第二部 黄金の郷にて

71.第二部プロローグ 赤鎧の騎士

「貴様ら亜人がなぜ劣等種と呼ばれるのか分かるか。努力を知らぬからだ!」


 赤鎧を身に着けた男は、俺たち、ドワーフたちを前にそう断言した。


「どうして真っ当に努力ができないのか理解に苦しむ……。我らがこんなにも無償の善意をそそぎ、努力の価値を教えているというのに!!」


「善意、また善意か! お前たちはいつも善意善意と勝手に……!」


「シズク、落ち着け。相手の話に飲まれるな」


 シズクを制止しつつ、男が目を剥きながら熱弁したことを反芻して俺は「ふむ」と頷いてみせる。

 なるほど努力は大事だ。何事も最後にものを言うのは積み重ねた鍛錬に違いない。


「なかなか良いことを言うじゃないか。こなした数こそが生きる力だよな」


「ふ、ついに身の程を理解したかマージ=シウ。今さら歓心を買おうなどと――」


「いやいや、他意はないさ。ただひとつ聞かせてくれ。お前はその努力とやらのために、何人のドワーフ族を『使った』?」


「貴様は素振りの回数を帳簿につけるのか? そのような努力は形骸化して本末転倒。努力とはもっと崇高で無我なものだが……。まあ、一〇〇〇は下るまいな。目玉にすれば二〇〇〇個か」


「そうか、一〇〇〇人か。お前はそれだけ『借り』があるんだな」


 ならば、と。

 俺は赤鎧の騎士に右手をかざした。


「――【阿修羅の六腕】、起動。返す『努力』を始めようか」

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