第5話
少し頭を冷やして考え直してみる。
佐々木からすると、あいつも彼女いないから惚れてるならアタックしてみろ。と焚きつけておいて、異性とイチャイチャしているところ見せられたって認識なのか。
わざと見せつけて
だが真実はだとしていない。俺は友治が佐々木に惚れてるから好みとか探ってくれと言われた。佐々木も友治に惚れてるから引き合わせた。そしたら友治と知らない女子(多分上級生)がイチャイチャしていた。
「うん。悪いのはあいつだろ」
まぁ、舌の根も乾かない内に他の女に手を出したり、平気で二股をかけるような奴では無いから、あんな状況になったのも何か理由があるんだとは思うが……
「本人に直接訊くしかないな」
教室へ戻ると、先程の女子の姿はなく、友治が小説片手に、一人ポツンと座っていた。
夕焼けで茜色に染まった教室にただ一人在する人の影。これがうら若き美少女なら絵になるんだろうが、そこにあるのは地味な顔して二股疑惑のある悪友の姿だ。
「慎介、遅かったじゃないか。どうだった!? 何か有益な情報は手に入ったか!?」
「有益な情報ねぇ……」
「なんだよ、勿体ぶって」
「これは詳細を省くが結論だけ言うとお前はフラれた」
「はぁ!? いや、Mr.&Mrs.ス〇スのセリフパロってる場合じゃなくて。何でそうなる!? いったい何があったか詳細を言え!」
詳細を省かず、あれからのことを客観的に、且つ、多角的な視点からの意見・考察を添えて説明した。
佐々木の恋心の部分は、ぼかしたが。
「はぁ~……そうか、あれを見られたのか……」
「で、あの女生徒は誰?」
俺と同じく部活に入ってない以上、部活の先輩という線は無い。中学の頃の先輩なら俺も知っているはず。高校で知り合ったにしてはお互いどうも距離が近い。知り合って一ヶ月も経ってない仲とは思えん。
「悪いことは言わん。白状した方が身のためだぞ」
「……幼馴染の姉ちゃんだよ。小学生の時の」
「幼馴染だとぉ?」
こいつ、どこまでラブコメるつもりだ!? なんだ? この後は妹だとか転校生だとか生徒会長とか先生とかともイチャコラするつもりか?
「お前、自分のことラブコメ主人公だと思ってない?」
「え? なんだって?」
「聞こえてんだろマカロニ野郎!」
「いやいやいや、冗談はさておき……てか冗談言ってる場合じゃないって!?」
「言い始めたのはお前だろうが!」
いつもの茶番はいいから、さっさと話せよ!
「一つ上の学年でさ、小学校を卒業するまでは隣に住んでたんだけど、卒業と同時に別の街に引っ越しちゃってさ。さっき偶然再会したんだよね」
「ふ~ん? そんな偶然がねぇ?」
「卒業と同時、つまり俺が六年生になる直前に引っ越してったからさ、四年ぶりだよ。その間に見違えててさ。それでも前みたいに接してくれるから戸惑っちゃって」
「それで佐々木が通りかかったのにも気づかず、おっぱい押し付けられてテンション上がってたんだ」
「はい……おっぱい押し付けられてテンション上がってました……」
「殴っていい?」
「勘弁してくれ……」
事情はわかった。何とも間が悪い……
「とりあえず誤解を解くのが先決だが、俺やお前が行ったところでな……」
「そうか、まともに聞いてもらえないよな」
俺の信用はこいつのせいで地に墜ちたし、こいつはこいつで誤解のせいで説得力皆無だし、八方塞がりだな。ちくしょう! さっきまでイージーウィンの流れだったのにどうしてこうなった!?
「どうすっかなー? もう諦めるか。お前の自業自得だし」
「こんなので諦められるか! なんか方法ないのかよ!?」
うーん……
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