第7話

生き残ったプレイヤーたちは橋の前に集う。

巨人はこちらに気づいているようだが、追ってこない。

あくまでも門に近づいたら攻撃してくるようだ。

大半のプレイヤーは橋を渡り切れず、振り落とされてしまったようだ。

京は愛海の能力のお陰で何とか助かった。

愛海がいなければとっくに脱落していただろう。


「どうやら一人で突破するには難しいらしい」


「ここで生き残ったメンバーで協力しない限り、この先へ進むのは困難なようだ…」

「どうだ?協力する気はあるか?」


京は周りのプレイヤーに問う。


「ああ……もちろんだ。あんたの言う通り、ここは一人じゃ突破できない」

「でもどうやって突破するんだ?力を合わせると言ったってどうしようもない」


「俺たち全員の能力を駆使して突破するしか方法は無い」

「包み隠さず、それぞれの能力を見せよう。ここで能力をうまく使いこなせれば突破できるかもしれない」

「どうだ?そうしないか?」


京は他のプレイヤーに提案をした。


「わかった俺は協力する」

「お……俺も」


次々とプレイヤーたちが京の意見に賛同する。


「俺は……ここ以外の道を探す。」

しかし、中には反対する者もいた。その男は森林の方へ戻ろうと走り出す。


ガラガラガラガラ!!


突如、その者が引き返そうとした矢先、

元来た道が崩れてしまった!もうこれでは後戻りができない。


「なんだよこれ……」


「ッチ」

「仕方ない協力するとしよう。」


「じゃあ、まずはそれぞれの能力を見せ合おう」

「俺の能力はこれだ」


京は虹色の球を握る。虹色の球は鎖付きのかぎ爪へと変化する。


「これが俺の能力……というより俺の武器だな。」


言いだしっぺの京はまず先に自分の能力を見せる。



「俺も似たような能力だ」

先ほど引き返そうとした男は虹色の球からハンマー投げのハンマーを生成した。


「俺も武器みたいなもんだ。」

続いて別のプレイヤーが槍を生成した。


「私は薬ね。みんなの体を治せたのはこの能力のお陰」

愛海も自分の能力を見せる。


「残りの二人は?」


「……」


残った二人は中々しゃべろうとしない。


「おいおい明かさないってのは無しだぜ?」

「お……俺は…」

一人の男は自分の能力を言いたくないのか、非常に言いにくそうな感じだった。


「俺の能力は…皆の役に立たない……。」


「なんだ?言ってみろよ」


「俺は心臓が二つあるんだ。」


「は?」

「二つ……?」



「そう…俺の能力は命が二つあるってことなんだ」

「俺…心臓病で死んで…それで心臓が二つあれば生きれるって……そう思ったんだ」



「なるほどな……」


彼らの能力のほとんどは、死に際に必要だったものが多い。

京は殺人鬼から家族を守り、かつ殺人鬼を倒すための武器。

愛海は病死からなんでも治す万能薬。

それぞれその能力があれば、死ぬことは無かったと思わせるようなものばかりだ。


「あとはお前だけだ」


残り一人能力を明かしていない者がいた。

メガネをかけた短髪の男だ。


「俺か……俺はここだ」


男は右人差し指で自分の頭の側面をつつく。


「明快な頭脳」



「ほう……」

「それはそれは大そうな能力だな」

京はその男に少し不信感を抱く。


「お前たちの能力は把握した。」

「これより俺が仕切る」

「なんだお前。いきなり」

「つまり、その頭脳でここを突破できるってことを言いたいんか?」

「そうだ。この俺の頭脳なら、ここにいる全員をあの門へたどり着かせてやるよ」


「言ったな… 期待してもいいんだな?」

「もちろん」

「じゃあさっそくどうやってあの化け物を出し抜いて門へ行くか教えてもらおうじゃねーか」


「俺の憶測だが、恐らくあの化け物は近づいたものしか襲わない」

「ゆえにどこか橋に境界線があって、それを越すと襲ってくると踏んでいる」


「ふん。それで?」

京はメガネの男を怪しんだ目で見ている。

メガネの男は京からそっぽを向き、ハンマーを持った男に話しかける。

「お前、ハンマー投げの選手か?」


「あん?そうだが」


「試しにあの化け物にハンマーを投げてみろ」


「はあ?そんなの危ないに決まってるだろ!?」


「槍でもいい。とにかくあいつに何かをぶつけるんだ」


「ぶつけてどうするつもりなんだ?」

「もし先ほどの俺の考察が正しければ、あの化け物は音を頼りに動くことがわかる」

「それを証明するためにハンマーや鎖、槍を橋の向こうへ投げつけて音をたてて確かめたい」

「そんなもんもし当ててこっちに襲ってきたらどうするつもりだ!?ただじゃ済まされねーぞ!?」

「いいからやれと言ってるんだ。俺に従え」

「バカ言うんじゃねえ!!」


プレイヤーたちが言い争っている最中、愛海は目の前の異変に気づく。


「ねえ…後ろ…」

愛海がこわばった声で後方を指をさす。

愛海の指した方向からがけ崩れが徐々にこちらに迫ってきている!


