第3話

〜現在 ファミレス〜


「あっけなかったね」

「そうだな、トナ兄」

「お前ら他人事だと思って……!」

俺本気だったんだぞーとドミーが言う。

「まあそんなもんじゃないかい?」

「やっぱり?有名俳優の恋人がいる時点で勝ち目なかったのかー……」

ドミーだって分かっていた。自分は振られたのだ。ケイトのことが好きで諦められないと言っても、恋人に勝てないのではダメだと。

「それでも好きなんだから、俺もバカだよなー」

ヘラヘラと笑う。トナとジスラは顔を見合せて頷いた。

「バカだね」「バカだな」

「おい!そんなハッキリ言うなよー、傷つくだろ」

「まさに逆境だからさ」

「それは……そうだな」

同意しか出来ない。

「だが、相手も同じように逆境かもしれないね」

「えっ」

「今朝のニュースを見ていないのか」

ジスラが見せたスマホ画面にはあの有名俳優の名前が載っていた。

「『DV疑惑、恋人を管理して暴行か』!?」

「どうやら前に付き合っていた女が週刊誌に暴露したらしい」

にわかには信じ難い。ケイトと同じくらい、いやそれ以上に有名な男が恋人を暴行していただなんて。

「まあ信ぴょう性はあまりないがね」

元恋人が有名俳優にわざと傷をつけようと嘘をついている可能性はある。

「だが、本当だったら、ケイトさんも酷い目に遭ってるかもしれないよな」

「ケイトサンを助けたいかい?」

「もちろんだ。振られたが、まだ好きなんだぜ」

「分かった。今すぐに行こうか。今日はこの男の誕生日パーティがある。俺の別荘にドレスコードがあるからそれを着て乱入でもすればいいさ。パーティの場所は……」


ドミーがファミレスを出て走って行くのを見送るトナとジスラ。

「誕生日パーティの日時なんてよく知っていたな」

「ん?ふふっ、まあね。一応探偵だし?」

「そうだったな。依頼があったのか?」

「おっと……。あんたにはお見通しだったか。……そう、ある女から依頼があったのさ。有名だから名前は言えないがね」


―私を助け出してと彼に言ってくれないかしら。


―直接言いたいのよ。本当はね。


―でも、監視されてるから……。


「なんだかこの俳優が可哀想になってきたね。ドミーは勘違いしていたようだが、あんたの存在がこの男の逆境をつくったのさ」


「さて、俺も行こうかね」

「どこに行くんだ?」

「くくっ。証人に会いに、さ」




〜北地区 中央〜


「邪魔するぜ!」

トナの別荘の扉を勢い良く開ける。今は誰もいない。着ていた服を脱ぎ捨て、トナのドレスコードを身につける。サイズはピッタリだ。

「よし……!」

大きな鏡の前で自分を見る。

「大丈夫、俺が変える」

軽い一発屋ではない。それを見せつけてやるのだ。

「ケイトさん、待っててくれ」

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