第4話パーティ追放&婚約破棄
吾輩は人である。
名はホモ・サピエンス。
今日、正式に婚約者とは婚約破棄され、サピエンス家からは放逐された。
さすがに≪おっぱい揉みくだし師≫クラスの名前からくるインパクトの威力は大きすぎたのだ。
家族にはどん引かれ、そんな奴は知らないと勘当同然に放逐された。
――もっとも、放逐は成人したら家から出るのは規定路線であったから良いのだが。
しかし婚約破棄されたのは地味につらかった。
「さすがに……、そんな気持ち悪いクラスの人とは付き合えません!」
今や聖女となり時の人となった元婚約者にそう言われてしまえば返す言葉もない。
きっと彼女は勇者においしくNTRされてしまうことだろう。
「そう、ずっと以前から貴方のことは気持ち悪いなってずっと思ってたんだよねぇ……」
くすくすと笑いながら吾輩のことを抉ってくる≪聖女役≫ミーコ・ホワイトキャッスルは、聖女になったことでかなり傲慢になっていた。
「なら、どうして婚約なんか……」
「そりゃぁ、貴族家どうしのお付き合いというものがあるじゃない。でも、そんな分かりやすいダメクラスであれば、双方の親も納得して婚約破棄に協力してくれるってものよね」
「そう……、か……」
婚約したからには少しは吾輩のことを好きなのかと思っていたが、彼女の内心的には貴族の単なるお付き合いのようだった。
とても貴族らしい思考ではあるのだが、吾輩はいままで恋愛で繋がっていたと思っていただけにショックだった。
そう、かなり好きだったんだがな――
彼女は今までのミーコ・ホワイトキャッスルではなく、本当に≪聖女≫になってしまったのだ。
こうして、吾輩は勇者の冒険者パーティからも追い出された。
将来を誓い合った彼女には捨てられ、勇者パーティからは捨てられるとは、なんという最低な人生なのだろうか。
≪勇者≫≪女騎士≫≪聖女≫という奇跡のクラスを得た冒険者パーティは世界からいきなり脚光を浴びることになる。
そう、パラチオン国すら飛び越えていきなり世界である。
この前、パラチオン王国王城で、ジメチルパラニトロフェニルチオフォスフェイト国王が勇者にひのきの棒を渡したそうだ。
ひのきの棒を渡された勇者とは、この世界では国に対して服従し、討伐の開始を始めたと宣言するに等しい行為だ。
その討伐がモンスターなのか、はたまた隣国なのかは世界中の関心ごとである。
そして、そんな中に吾輩≪おっぱい揉みくだし師≫が入る余地はない。
吾輩は両親から半年程度は生活できる程度の手切れ金という名のお金を入手するものの、結局は家まで追い出された。
だが、彼らは知らない。
婚約破棄を正式に報告する書状を吾輩が受け取った時、前世の記憶をありありと思いだしたということを―――
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可愛い女の子のおっぱいをめいっぱい揉みたい!
吾輩はいつもそんなアホなことをいつも考えている少年だった。
だって男の子なんだもの。
しょうがないだろう。
だが、吾輩に付き合っている女性などおらず、告白する勇気などももちろんない。
いつか現れる女性に対してそういうことをしたい欲望は満載なのだが、そんなことを考えているような男に彼女などできるわけがないのだ。
家に帰ってすることと言えば、大好きなシューティングゲームばかりだ。だから弾幕がいっぱいでてきてそれをかわすことを生きがいにしていた。
だから吾輩はそのとき、将来を思った。
ならばおっぱいを揉みくだせることを職にすれば良いのではないのだろうか。
そこで吾輩は調べた。
リハビリテーションというジャンルを。ほら、よくあるじゃん。あれあれ。
そして吾輩は作業療法士(OT)という資格を吾輩は見つけてしまったのだ。
作業療法士とはリハビリテーションの一翼を担う国家資格だ。
もしかしたらおっぱいが揉めるかもしれない。
作業療法士はお年寄りなどで身体や精神の機能が衰えた人や、怪我を負った人などに対して日常生活ができる応用力をつけるためのサポートを行うことができる。
おっぱいの機能をケアするにはそう、もみくだすしかないのではないだろうか。
似たような国家資格には理学療法士というのがあるが、あれは基本的な機能を回復するだけだ。
おっぱいを揉むのとは程遠いだろう。
そう思い勉強に励み、学校を卒業したころには、作業療法士とおっぱいを揉むのとは何の関係もないことが分かったのだが(あたりまえだ。そんなおっぱいを揉むための国家資格などあってたまるか)、人の能力を育成し改善させるこの仕事のことを吾輩はとても好きになっていた。
そうして就職を果たし、吾輩はひたすら頑張ったのだった。
「背が高く痩せぎすで目つきがなんとなくキモいけど有能な
周囲に吾輩の上司である医師の名前が名医と知られる程度には。
医師の名声は大いに高まり病院は作業回復能力が高いと有名になった(
その能力の高さの秘密、それは学生時代から始め、社会人になってからも吾輩はシューティングゲームをやりつづけていたことだった。
シューティングゲームをやりつづける集中力や目の鋭さが功を奏したのだろうか。
何しろ数年後には地域のケアマネージャも驚くほどの改善値をたたき出していたのだ。
周囲との差は一桁も差があった。
なんと一桁もである。
これ幸いとケアマネージャは次々と無理難題を送ってきたが吾輩は普通に対応し、そして次々と作業能力を回復していった。
そんな中に、かいちょー とよばれる人がいた。
吾輩にはかいちょーといえばちょー偉い人だろうという程度の認識はあったが、職業倫理として患者さんは誰でも同じ患者さんであるという認識を持っており、そのかいちょー という人にも普通に接し、そして機能を回復させた。
末期の癌で緩和ケアが必要とされる患者さんに、療法士として姿勢の改善やリハビリテーションにより最善を尽くす。本人の生きがいを思い出させ、やる気をとりもどす。OTとして、当然のことではないだろうか。
そのかいちょー さんは結局のところお亡くなりなったのだが、一時期かいちょー さんの会社に復帰してやりたいことをやったようだ。
そのかいちょーさんの復帰を快く思わない人がいないわけでもなく――
――もう、いいだろう?――
――もうやめてあげて。――
本人は大満足の大往生で、そして遺言に至っては吾輩への感謝の言葉もあったらしく、しかし親族はなぜか大激怒したらしい。
それが原因なのかは分からないが、ともかく吾輩は暗い夜道を歩いているところを突然誰かに押されトラックに轢かれて理不尽に死んだ。
(――あぁ、最後に可愛い娘のおっぱいが揉みたかったなぁ……)
そんなことを思いながら。
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なんだこのクソな前世は――
吾輩は憤慨した。
なんだよ、途中までは良かったくせに。
それならヒーラー系のチートなスキルが得られるはずが、最後の「おっぱいが揉みたいな」で大惨事じゃねーかぁぁ。
吾輩はスキルおっぱい揉みくだし師の由来となる前世の真実を知り、頭を抱えるのであった。
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