第2話

「デケェ!!」田辺 京は豪華客船を見上げて驚愕していた。


「今からこれに乗るの?」


「そうだ!想像以上にでけえだろ!」


田辺一家は家族旅行に来ていた。

彼らは北海道へ行くために移動手段として豪華客船を選んだ。

人生初めての船。京たちはずんずんと船内へ足を運ぶ。

船の中へ進むと、そこにはホテルのロビーのような風景が広がっていた。

船内はショッピングセンターやゲームコーナー、プールに露天風呂など様々な施設が設置されていた。

京たちはチェックインを済ませ、早速部屋に向かう。

船内はもはや高級ホテルそのもの。歩いているだけで高級感を味わえる。

京たちは部屋に入り、荷物をおろす。そして京と郁はすぐに船内を探索しようと支度し始めた。


「ねえ色々見回っていいよね?」


「いいけど、あまり遠くに行くんじゃないぞ。迷子になるなよ」


「わかってるって!」


京と郁は駆け足で船内をはしゃぎ回る。


「おい、どこまで行くんだ!そっちは何もないだろ?」


郁はどんどん奥の方へ歩いていき、京はそれに追いつこうと駆け足で追いかける。


「ここどこ?」


郁は笑いながら、両手を両ひざについて息を切らしているようだ。


「知らねえよ!お前、行き過ぎなんだよ!」


「うっさい!」


郁は京を置いて元来た方向に向かって歩き出す。


「待てって!」


京が後を追うと、郁は角を曲がり、それに続く。

郁はツカツカと速歩きをしていたが、突然足を止める。


ゴッ!!


「痛ッ!急に止まるなや!」


郁の真後ろにいた京は郁の後頭部に口をぶつけてしまう。

京が睨むと、郁の表情は強張っていた。


「どうした?」


郁が見ている方向を京も見ると、目の前に立っていた男が女性を銃で撃っていた。


「パンパンッ」という音がした。


女性は倒れ込み、血が流れていた。

京と郁は唐突な出来事に声を上げることもできず、凍りついてしまった。

殺人鬼は後ろを振り返り、京たちに気づいた。


(なっ…なんだ!?人が…倒れてる!?)

(まさか……銃で殺したのか!?)


「ヤバい…ヤバいヤバい!!逃げるぞ!!」


京が郁の手を掴むと、二人はその場から逃げ出す。殺人鬼は笑みを浮かべて、京たちを追いかける。

京たちは必死で逃げ回るが、殺人鬼は執拗に二人を追いかけ、船内を縦横無尽に移動する。京たちは必死に走り、とにかく前へ前へと逃げていき、そして倉庫部屋に逃げ込む。倉庫部屋の奥へと進み、棚と棚の間に身を潜めると、殺人鬼も倉庫部屋に入ってきて、京たちを探し回る。


 カッカッカッ…


足音が聞こえてくる。


 殺人鬼は京たちを探し回っていた。


 (このままじゃ見つかる。一体どうしたら…)


 ジャラッ…


 京は何か踏んだことに気づく。足元を見れば、そこには大きな鎖があった。 


(いざとなればこれで…)


 京は鎖を手に持ち、殺人鬼が近づくまでじっとしていた。


ザッザッザッ


 殺人鬼がどんどんこちらに向かってくる。

 足音が大きくなるにつれ、京と郁の心臓がバクバクしていく。

あまりの緊張感に意識がどうにかなりそうだ。 

そして遂に殺人鬼が目の前まで歩いてきた。

殺人鬼は後ろを警戒しているのか、頭を振り向いた。


( 今しかねえ!! )


京は飛び出し、殺人鬼に背後から鎖で首を締め上げた! 


殺人鬼

「グオッ!? 」


殺人鬼と京が取っ組み合いになる。


郁 

「京君!?」


京 

「先に逃げろ!!」


京は鎖を引っ張り、殺人鬼の首を締め上げる! 

それに対し殺人鬼は銃で京の頭を叩き、抵抗する!

郁はただ怯えて佇んだままだ。


京 

「早く逃げろって!!」


「ッ!?」


郁は京の叫びと共に咄嗟に走り出す!


殺人鬼は力を振り絞って京の体を押し倒す!

そして、京の体の上に乗り、顔面を執拗に殴りつける!


殺人鬼 

「こいつ!!こいつ!!」


ゴッゴッゴッ


重く鈍い音が船内に響く!


京 

「このやろう…!!」


京はすきを見て思い切り蹴りを入れる!

殺人鬼が後ろへ倒れ込む!

しかし、殺人鬼はすぐに体を起こし、

銃を構え、京に発砲する!


ダアアアアアアアアアアン!!!


「っは!!?」


京は次の瞬間気づけば、真っ暗な場所に寝転がっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る