケーキを実際に食べる事が出来て紅茶が、コーヒーが飲めるらしい。

4人ぐらいが入るのが限界な感じのスペースだ。

佳奈は嬉しそうに選択肢を広げながら俺を見てくる。


「何を食べる?」

「俺は.....モンブランが食べたいな」

「あ、じゃあ一口ちょうだい?」

「.....い、良いけど」

「やった。じゃあ私はショートケーキ!」


それは間接キスになるのでは?、と思うのだが。

俺は一人で勝手に赤くなる。

1人しか居ない様な店員さんに注文しながら俺達は外を見る。

そうしていると、私ね、と窓の外の人達を見ながら言葉を発する佳奈。


「.....頑張っているけど特進科には進めなかったの」

「その様だな」

「私達の学校って県内有数の進学校じゃない?.....だから成績で追いつくのもやっとだったから。親にも教師にもお馬鹿認定されちゃった」

「厳しかったもんな。親は」

「.....智くんに迷惑を掛けて。お姉ちゃんに迷惑を掛けて。私は何なんだろうね」


俺は苦笑いを浮かべる佳奈の頭をグシャグシャにする。

佳奈は、もー!!!!!毎朝、髪の毛をセットするの大変なんだよ?!、と慌てて俺を見る。

俺はその言葉に、まだ怒れるじゃないか、と言ってみる。

え?、と反応する佳奈。


「.....俺はそういう感情が消えたから。でもお前の場合。それは力強く生きている証拠だよ。佳奈」

「智くん?」

「.....」


そう。

うつ病になった俺には殆ど感情が無い。

だけどこれは佳奈に知られる訳にはいかないな。

思いながら俺は佳奈を見る。

そして何とか取り繕った笑顔を浮かべる。


「佳奈。有難うな。今日は」

「.....?.....大丈夫だよ?アハハ。変な智くん」

「まあ佳奈。だからお前はのびのびと生きて良いんだぞ」

「智くんは変わらずだね。.....分かった。のびのびと自分の意見を貫き通すね」

「ああ」


そして俺は窓から外を見る。

今が楽しいかどうかは分からない。

だけどきっと楽しい事もあるだろう。


今は無くても。

佳奈とか佳菜子達に支えられているしな。

そう思えた。

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