第16話そうだ、娘作りしよう

 吾輩は人である。

 名前はホモ・サピエンス。


 いやー、初めて知ったよ。

 ジャイアントスパイダーの糸は、ニワトリが卵を産むのと同じ場所から出るって。


 要するにぴ――(自粛しました)――


 サルモネラ菌感染症とか怖そう。

 これもうトップブリーダーも安心の第一類酸化性固体である高度さらしこ(次亜塩素酸カルシウム Ca(ClO)2 )で綺麗に洗わなければなるまい――




 ――なんでこんな無駄な知識ができてしまったのか。




 そう、それはピーチ・グリーングリーン侯爵家令嬢を近隣の町まで送り届け、女盗賊団の連中を全員犯罪者奴隷に落として多額のキャッシュフローを手にしたところから始まる。


 とりあえずその金で、リナちゃんたち――、ゴブリンの魔人の少女たちの服を統一して買うことができた。薄い緑のチャイルドスモッグ、黄色の安全帽子、紺のスカート、そして肩から下げられる可愛らしいポーチに、白の短パン。そして赤い靴。急な動作をするとチラッ、チラッとその短パンが見える。完璧である。


 家は盗賊団のアジトの砦をそのまま改装して使っている。

 モンスターに対する橋頭保というやつだな。


 リナちゃんたちは元はゴブリンであり、魔界の森の入り口とはいえ、森の中の方が安心するようだ。


 吾輩の家は買ったばかりだが引き払った。


 牛さんも一緒に砦入りだ。

 牛さんの彼女、シュタインちゃんはリナちゃんたちに囲まれて楽しそうにしている。


 ――で、食い物とさらなる趣味に走ったかわいい衣装のレパートリーを増やそうというのが今回のジャイアントスパイダー狩りに繋がるというわけだ。

 リナちゃんたちにゴシックなメイド風ドレスとか着せてみたい。いやここは体操服かな?


 え? 盗賊団の犯罪奴隷を売って多額の金を得たんじゃないかって?


 残念。武器が異様に高かったのだ。

 具体的に言うとこの世界の金属が高かったのだ。

 お金は武器代にほぼ消えた。


 技術レベルからすると当然かもしれないが金属が異様に高い。

 リナちゃんたちみんなに大剣を揃えたら一瞬で財産が溶けた。


 リナちゃんたちとこれから生活をしていくにあたり、いかに多額の金といっても永続してあるわけではないから、稼がないといけないのでね。


 だからリナちゃんたちを冒険者にするために――さすがに素手はマズイと思って、それなりの剣とか集めようとしたらこのザマである。


 女盗賊団の方たちが剣とか持っていたんじゃないかって?


 粗悪なものならばな。


 彼女たちは傭兵団が身を隠して盗賊団になったような連中なので、出自が特定できるような立派な剣類は持っていなかったのだ。


 出自といえば、ピーチ女史に鑑定で彼女らのことを調べたらしいのだが、ピーチさんのスキルはレベルが低くて称号くらいしか分からないらしく、その称号も女体化スキルの関係かすべて消えていたそうな。


 おそるべしおっぱい揉みくだし師スキル。そんな弊害があるとは知らなかったぜ。


 さて、始めの内はその粗悪な剣で狩りを始めたのだが、腐っても魔人というべきか、すぐにボロボロになり、こう『ようじょが普通持たないであろう身長の2~3倍のぶっとい剣』でようやく釣り合うという結果になってしまった。


 まるで派手さを売りにしたMMO-RPGのようなぶっとさである。


 そしてそれらは普通にお値段が高かった。


 そのため、狩りをするにもお値段の高いもの、生活に必要なものをメインに狙わないと、と思い狙ったのがジャイアントスパイダーさんだった。


 このジャイアントスパイダーさん。


 ぶっちゃけると、よくファンタジーにいるでかい蜘蛛のモンスターである。


 この蜘蛛ですが、ケツから糸を吐き、その糸が頑丈で高値で売れるという寸法だ。


 もちろんリナちゃんたちに着せても良い。


 発色が非常に良いそうだ。


 だが、倒して巣から糸を巻き上げるだけでは芸というものがないだろう。



 なぜなら、吾輩はおっぱい揉みくだし師である。そうだ、擬人化で作りしよう。



 外骨格の蜘蛛に果たしておっぱいがあるのだろうか、という疑問はあったが、リナちゃんたちの活躍によりジャイアントスパイダーを無力化し、めでたくおっぱいを揉みくだすことができた。


