第9話


暗闇の道をひたすら歩く。

歩き進めると、徐々に辺りが明るくなっていく。

そして二人は広間にたどり着く。

前には道が3本分かれており、上を見上げれば空洞で先が見えない。


「誰か倒れてる……!」

愛海は広間の奥の方で成人男性が一人倒れているのを見つける。


「ちょっとそこで待ってて。俺が様子を見てくる」

京は倒れている男に近づく。

男は背を向けて倒れており、顔が見えない。


男の背中をさすってみる。

しかし、男の反応は無い。


「死んでる?」

「いや…息してるな」


京は男の体を起こし、うつ伏せ状態からひっくり返す。


「ぜえ……ぜえ……」

男の息は荒く、どうやら熱があるようだ。


「おい!大丈夫か!?おい!!」

京は男に声をかけるが、一向に返事が無い。

かなり弱っているように見える。

遠くで見守っていた愛海はその様子を見て、京の方へ走り出した。


「どう?」

「どうやら瀕死状態みたいだ」

「それなら私の薬で……。」


愛海は虹色の玉から薬を生成する。


「助けるのか?」

「もちろん」


愛海が取り出した薬は液状であり、ビンの中に入っている。

愛海はビンの蓋を開けて、男の口へ薬を流し込んでいく。


「ゴホッ……ゴホッ!?」


男は意識を取り戻し、起き上がった。


「お?生き返った」


男はゼエゼエ言いながら京たちに話しかける。


「俺を助けてくれたのか?」

「ああ、この子が助けたんだ。」

京は愛海を指さし、愛海は男に向かってピースサインをしていた。


「どうして俺を……?」

「倒れている人がいたら助けるに決まってるでしょ?」


「俺と君らは敵対関係のはずだ…どうしてわざわざ助ける?何が目的だ?」

「確かに敵対関係かもしれないけど、苦しそうだったから…」

「バカな……ここで俺が君らを出し抜いてこのゲームに勝利したらどうするつもりだ?」


「まあ…ふつうはそう思うよな」

「俺も助けるかどうか少し迷ったけど…でも愛海が決めたことだからどうこういうつもりはない」

「京は助ける気無かったの?」

「正直この人の言う通り、ライバルをわざわざ助けるのはちょっとね」

「でも京は私を助けたよね?」

「まあそうなんだけど……」

京はぐうの音も出ない。


「…変わった奴らだ」


「でもさ、このゲームは何人かと協力しないと先へ進めないと思うから助けることに意味はあると俺は思うんだ」

「俺も愛海と協力しなければ今頃死んでた」

「だからあんたを助けることは何らおかしくないってわけさ」


「…なるほど。一理ある」

「確かに君が言う通り、このゲームは一人で突き進むには難しい」


男は体を起こし、膝に手をつく。

「よし…わかった」

「君に助けられた以上、私も君たちと同行しよう」


「おー…仲間が増えた。すげえ。愛海のおかけだな」


愛海は男に手を差し伸べる。

「よろしくおねがいします」

「ああ、俺は手越 徳頑。よろしく」

男は愛海の手を取り立ち上がる。


「私は愛海。そしてこっちが京」

「よろしくなおっさん!」

「ああ。よろしくなガキンチョ」

「ガキンチョ!?」

「君から見たら俺はおっさん。俺から見たら君はガキだ」

「ガキじゃねーよ!」

「いいや。言動がガキそのものだ」

まあまあと間に愛海が中には入る。

「仲良く行こ?ね?」

「冗談じゃねえ」


京は半ギレで手越を睨み付け、手越は京に笑顔で見下ろした。

「これから先が思いやられる…」

愛海はため息をついて二人の間に入る。

京と手越はいがみ合いながらも協力し合うことを約束し、この洞窟の先へと進んでいった。


「そういや君たちはどうやってここに来た?」

手越は京たちに質問する。

「俺たちは橋から落とされてここに来たんだ」


横から愛海がヒョコっと手越の前に出る。

「私たちは上から来たけど、手越さんはどうやってここに来たの?」

「手越さんも橋から落とされた?」


「いや、俺は違う。橋など渡っていない」

「実は俺は君たちに会うまでに化け物に襲われていたんだ」


「化け物?」


「そう…見た目は人間に見えるが、目が一つで手がやたら長い化け物だ」


「何それ……こっわ」


「そいつに追われて何とか逃げ切ったんだが、化け物に追われる途中で、化け物に腕をかまれてな……」

「何とか蹴飛ばしてこの洞穴に逃げてこれたんだが、途中で倒れてしまったようなんだ」


「おいおい。そんな化け物がいるなら早く言えよ。この先にいるんじゃね?」

京は手越に睨みつく。


「それは大丈夫だ。化け物はここまで追ってきてはいない」

「化け物と追いかけっこしていたのは地上の森の中だったからな」


「それならいいけどよ…」


「君たちが不安がるのもわかる。もしかしたらここでも遭遇するかもしれないからな…」

「出会わないことを祈ろう」


京たちは不安を抱きつつ、歩を進める。


「ねぇ見て!この先3つに分かれてる!」

京たちの目の前に道が3か所枝分かれとなっていた。


「どうする?」

「まあ、3つのうちどれか選んで進むしかないよな」

「どっちへ行こう…。」

「愛海…決めていいよ」

「ええ!?なんで私が!?責任重大じゃん!?」


「大丈夫だ。俺たちは愛海のおかげで生きてるんだから」

「愛海が決めた先に文句はつけないさ」

京がそう言うと、隣で手越もうなずいた。


「えーっとそれじゃあ……」

「あえて…真ん中へ進もう!」

愛海は真ん中の道を指さした。


「よしわかった!真ん中だな!!」

京たちは愛海の選んだ道へ突き進む。


洞窟の中をさらに進んでいくと、徐々に道が狭くなっていく。

京が先頭に立ち、次に愛海、後ろに手越が続く。


「狭いな…」

「気をつけて歩けよ」


ガコンッ


「何の音だ?」

京が踏み込んだところが陥没し、どこからか音が聞こえてきた。


「なんだ?」


ビュッ!!


京に向かって矢が数本飛んできた!!


「うお!?」


京はかろうじてそれを避ける。


ガゴン!!

京が矢を避けて踏み込んだ地面も陥没し、

今度は明後日の方向から矢が飛んできた!


矢は愛海に向かっている!!


「愛海!!」


愛海の前に手越が走る!

そして彼は虹色の球から盾を生成し、その盾で矢を防いだ!


「大丈夫か?」

「あ…ありがとうございます。」

「盾だ。すげえ」


手越が出した盾は縦横120㎝ほどあり、

色は青色、縁が黄色のド派手なものだ。


「見ての通り、俺の武器はこの盾だ」

「たっ…助かりました」


「しっかし、この辺はトラップだらけだな……。」

「多分この踏んだところがスイッチになっていて、それで矢が飛んできたんだろう」

「慎重に先へ進もう。俺が先頭で歩いて、また矢が飛んで来たら俺が防ぐ」

「京変われ。俺が先頭を行く」


「わかったよ。しゃあねえな」

京は渋々後ろに下がり、手越が前に出る。

その後、何度か矢が飛んでくることがあったが、

手越の盾で防ぐことができ、京たちは次のエリアへ進むことができた。

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