第5話

おれはシケモクを入団試験でライターを握り込んで隠したジョルノ・ジョバァーナのような感じで隠した。

湿気った吸口が不快だったがまずバレまい。


クソババアの後を目で追う。濁り目の客の中で一際小汚い格好だからすぐ解った。


そのままパチスロのコーナーに向かうものと思ったが階段を下りていく。


振り返られてもいいように、クソババアの姿が見えなくなる距離をおいて後を追う。

足音はずっと下っている。


結局一番下の階で出入口に近いクレーンゲームのコーナーについた。出てしまったか、と警戒するも、景品の物色をしていた。


景品を見るフリをしつつ、クレーンゲームのガラス越しに相手の姿を捉え、徐々に距離を詰める。


クソババアは、狙いが決まったらしく、バッグから財布を取り出し、ゲームを始める。


狙っているのはうさぎのぬいぐるみらしい。


兎に角ゲームに集中してくれるのは好都合だ。

その間にバッグにシケモクをお返しして遁走すれば良い。

台風荒れる外まで追っては来るまい。

ガラスに反射しない角度を考えながら更に近寄る。


今、この位置からなら、サッと行って逃げられる、という所だった。


入口からわぁわぁ言いながら入ってくる客の一団があった。


一瞬気を取られ、クソババアの方に集中を戻そうとするも、どうにも気になる。


思い切ってつぶさに観察すると、先頭の女児が小汚いファッションセンスや髪質や顔立ちがソックリなのだ。

クソババアにも幼き頃にはこのようなあどけない頃もあっただろうことを伺わせるリトルクソババアなのだ。


その一団はクソババアの家族なのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る