第19話 復讐の狼煙


 ━━━創


 俺は分身を消して黒ずくめの人間を創造した椅子に縛りつける


「今からお医者さんごっこを始める。体を部位ごとに陳列されたくなかったら質問に答えて」


「俺から...口を割れると思うなよ...拷問なぞ効かん」


「そうかい、じゃあその前にそのフード取って顔を見せてもらうよ」


 ヤツのフードを剥ぎ取るとパトラの顔色が変わった


「何故...お前が私の命を...!」


「知ってるヤツなのか?」


「知ってるも何もコイツは私の部下だ! ラモン!」


 男は不敵な笑みを浮かべる


「...バレてしまいましたか、だがそんなことはどうでもいい。そして私は君たちに話すことなど一つもない」


「そっか...じゃあ口が軽くなるように早速始めよっか」


 早速俺は指を口の中に突っ込みまずは奥歯を一つ抜いた。


「ウ゛ン゛ァ゛ァ゛ッ゛!」


「おいおいあと31本あるんだ。たかが最初の一本でそんなに大きい声出すなよ」


 次の一本


「キ゛ァ゛ァ゛ァ゛!」


 また一本...


「ヤ゛メ゛ァ゛ァ゛」


 歯を抜いていく度に悲痛な叫びが木霊する


「これじゃあゼリーも食べれないね」


「ふぅ...はぁ...はぁ...た...えた...そ..」


 最期の一本を抜かれて息絶え絶えのラモンだが俺を見て勝ち誇ったような顔を見せた


「え? 舌を噛み切らないように抜いただけだけど、まだ始まってもいないよ?」


「は...?」


 ラモンは勝ち誇った顔から絶望の眼差しに変わる


「まあ噛み切ったところで俺の力を使って無かったことにするけどね。とりあえず指から」


 先ずは手の指の爪を一枚一枚丁寧に剥がしゆっくり骨を折っていく。

 その度に悲鳴が上がるが人を殺す覚悟があるならコレくらい楽勝な筈だ


「どう? ちょっとは話す気になった?」


「うぐ...い...や...」


「だよねそう来なくっちゃ!」


 意気揚々と再開しようとするがパトラが青ざめた顔で口を挟む


「お、おい...流石にやりすぎじゃないのか?」


「人を簡単に殺すようなヤツは殺される覚悟もあるって事だろ? 見るのが嫌なら教会でも行ってお祈りでもしてなよ」


「い...いや...私も最後まで見届ける」


「じゃ続きね」


 今度は火魔法で鉄の棒を炙る


「火魔法も扱えるのか?」


「まあ...使えるように創っただけさ」


 剥がれて敏感になった皮膚に鉄の棒をじっくりと当てると肉が焼ける音と匂いが鼻をくすぐる


「ア゛ツ゛ィ゛ァ゛ァ゛!」


「話す気になったかな? アンタは誰に頼まれてこの人の命を狙った?」


「い゛い゛え゛な゛い゛ぃ゛」


「そ。じゃあコレ口で咥えてよ」


 熱で真っ赤になった棒を顔に持っていき口の中に捩じ込んだ


「ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛!!」


「口の中がバーベキューになる前に話した方がいいよ」


 口から鉄の棒を抜き取った


「わかっは...はあす...はなす! わはしは...ただやとわれただけだ...」


「誰に?」


「ゆ、勇者様の御一行...大賢者モロン様に...!」



 ━━━大賢者モロン

 勇者一行の1人であらゆる分野の最高位魔法を使うことができる唯一の人間。

その能力を駆使して勇者をサポートする。

 名実ともに世界最高の賢者と言われる程の人物



「勇者に賢者か...それで内容は?」


「私は...パトラ様の護衛と先程のミイラになった女をウルティアに向かわせろと命令されただけだ。そして万が一...その女に死ぬ事があった場合、死ぬ間際に放った言葉を聞いた者は即刻処刑しろと...それが勇者様の為だと」


