第11話

少年がどんどん先へ進んでいき、京たちを離していく!


「なんだあいつ速すぎるだろ!?」

少年は高校生の京や大人である手越より足が速く、京たちは追い付けそうにない。


「グオオオオオオオオオ!」

少年を見失いそうなところで、洞窟の奥底から化け物の声が聞こえてきた!


「おい!?」

「またさっきの化け物か!?」


京たちは角を曲がると、そこには先ほどの少年と、化け物が対峙しているのが見えた。


「……」


少年は緊迫した様子だ。

化け物はじりじりと少年の方へ近づく!


「ッ!!」


少年は咄嗟に走り出し、化け物の横を抜けようとする!

化け物は少年を捕まえようと、爪を伸ばし、少年の体へ突き刺そうとする!

少年はそれを避け、化け物を突破する!!


「あのガキ…!足で突破しやがった!!」


少年はそのまま洞窟の奥へ進んでいく!

化け物は少年を追っかけていく!


「どうするの!?」

「どうするもこうするも追っかけるしかない!」


京たちも少年と化け物を追って奥へと走っていく!


「はッ……はッ…… なッ!?」


少年が走っていく先にまた別の化け物がもう2体たたずんでいた!

何とか少年は2体の隙間をかいくぐり、突破しようとする!

しかし、化け物の手の爪は少年の足を突き刺し、少年はその場で倒れてしまう!

そして少年はカギを落とし、そのカギを化け物が拾い上げる。


後ろから遅れて京たちが少年や化け物たちに追い付く!


「化け物が増えてるぞ!?」

「あのままじゃあの子やられちゃう!」

愛海が前を出る!


「待て愛海!あそこに行ったらお前も殺されちまうぞ!」

京が愛海の手を取り、引き留めたが、背後から手越が京たちを通り過ぎ、

化け物へ向かっていく!


「おっさん!?」


「うおおおおおおおお!!」

手越は化け物を盾で殴り倒した!


「大丈夫か!?」


少年は足を押さえながら何とか立ち上がる。

手越は少年の前に立ち、盾を構える。

目の前にいる2体の化け物は爪を伸ばし、手越達を突き刺そうとする!

しかし、そこに京の鉤爪が化け物たちにぶち当たる!

京は遠方から鉤爪を投げていたのだ。


「速く走れ!おっさん!!」


化け物たちは怯み、その隙に手越たちは走り出す!


手越たちは京たちのもとへ追い付く。

化け物たちは起き上がり、京たちを追いかける!


「はッ…はッ……もう…限界」

「頑張れ愛海!追い付かれちまうぞ!!」

「どこか…どこかに隠れるところがあれば……」

「そうだ!さっきの小さな洞穴!」


京たちは先ほどの3つの分岐点のエリアに出る。


「こっちだ!」

京は奥にある小さな洞穴へ向かう!

先ほど愛海が見つけた小さな洞穴だ。


手越たちも京に続いて、その洞穴へ向かう。

そして一同はその洞穴の奥に身を隠した。


「……」


洞窟内に足音がどんどん近づいてくる。

先ほどの化け物たちも京たちがいるエリアに入った。


「こっちへ来るな…こっちへ来るな」


愛海は目を瞑ってお祈りをしている。

化け物たちは立ち止まり、周りをキョロキョロする。


2体の内1体は右の道へ進んでいき、もう1体は京と愛海が来た崖の方へと走っていった。

化け物たちの足音が遠のいていく……。


「どうやら去ってくれたようだ」

身を潜めていた一同は小さな洞穴から出る。


「おい!クソガキ!!お前のせいでカギが奪わたじゃねーか!」

京は少年に向かって罵倒する。


「うるせえ!!」

「なんだと!?」

「やめろ京。もう過ぎたことを言っても仕方がな。」


「だってよ…」

「京。落ち着いて」

「なんだよ愛海まで…そのガキに肩を持つのか?」

「この子が悪いかどうかじゃなく、今はどうやってカギをとり返すかじゃない?」

「…そうだけどよ」


手越は少年の前に立つ。

「少年」

「うん?」

「名前は何て言うんだ?」

「……宇月ウルハ」


「俺は手越徳頑。それからこの女の子が愛海」

「そしてさっきから喚いているのが京」

「よろしくな」


手越は手を伸ばし握手を求める。

しかし、少年は手を下ろしたままだ。


「何で俺を助けた?」

「何でって……そりゃあ子供が襲われてたら大人は助けに行くもんだ」


「……」

「ウルハ。君がカギを俺たちから盗んだことは許そう」

「その代わりにだ。俺たちと協力してくれないか。」


「…何?」


「ウルハ。このゲームは1人で突き進むには困難だ。だから力を合わせて障害を突破したい」

「一人より四人いたほうがいいだろ?」


少年はうつむき、しばらく考え込む。

そして顔を上げ、口を開く。


「…わかった。でも」

「でも?」


「俺の足だけはひっぱるなよ?」


「なんだとクソガキ!?」

背後から京が叫ぶ!

「落ち着いて京君!!」


「あはははは!わかったわかった。君の足を引っ張らないように頑張ろう」

「じゃあよろしくなウルハ。」

手越はもう一度ウルハに手を出し、握手を求める。


「……」

ウルハは無言で手越の手を取り、握手をする。


「クソガキ!!今度あんな邪魔するような真似をしたらボコボコにするからな!」

「京!!相手は子供だよ!!」

ウルハはツカツカと歩きだし、京の前で立ち止まる。


ウルハは顔を見上げ、京の顔を見る。

「何だよ」

「お前嫌いだ。」

「なんだと!?」

京がウルハに手を上げようとしたところ、愛海がウルハの前に立つ。


「京ダメだよ!!」

「ッ……」

京は諦めて振り上げた手を下ろす。


「くそお……ガキはいいよなあ」

京はぐぬぬと言わんばかりに手を下ろし大人しくなった。


「俺からしたら君もガキだがな」

手越がぽろっと言葉を漏らす。

「っていうかよ!おっさん、なんであんなガキを助けたんだよ!?」


「京。君が怒るのもわからなくもないが、俺にはウルハぐらいの小さな子がいるんだ」

「ウルハを見ていたら助けたくもなるよ」


「でもよ~…」

京は何か腑に落ちない様子だ。


「君もいずれ子供ができればわかるさ」


「手越さん。お子さんいるんだ」

「ああ…今頃何をしているのか」


手越は明後日の方向を向き、顔を上げる。その様子はどこか遠くを見ているようだった。

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