「おいおい…どんどん足場が崩れていってるぞ」

「冗談じゃねえ…!?」


「早く投げろ!時間が無い」

「ふざけんな!てめぇが投げろ!!」


「ああもうごちゃついてもしょうがねえ!わかった!俺が囮になる!!」


「京君!?」


「俺ならこの鎖であちこち移動できる」

「俺が巨人の囮になるから、その隙に何とか橋を渡れ!」


「そんなことしたら京君は」

「大丈夫だ。愛海さん。俺はこう見えてもすばしっこい」

「皆が渡り切った時は、ハンマーとか投げて巨人を別方向へ仕向けてほしい!!いいか?」

「わっ…わかった!」

ハンマーの男は京に答える。


「囮としてしくじるなよ」

「大丈夫だ!やってやるよ!!」


京は先陣を切って、かぎ爪を橋につけて、ワイヤーで移動する!

巨人は京に気づき、動き始める!

京はかぎ爪を橋から門側の崖へ放り投げる!

かぎ爪は崖に引っ掛かり、ワイヤーで橋から門側の崖へ飛び出す!

巨人は京を捕まえようと、大きな手で京を握ろうとする!


「捕まってたまるかよ!!」


京は巨人の手をギリギリかわし、崖へと移動した!

巨人は門の方へ走り出し、京を追いかける!

京が巨人を引き連れている間に愛海たちが橋を渡り始める!


「よっしゃこのままいけるぞ!!」


愛海たちが橋の真ん中まできたところで、巨人が足を止める!

巨人は振り返り、愛海たちの方へ走り出す!


「こ……こっちに来る!?」


「やはり橋のある程度の境界線を越えると来るみたいだ」

巨人が愛海たちへ向かっていく!


「くそッ!!こっちだ!!」

京は巨人を追いかけていく!


「一旦立ち止まれ!!」

メガネの男は大声を上げて指示をする!


「ハンマーと槍を門の方へ投げろ!!音をたてるんだ!!」


「くそったれ!!」


メガネの男の言う通り、二人のプレイヤーはそれぞれハンマーと槍を門の方へ投げる!!

ハンマーが門の手前で落ち、鈍い音を響かせる。

槍も門の手前の橋に突き刺さり、突き刺す音を出す!

巨人がその音に反応し、後ろへ振り返り、門の方へ走り出す!


「よし!今の内だ!!音をたてずに少しずつ前進するぞ!!」


愛海たちは忍び足で門の方へ歩いていく!

しかし、巨人は足を止め、振り返り、再び愛海たちのほうへ走り出す!


「おい!!来たぞ!!?」

「まずい!」


一同引き返そうとするが、橋は崩れ始めており、引き返すことができない。

巨人は棍棒で愛海たちを襲う!!

ハンマーを持った男と心臓が二つの男が橋から落とされてしまう!!

槍投げの男はパニックになり、巨人へ槍を投げ出す!!

しかし、巨人はその槍を軽々手に取り、槍投げの男に槍を投げ返す!!

男の体に槍が突き刺さり、男は倒れながら橋から落ちてしまった。

再び巨人はこん棒を振り落とす!


「うわあああああ!?」


間一髪こん棒から避けられたものの、こん棒が橋を叩きつけた衝撃で

愛海と仁も橋から落ちてしまった!


「愛海!!」


愛海たちが振り落とされたところを、京がワイヤーで二人を巻き付けた!!

京が橋の上から愛海たちを持ち上げようとするが、背後から巨人が襲ってくる!!


「くそおおおあ!?」


巨人に蹴飛ばされ、京も橋から落ちてしまう!!


「まだ諦めるかよッ!!」

京は落ちながらも虹色の球からもう一本のワイヤーを生成し、

それを巨人に向かって投げつける!!

落ちていきながら、鎖鎌をクリーチャーの首に巻き付ける!

クリーチャーは首に巻き付いた鎖を外そうと両手で鎖を掴むが、

京たちが落ちれば落ちるほど、首が締まっていく!


「早く……上に上がれ!!」


一番下にいた愛海がよじ登り、橋に手をかける。

続いてメガネの男も京に手をかけて、上へと上がり、橋に手をかける。

巨人は鎖を首から外すことができず、首がしまり、気絶寸前だ。

愛海と仁が橋をよじ登りきったところで、

首が締まった巨人は気を失い、倒れる!

京はもう一本鎖鎌を橋に突き刺し、

両手で鎖にしがみつき、その場に残った。

巨人はそのまま橋から転落し、京の真横を過ぎて落ちていった。

愛海は京を持ち上げようと、鎖を引っ張り、上にあげていく。


「今…引き上げるからね…」


愛海は懸命に鎖を持ち上げていく。


そこにメガネの男が愛海の側にやって来た。


「京君を持ちあがるの手伝って!」

愛海は京を引き上げるのを手伝うように伝えるが、

メガネの男は沈黙している。

そして数秒後、思い口が開いた。


「お前らはこの先残しても脅威になる」


「え?」

愛海はメガネの男の発言にキョトンとしている。


「今回のように助け合って進むこともあるだろうが……」

「それはできるだけプレイヤーの数を減らして残った者たちだけでやればいい」

「よってこいつらはやはり不要だ。」

「万能薬と鎖鎌……敵になったら厄介だからな!!」


メガネの男は、愛海を両手で押し橋から転落させようとする!


「やめ…」


愛海はバランスを崩し、橋から転落してしまう!


「嘘だろ!?」

そのまま、京も愛海と共に転落してしまう!


メガネの男はその様子を見届け、橋を渡り、門を開けて次へと進んでいく…。

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