 あんな化け物に萌えろとか、吾輩、結構つらかった。


 だが、そんな苦労をして擬人化&女体化した女の子は、いかにも「蜘蛛ですがナニカ」とか言ってきそうな、やたらクールビューティーな女子校生という感じの白髪で病的に白い肌の魔人に性徴していた。



 そして冒頭のジャイアントスパイダーの糸の話に繋がるわけだ。



 このジャイアント・スパイダーの魔人の少女にM字開脚させ、吾輩が後ろから抱きしめつつおっぱいを揉みくだし、リナちゃんが吐き出す糸を棒に巻き巻きする姿は実にシュールである。


 その白い顔を桃色に染め、吐息を切らしながらあえぐこの蜘蛛さんには、ジア・エンソーダちゃんと名前を付けた。深い意味はない。メキシコの方がごとく、コード・サラシーコちゃんよりは良いだろ? 正確にはカリウムなんだからジア・エンソカリちゃんちゃんが正しいだって? こまけぇこたぁ良いんだよ。語呂が良い方を吾輩は選んだ。


 はじめは嫌がっていたジアちゃんなのだが、ジャイアントスパイダーには服を着るという文化がないらしく――そりゃ元は蜘蛛のモンスターだもの――、糸で編んだ服はキミに最初に着せてあげるよ――などと言ったらそりゃぁ喜んでいた。


 まず最初は下着だな。





 ・ ・ ・ ・





 私はリナです。



 そう、あの日、私はリナになったの。


 この前、ただの脆弱なモンスターだったリナをその力で魔人にしたのは、素敵なニンゲンの男の子でした。


 この男の子の名前はサピエといいます。


 ニンゲンさんはみなさんネームドでうらやましい。


 その魔人化を果たす方法というのがちょっと変わっていて、サピエがおっぱいを揉みくだすことでスキルが発動したりするのだったりするのです。



 その気持ちよさといったら――、まるで天にも昇るようです。

 経験点おとな階段レベルを一気に駆け上がる、そんな感じかな?



 おっぱいを揉みくだされるたびに胸がキュンキュンするの。

 今でもサピエと一緒にいるとだんだん胸が暖かい気持ちになるんだよ?



 これがもしかしこいというものなの?



 それでなのかな?


 サピエが他のと話をしているだけでもやもやするんだよね。


 この前、リナたちのアジトを奪回したときにいた赤髪のニンゲンさんの女に対して、サピエはずいぶん楽しそうにしていた。


 そのとき、リナから勇気を絞って「おっぱい揉む?」とか聞いたのに答えてくれなかったし。



 いつもは答えてくれるのに。



 この前もそう。


 ジャイアントスパイダーをリナたちが押さえつけている間に、そのジャイアントスパイダーのおっぱいをリナたちの目の間で揉みしだいて新しい娘作りしていたし。


「お前らの服を作るためだ―」


 とかサピエは言ってたけど、ほんとかしら?


 新しいおっぱいをもみもみしたかっただけなのじゃないかしらね?



 ――なら、リナはこの後どうすれば良いのかな?


 もっとおっぱいを揉みくだせる娘を増やせば、サピエは喜ぶのかな?


 そうなら、もっと強くならないといけないのよね?


 おっぱいを揉みくだされるたびに、リナは今まで以上にレベルが付いていくのを感じるの。


 これが、性徴れべるあっぷというものなの?


 リナは、レベルが上がればもっとすごいことができるような気がする。


 もっと強くならないと……。そうだ!


 最強のモンスターの王と言えばあれしかないよね!



 だから、リナはソレを強く願ったの――












システム『魔人リナが魔王になることを宣言しました』


システム『≪魔王システム≫により空きスロットルから≪強欲之王≫が付与されました』


システム『魔人リナは強欲之魔王たる魔王リナに設定変更されました』


システム『35.931784749587635, 139.60628697203012 の周辺地域に発生するモンスターのランクが1段階上昇しました――』



…………



……




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