第48話駆逐艦 vs 牛さん

「ダメージコントロール!」


 魔王ジャックが叫ぶと、すぐさまコントロールルームの魔王フアトロからの返事が返ってくる。


『1番! 2番および6番がやられたわ。現在修復中よ。あと何発か貰えばたとえこの船といえどもやばいわ』


「くそ、攻撃を見入ってしまった。そのまま攻撃しておけば――」


 発動させようと思っていたジャックの最終奥義ラストワードの発動は今の衝撃で中断してしまった。

 その最終奥義を再度発動させるには再び長い詠唱が必要となる。


『くっ――。さらなる高熱魔力反応が見えたわ! バリア再稼働中! 間に合わない! ジャック! なんとかしてっ』


「言われなくともー」


 こうなれば何度でも詠唱し、発動させるしか手はない。


 再び詠唱を再開しながら、ジャックは魔導カメラを敵側に向ける。


 そこには巨乳の女の姿があった。


 その大きさは哺乳類の中で大海を泳ぐくじらについで世界第2位といっても過言ではないほどの巨乳である。


 白地に大きな黒の斑点模様というパーカーを着たその黒髪巨乳の女のチチは、みごとに乳袋といった感じでたわわに実っている。


「もーぅ、しょうがないわね。サピエには私がいなくちゃ……」


「ははっ。草生えてる~」


 そんなことを言いそうなのは、牛さんが擬人化した魔人、ホル・シュタイン以外にありえない。


「く、これがオーダーの3段オチということか――」


 ならば魔王リナの攻撃に続きあと2段ある。


 魔人ジャックは身構え、そして考える。


 それに耐えることができるのだろうかと。


(しかし、解せぬな……。なぜ最終奥義ラストワードに対してそんなアホな攻撃で対応できると思えるのか。最終奥義ラストワードに対しては最終奥義ラストワードでしか対抗できないというのが道理であるのというのに)


 そんななか、ホル・シュタインは度肝を抜く行動に出た。


 上半身のパーカーを脱いだのだ。


 さらけ出されるそのおっぱいに思わずジャックの視線は集中する。


 だが、その先端には、幾つものピンク色の四角い何かが漂っていた。


(あれは、まさか――)


 その四角い何かにホル・シュタインは魔力を全力で集中させている。


 その魔力によって直接自励された反魔導体は、その四角形を大きくさせたり圧縮したりと蠢いている。

 それはまるで、周囲に散らばってしまった魔力を再び集束させるかのように。


 その魔力のことを法燐力(*1)と人は言う――


 そして、ジャックはその正体に気づいてしまった。


(あれは……、アカン。アカンやつや……)


 それは、神秘を隠し、人々を絶望へと導く恐怖のシロモノだ。

 たとえジャックの攻撃が、3.0x10^8メートルという驚異的な攻撃速度を誇ろうと、そのシロモノはその後からそれを覆い隠してしまう――


(あれは……、金色の――モザイク!)


 その中身を見るには彼女を作って拝み倒すしか手はないのだ。


 むちゃくちゃだ。だがそんな無理を通せば道理が引っ込むのは自明の理である。


 モザイクとはシステムに直接介入する攻撃手段である。

 例え現世界の住民であれ、そういったものの前にはモザイク処理が施され、絶対に見ることは叶わない。それがモザイクなのだ。それは絶対の真理――

 その時点でジャックは敗北を悟ってしまったが、しかし、攻撃を止めるわけにはいかなかった。


 ホル・シュタインが今、まさに魔法攻撃のために詠唱しているのだ。

 反撃しなければどうなるか――


「燃え上がれ! 私のプリオン!


 古イケヤの名のもとに! 神秘を愛し、破壊せよ!

 法燐力の秘密に触れるもの、全てを無へと期せ!


 対艦キャトル巨乳砲ミューテーション!」


 魔王ジャックはここは対抗するしかない。


「侵入者どもに正義ジャスティスを執行する!


 喰らえ、流派:闇炎系の最終奥義にして最凶の一撃!

 世界を破壊するチェレンコフの光!


 熱↑核↑LoveラブLoveラブ爆裂弾!!」


 互いの砲撃が交差、激突する。


 だが、熱核爆裂弾の光は一瞬だけ拮抗するものの、対艦キャトル巨乳砲ミューテーションの前にあっけなく敗北した。


 押し寄せる四角形の粒子に、駆逐飛空艦、奇城 茨魏魏ヶ島いばらぎおにがしまはなすすベもない。


「バカなー」


            《激情之魔王たる魔王》ジャック・ザ・ハート、撃破!




#(*1)補足

法燐力~、法燐力~、三角形の秘密はね?

法燐力~、法燐力~、三角形の秘密はね。教えてあげないよ。じゃん!

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