第2話 7年前と同じ
☆有山智サイド☆
やはりこの町でも.....まあどこの町に行っても状況は変わらないだろうけど。
相変わらず俺の事は根暗だとか。
そんな感じの空気だった。
俺は中庭で1人ベンチに腰掛けて空を見上げる。
でも、寂しい、とかいう気はしない。
ただどこに行ってもウザい連中は居るものだな、と思ってしまうだけで。
それから売店で買った乳酸菌飲料のジュースを飲む。
そして、ほうっ、と息を吐く。
そうしてから空を見ていると、あの、と声がした。
背後を見ると何故か隣の席のあの可愛いギャルが立っていた.....え?
「.....えっと.....この隣、良い?」
「え?いや。それは構わないけど」
「えへへ。そっか。有難う」
それからギャルは何故か俺の横の席に離れて腰掛ける。
俺は、?、を浮かべながらギャルを見る。
席はこの横にもう一個有るのに、と思いながら不思議に見ていると。
モジモジしているギャルが、な、何、と少し睨む様に聞いてきた。
俺は、いや、と言いながら慌てる。
「もしかして迷惑?」
「.....そういうんじゃないよ。.....ただ何で、あっちの席が空いているのに俺の隣になるんだ?、と思ってな」
「え、えっと。何でも良いじゃない.....」
「あっちの席は?」
「あのベンチは椅子の付近に鳥のフンが付いているし」
「そんな馬鹿な」
と言って言い争っても仕方が無いな。
思いながら俺は俯いてから前を見ていると。
ギャルが、ね、ねえ、と聞いてくる。
俺は、何だ、と鬱陶しく聞くと。
「き、君は.....その。何で転校して来たの」
「ああ。それか.....って何でも良いだろう。そんな事。わざわざアンタに話す必要性あるか?」
「私は気になる」
「.....いや。私は気になるって」
よく分からないヨウキャだな。
思いながら俺は乳酸菌飲料のボトルのキャップを閉めながら後ろに傾いてから空を見上げる仕草をする。
それから、俺がこの場所に来たのは親の転勤の都合だ、と話す。
そして、って何でこんな事をアンタなんかに話さなきゃならない、と言う。
ギャルは赤面して横を見る。
「.....7年前と同じ」
「は?何か言ったか?」
「な、何もない。.....じゃあクラスメイトとして宜しく」
「.....そうだな。宜しく」
まあもう二度と関わり合いも無いだろうけど。
考えながら俺はギャルを見ていると。
ギャルは、あれ。アンタ.....新調したんでしょ?その制服、と言ってくる。
俺は、え?ああ、と答えると。
何故かギャルが制服に手を伸ばしてくる。
そして掴んできた。
「な、何をしている?」
「待って。制服の袖のボタン取れかかってるから。縫ったげる」
「へ?あ、ああ。すまん。金が無くて古着なのも影響.....」
「良いから。動かない」
何故か裁縫セットを持っていたギャル。
それから、袖出して、と俺に向いてくる。
開けている胸元が見えた。
俺はメロンが2つ有る様な胸元を見てから赤面して目を逸らす。
何だってこうリア充ってのは胸が大きいのだ。
「出来たよ」
「.....え?も、もう出来たのか」
「こんなの簡単だよ。チョチョイのチョイ」
み、見られたか?胸を見ているのを。
数十秒で完了してしまったし。
俺は赤くなりながら目を逸らしていると。
ハッとした様にギャルが俺をニヤニヤしながら見てくる。
そして、暑いなー、とか棒読みも甚だしい言葉を言ってから胸元のボタンを外して更に開く。
「お、おま!!!!?ここ学校だぞ!良い加減にしろ!」
「へぇ?学校だから?生徒が熱中症になったら大変でしょ?」
「そ、そんなの関係ない!アホか!」
「どこ見ているの?変態だねぇ」
「そんなつもりはない!」
そして胸の汗をハンカチで拭うギャル。
この赤くなったクソ野郎は。
俺は鼻血が出そうになる。
正直全く興味無いとは言えない。
だって俺も男だから。
「.....えっち」
「なぁ!?」
「えっちだね。君」
「.....グゥ.....」
俺は額に手を添えながら、も、もう行く、と立ち上がる。
それから、あ、と言うギャルを置いて去る。
何なんだあのギャルは。
思いながら俺は少しだけムカムカした。
そしてそのまま教室に帰る。
☆上原佳奈サイド☆
「ぁあああああああああーーーーーー!!!!!」
中庭に来た他の生徒が驚く中。
そんな事もお構い無しに頭を抱えて悶えて絶叫する私。
もう何というか恥ずかしいどころの騒ぎではない。
か、仮にも男に胸を半分以上見せるとかマジにかなり恥ずかしいのだが。
自分で何をしているのだ全く。
「でも何あの態度.....しかも!」
ムカつく!ムカつく!?
わ、私.....下着まで見せて.....お、おっぱい.....む、胸を見せて.....それであんなスルーな態度!?
最悪なんだけど!?あの浅い態度!?
顔に火が点きそうなんだけど!
もうちょっと激しく反応して欲しかったってのもある。
でもそれも恥ずかしいが。
「.....で、でも.....何だか安心した感じ」
私は思いながらそのまま立ち上がる。
それからスマホを観てみると絢音と茜から、大丈夫?、とメッセージが来ていた。
そのメッセージに私は、うん。職員室に用事だった、と返事をしながら私も教室に戻る為にそのまま飲み物を持った。
でも何だろうか。
堪らなく悔しいのだが。
こんなにも気づいてもらえないなんて。
さっきの出席の時に上原とは言われたがピクッて反応しただけ。
まるで眼中に無かった。
あの童貞.....。
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