第4話 想い

☆上原佳菜子サイド☆


何も変わってなかった。

あの人は私の大切な智だ。

これは喜ぶべき事態だと思う。

考えながら私は教室に戻る間.....ずっとニヤニヤが止まらなかった。


だけど.....昔。

智に酷い事をしたのは言える。

子供の頃の至りとは言え最悪な事をしてしまった。


思いながら私は歯を食いしばる。

あの時は、本当にどうしようもない子供だったな、と。

そう思わずにはいられない。


「佳菜子」

「.....ああ。喜美」

「良かった?7年ぶりの再会は」

「そうね。.....凄く良かったわ」


でも意外。

佳菜子が断っていたのはこの為だったんだねぇ、とニコッとしてウインクする前田喜美(まえだよしみ)。

まるで小悪魔の様な外見をしている。

口がいつもWみたいな口をしており.....ウェーブ掛かった黒髪。

それから==な目をしやすい目。

美少女だ。


そして私の.....最大の理解者と言える。


「佳菜子がそういう感じの乙女の一面を持つとは意外だにゃー」

「そうかしら。.....私はウザい男が嫌いなだけだし」

「アハハ。でもそれは良い事だと思うよ。碌な男と付き合うぐらいならきちんと選別をしないとね」

「そうね」


喜美はニコニコしながら縋って来る。

私はそれを笑みを浮かべて受け止める。

そしてクラスに戻ると.....ヒソヒソ声で噂になっていた。


上原さんって好きな男子が居たみたい、とか。

マジかよショックだわー、とか。


そんな感じで噂が広まる。

私は良い気味だった。

何故ならその噂が広まれば。

余計な男子からの攻撃もあるまい。

思いながら私は勉強道具を取り出す。


因みにこのクラスだが。

特進科である。

その為に有能な人達ばかり居る様だが。

それ以外にもこの場所を選んだのには訳がある。

リア充が居ないから、だ。


「.....っていつまで縋ってんのよ!?」

「姫ぇ」


喜美が名残惜しそうな感じで擦り寄って来る。

私はそれをうざく感じながらも。

盛大な溜息を吐きつつ喜美にハグした。


そして喜美の頭を優しくまるで飼い犬の様に撫でる。

全くこの子は、と思いながら。

昔から何も変わってない。


「貴方は相変わらずね。喜美」

「そだねー。相変わらずベリベリキュートな喜美ちゃんだから」

「キュート.....ね。確かにキュートだね」

「喜美ちゃんはいつでも貴方の味方です」

「そっか。有難うね喜美」


すると喜美は、でもその男の子に接触して君は相当に変わったね、と笑顔になりながら私を見る。

私は、そうかな、と嬉しい気持ちになる。

正直言ってこんなに嬉しい気持ちは.....7年ぶりだ。

あの時別れてから。

私の気分はオーバーなぐらい落ち込んでいたから。


「喜美。私.....いけるかな」

「君ならいけるよ。.....佳菜子。貴方は強いし美貌も良いしね。勿体無いぐらいだにゃー」

「そうだよね。私、頑張る」

「時期生徒会長様にやれない事なんてないのだー」

「そうだね.....」


そして私は空を見上げる。

待っていてね智。

私が.....やらかした7年間を取り戻す。

必ず貴方を陥落させる。

貴方は.....私達のものだから。


☆上原佳奈サイド☆


お姉ちゃんがやけに接触してくる。

私はハラハラしながら見ていたのだが。

智くんはそれなりに抵抗した。

それから教室に戻って来たのだが。


「佳奈?何だか変わった?」

「変わったって何が?」

「いや。何だか感じが変わったかなって」

「.....茜。それは気のせいだよ」


さてはあの男と何かあったでしょ?、という感じで攻めてくる2人。

私はその言葉を首を振って否定する。

それから、何も無いよ、と言う。

でも何かあったのは事実だが。

今それを話すべきではない。


「佳奈はモテモテだな」

「王山くん。そんな事ないから」

「でも情けで近づいてやってんだろ?あの童貞くんに」

「.....そ、そんな事はないけど」


またまたぁ、と言いながら笑い合う4人。

私はその光景を見ながら智くんをチラ見する。

すると智くんは私の方を見ていた。

その様子に赤くなりながら私は目を逸らす。

何故私の方を見ている。


「.....」


昔のことを思い出す私。

それから、酷い事をしたよな、と落ち込む。

何たって嫌がるぐらいにこそばゆい事をしていた。

私は反省しかない。

考えながら私は仲間達を見る。


「.....でも」


今は反省しているからこそ。

私は、と思う。

何を思っているかといえば。

そんな中でも私達を助けてくれた彼の.....命の恩人を.....このままの関係で終わらせたくない、という思いだ。


是非とも彼に触れたい。

是非とも彼に触れてもらいたい。

そんな思いを.....私は抱いている感じだ。


この気持ちは贖罪の気持ちとかではない。

きっとだけど.....私は。

彼が好きなのだと思う。

だけど私はそんな気持ちを抱く資格は無い。

そしてお姉ちゃんにも無いと思うのだが。


だけどお姉ちゃんはベタベタしている。

その光景にはムカッとした。

私だって我慢しているのに、と思いながら。

そう思いながら私は若干だけ腹立たしい気持ちを覚えた。

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