「お前はそれだけのために私の命を狙ったのか!」


 パトラはラモンに激昂する。

 そりゃそうだよく分からない理由で命を狙われたんだからな


「その通りだ、だが何故その言葉を聞いたら処刑になるのかは私も知らないんだ!」


「なるほど、それともう一つ。女が人を殺す前に出てた黒い靄はなんだ?」


「靄? なんのことだ...私は何も知らない」


「そうだ忘れてた。あんたの脳に指突っ込めば記憶読み取れるんだった。少しだけチクッとしますよー」


「やめ...おいやめ...ン゛ン゛ン゛!!」


 ラモンの頭蓋骨に指で穴を開けて突っ込む━━━


「うぅ...あへ...ぐっ...はぁ...」


「本当に何も知らなかった」


「...だから...言ったじゃないか。私は勇者様の為、世界平和の為に全てを捧げてきただけだ」


「━━━世界平和か。その大義名分にどれだけの人が犠牲になってるんだろうね」


「そんなものは大事の前の小事だ! 魔神を倒す為に必要な...キ゛ャ゛ァ゛ァ゛ァ゛!」


 俺はラモンの足の甲に鉄の棒を思いっきりぶっ刺した


「うるせぇな...犠牲になるのに大も小も無いんだよ。それなら俺が勇者も魔神も殺してやるさ」


「...ははは! お前が勇者様も魔神様もコロス? そんな事出来るわけないだろ! 世界最強の勇者様とそれに匹敵する魔神に! お前なんて一捻りだ!」


「そう...じゃあちょっと見てて」


 ━━━零


 俺は無の力を手に集め天に光る月に向け真っ黒い光を放った。

 月は黒い光を受けたと同時に跡形もなく消え大地が激しく揺れ始めた━━━


「嘘だ...どんなトリックを使った...」


「ただ消しただけさ。このままだと星の自転とかいろいろ狂うから元に戻すよ」


 ━━━創


 今度は青白い光を天に向かって放つと瞬く間に空に輝く満月が創造された


「ざっとこんな感じだよ」


 パトラが茫然としながら重い口を開いた


「ありえない...やはり君は神なのか?」


「いやいや俺は7日で天地創造なんて出来ないよ」


 ラモンも半笑いをしながら独り言を呟き始めた


「はは...夢を見ているようだ。確かにお前なら勇者様など一捻りかもしれん...だが...」


「だが?」


「彼にも特殊なスキルがある...それは... ァ゛ァ゛ァ!」


 彼の体は断末魔と共に黒い炎で燃え上がる。

 炎が消えた頃には骨も残らなかった


「口封じされたんだね...勇者の特殊なスキルってなんだろう?」


「わからない...ラモンの記憶には全く情報がなかった。それよりコイツの記憶の通りならパトラは今後勇兵団全員に命を狙われる」


「...もう私は勇兵団に居られないんだね」


「まあどのみち俺が宣戦布告としてココは潰す予定だったから少しだけソロデビューが早くなっただけさ。デビューシングルのタイトルはどうする?」


「全く...そうやってすぐつまらない冗談で茶化さないの!」


「つまらないってひどい......。ていうかまた口調変わってるよ」


「うるさい!」


「ごめんなさい...それより今からここを消し去ってパトラが命を狙われないようにするよ」


 創...雷神ノ足跡━━━


 空は瞬く間に黒い雷雲が広がり勇兵団本部の上空を覆う。

 すると稲光が次々と瞬き始め、その中から巨大な光を放つ雷が本部に向かって落雷し建屋は一瞬にして爆散した


「これが...本当に雷魔法なのか...?」


「いや魔法なんかじゃない。俺には魔力が無いからね」


「魔力がなければどうやって...」


「そんなことよりその中に1人体の形が残ってる奴がいるから取りに行ってくるよ」


 俺は焦げた建屋を掻き分けてまだ形のある死体を引っ張り出した


「遺体を使ってなにをするの?」


「お中元に使う」




*     *      *




━━━王都城内勇者の間


「あん...んん...もっと...勇者様...」


「私も...はぁ....くっ....あん...///」


 室内に響く淫らな声を邪魔するようにドアのノックが響き扉が開いた━━━


「全く...今いいところなんだから邪魔しないでよ」


 男はドアを開けたメイドの女に文句を言いつける


「申し訳ありません...ですが勇者様宛にこのような物が...」


「何? ちょっと見せて」


「では失礼します」


 渡された30cm四方の箱を開けた。

 中には手紙と何かを包んだ布が入っていた


「なんだこれは...」

 

 包みを開けると中には━━━






「勇兵団の...首だと...?」


 そして男は添えられた手紙を開く


『拝啓クズ勇者様。近々報復に向かいます 


                    フェル』


「フェル...? 誰だこいつは...」


「フェ...ル...」


 疑問に思う勇者の後ろで2人の女が勇者を見ていた━━━

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