第8話
「京君えらいじゃん」
京は郁に靴を履かせていた。それを見ていた父は京を褒めたのだ。
「だって郁は一人でまだ靴履けないんだもん」
「えらいぞ京。お兄ちゃんになってきたな」
「まあね」
京は郁に靴を履かせ、彼女の手を取って一緒に歩き始める。
郁はいっぱい遊んだせいか、疲れ切っており、どうやら歩けないようだ。
「郁。お兄ちゃんがおんぶしてやる」
「あら」
「京君がおぶってるなんて初めて見た。偉い偉い」
京の母は京の頭をナデナデする。
京は恥ずかしそうに下を向き、郁を車まで運んでいく。
「お兄ちゃん。ありがとう!」
郁は京の耳元でお礼を告げる。
ダダダダダッ!!
後方から銃声が聞こえてる……!
京は即座に振り返り、銃声の方へ目をやる。
京の目に映ったのは銃に撃たれて倒れている父と母だ。
「はやく……にげ…ろ」
「あ……ああ……」
「パパ!!ママ!!」
おぶっている郁がジタバタ暴れだす!
「み……郁!!逃げるぞ!!」
京の父と母を殺した殺人鬼が銃器に銃弾を詰めながら、京たちの方へ向かってくる!
「うわあああああ!!!」
京は郁を背負いながら懸命に走っていく!!
「パパあああ!?ママあああああ!?」
郁は大声で両親を呼ぶ!!
「誰か!?誰か助けて!!」
ダアアアアアアン!!!
「!!?」
銃声が鳴り響き、上を振り向くと郁の頭から大量に血が流れていることに気づく!
「み……みやこおおお!!?」
郁は目を開けたまま沈黙している……。
「あははははッ!!」
後ろを振り向くと先ほどの殺人鬼が笑いながらこちらへ向かってきている!
「さあ!逃げなよ!早くさあ!!」
パンッパン!!!
殺人鬼は京の足元に銃を2,3発発砲する!
京は恐怖に駆られ、その場から再び走り出す!!
「なんで…!?なんで!!?」
「おい!!郁!!返事してくれ!!みやこおおおおお!?」
「うう……ううう…誰か…誰か助け……て」
ダアアアアアアン!!!
京は足を撃たれてその場で転げ落ちる!!
「ううぐううう……」
チャキ……
殺人鬼が倒れた京の前に立ち、銃口を向けている。
「君の大切なもの。全部奪っちゃった……けひッ!!」
「あははははッ!!」
「ねね!!どんな気分!?ねええええ!?」
「君のお父さんもお母さんも妹も全部全部僕が殺しちゃったああ!!」
「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!」
「そして今から君の命を奪う!!」
京はあまりの恐怖と悔しさに涙を流す。
「君の未来を奪って僕は生きる!!そう!!僕は君の未来を奪い取って生き続けるんだ!!!」
「さあ!!死ねよ!!!」
ダダダダダダ!!!!
「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「京君!!」
愛海はパニック状態になった京を抱きしめる。
「お……落ち着いて…落ち着いて京君!!」
「ああああああ……あああ…ああ……」
京は徐々に冷静さを取り戻していく。
「こ……ここは?」
「落ち着いた……?」
「ゆっ…夢か…」
「大丈夫?」
「あ…ああ…」
京は悪夢を見ていたことに気づく。
我に返って、辺りを見渡した。
「そうだ……俺はたしか崖から落ちて……」
「そう。京君のお陰で助かった。また助けられちゃった」
「よかった愛海さんが無事で」
「でもこれからどうしよう…」
愛海は京の袖をギュッと掴む。
「前に進むしかないな」
京たちは洞穴の中にいる。彼らの後方は崖。そして前方は暗闇だ。
暗闇は果てしなく広がっているように見えた。
その先に一点の光さえ見えない。
愛海はグッと京の袖を握る。
「……なんで私たち…こんなことになっちゃったんだろう」
「どうしたのさ急に?」
「何で一人しか生き返れないんだろう。何で皆と競わないといけないんだろう」
「私は……どうして…このゲームに……」
愛海の顔がどんどん下がっていく。
「落ち着け愛海」
「まだ俺たちは死んじゃいねえ。まだやるべきことがあるはずだ」
「それに俺はもしかしたらと思うんだ」
「え?」
「実はこのゲーム…一人じゃなくてもう何人か生き残れるんじゃないかと思ってる」
「…どうしてそう思うの?」
「ここに来て初めに出会った死神がこう言ったのさ」
「これからの説明を行う死神は一つ嘘をつくって」
「あ…」
「私も皆が集まる前に最初に別の死神に会って、その説明を聞いてた」
「その死神も言っていた。ゲームの説明を行う死神は一つだけ嘘をつくって」
「そう…だから俺は一人しか生き残れないっていうのがウソなんじゃないかと思っているんだ」
「死神が言っていたろう?人手不足で死者を処理しきれないって。だから本当はもう何人か生き返れるんじゃないかって」
「そう思ってるんだ」
「たしかに……たしかにそうだよね!!その可能性はありそうだよね!!」
「だからさ愛海さん。ここから先絶対二人で生き残ろうぜ」
「そうだよね……。うん。そうだ。ありがとう京君!!」
「京でいいよ。皆からよく呼び捨てで呼ばれてたんだ」
「京……うんわかった」
「私も愛海でいいよ。私も下の名前で呼ばれてたんだ」
「じゃあ愛海。これからよろしくな。」
「うん……!これから先きっと力を合わせないと進めないことも多いだろうからよろしくね!!」
京は手を伸ばし、愛海は京の手を取って立ち上がる
「この先怖えけど、行ってみるか」
「うん!」
京と愛海は先の見えない暗闇の先へ進んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます