第3話
「佐々木」
「ん? 植主? 久しぶりね」
佐々木が手芸部員だという情報を手に入れた(あいつの担任から聞いた)俺は、手芸部へ向かい、部室から少し離れた場所で佐々木を発見した。トイレからの戻りなのか、都合よく一人でいるところに出くわせた。こんな話、周りに人がいる所で話したくないしな。
で、久々に会ったというのに、棘、とまではいかないが、淡泊でそっけない態度で返答したのが佐々木恵麻。俺たちと同じ中学出身。そして、友治が惚れている女だ。
「何気に話すのは中学以来だな」
「クラスが別れたらそんなもんでしょ。友達ってわけじゃないんだし」
……俺も別にそこまで親しい間柄だとは思ってなかったけど、正面切ってそう言い切られるといい気分はしないな。こんなんで友治に勝ち目あんのか?
「で、何しに来たの? あんたがわざわざ話しかけてくるなんて珍しい」
「なに、ちょっと後学のために訊きたいことがあってな」
「何よ?」
「お前、この間告白されたんだって?」
「っ……!?」
驚く佐々木。まさか違うクラスにまで噂になっているとは思わなかったか? 安心しろ、俺もついさっき知ったばかりだ。
「何が気に入らなくて断ったのとかさ。後、どういうシチュエーションだったとか色々」
「あんたがそんなに恋愛事に興味あるだなんて知らなかったわ。てっきり恋人なんていらないって強がるタイプだと思ってた」
「華の高校生だぞ? 恋愛に興味沸かないってことないだろう」
ごめん、当たってる。少なくとも今はそんなに興味ない。でも強がってはいないから満点じゃない。65点って言ったところかな。
「まぁ、話しにくい話題だろうし、嫌なら忘れてくれ。そんな強引に訊くことでもない」
「本当よ。デリカシーの無い奴ね。そんな話題わざわざ蒸し返されて、こっちはいい迷惑だわ」
「別に俺も友治に言われなかったら気になんなかったよ」
「友治……友治もこのこと知ってるの!?」
唐突に大きな声を上げて詰め寄ってくる佐々木。びっくりした。心臓に悪いぞ。
「あ、ああ、そもそも友治が仕入れてきた情報だしな」
「そんな……もう友治に知られちゃってるなんて……友治はなんて? 私が告られたって聞いてどんな感じだった!?」
「そんな個人の心情言うわけないだろ。本人の許可も無いのに」
「そ、そうよね……」
明らかな焦りと動揺を見せる佐々木。友治を話題に出した途端これだ。もしかしてこいつも……
「お前、もしかして」
「……誰にも言わないでよ? うん、私、友治のことが好きみたい。この間男子に告られた時に、あいつの顔を思い出して、頭から離れなくなっちゃって。この人じゃなくて友治と結ばれたいんだって。自分の心、理解しちゃった」
「マジかよ……」
いや、これ上手く行くんじゃない? 楽勝なんじゃない? つまりは両想いってことだろ!? だったら互いに気持ちを打ち明ければ一気に解決じゃん!
友治の奴に情報収集頼まれたけど、そんなことせずともくっつきそうじゃんこの二人。しかも恋心を自覚するタイミングやきっかけがほぼ同じって、ベストカップルかよお前ら。以心伝心じゃん。いや、これは使い方違うか。
「だったら友治にそれを打ち明けてみれば? お前が好きだから他の奴の告白を断ったって」
「そんなの恥ずかしくて言えるわけないでしょ!?」
それ言ったら勝ち確ハッピーエンドなんだって! 勇気出せ!
「自分から動かないと何事も進展しないぞ」
「でも……」
「大丈夫だって。俺の知る限りあいつに彼女いないし、仲のいい女子はお前くらいなもんだ。ほら、チャンスだぞチャンス!」
こういうのは第三者の俺から言うのは野暮ってもんだろ? 一歩踏み出して自力で掴み取れ!
「……わかった。荷物だけ取ってくるから案内して」
「おう」
なんだ。以外となんとかなるもんだな。面倒くさく拗れることなく、丸く収まりそうだ。
でも、そうなると三人の内俺だけかやの外になるのか。
「……今度友治になんか高いもん驕らせるか」
それか一発殴らせてもらおう。
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