第13話 勇兵団


 勇兵団本部大広間にて━━。



「伝令より、ウルティオにてガイル様に重大な損害があったと通達がありました」



 執事のような格好をした初老の男性が銀色の鎧を纏った赤髪の美女にガイルの状態を報告していた━━。


 

「どういう事だ? 詳しく聞かせろ」


「情報によると街に現れた銀髪の少年がガイル様の四肢を素手で......バラバラにしたそうです。その様子はまるで悪魔のようだったと......」



 本部の場内はどよめいていた。

 それはガイルの惨状についてだけではなく、人間が団員に対し重大な損害を与えた事件は勇兵団を設立してから一度もなかったからだ━━。



「なんだと......! それでガイルは死んだのか!?」


「回復術師が手当をして一命は取り留めましたが......バラバラにされた陰部、四肢、下顎については再生出来なかったとのこと━━」


「回復術師が手当をしたのだろう!? 再生しないはずが......」


「ですがどの回復魔法を使用しても元に戻る事はなかったそうです。まるで元々その部分が存在しなかったように......」


「そんなバカな事が......よりにもよってあのガイルがそのような事態になるとは。これは許されない事件だぞ......!」


「直ぐに御報告致しますか?」


「それは待て、報告は犯人を始末してからだ。腕に定評があるガイルを一方的に痛めつけたとなると相当な手練れに違いない。私が直々にウルティオに赴きその罪人を処刑する」


「承知致しましたパトラ様。では同行する兵を用意しますので少々お待ちを━━」


 男性はパトラの元から下がり、ある部屋のドアを開ける。


「さあお前の出番だ━━!」




*      *      *



 同刻━━。



 俺は服に付いた血を無くしガイルによって負傷した青年に駆け寄る


「うっ......。アイツは......どうなった......?」


「彼は二度と大腕を振って歩けない身体になったよ。そんなことよりすぐに傷治すから━━」


 青年のオデコに指を当てて元の綺麗な身体に戻す。



「ありがとう......妻と俺の仇をとってくれたんだね」


「お礼はいいから後で奥さんをきちんと埋葬してあげて」


「そうさせてもらうよ。そういえば君の名前は?」


「俺はジュノ」


「ジュノか......俺はルークだ。一杯奢るからあっちに座らないか?」


 奢りか......ブレナンおじさんに仕事の後オレンジジュースをよくご馳走になってたっけ━━。



「ありがとう。お言葉に甘えます」


 俺達は集会所の端にあるカウンターに腰掛けると、カウンターの向こうでは顔見知りの女性ウェイターがシェイカーをステアしていた。


 でもあの頃とは名前も顔も違うから気付かれる事ない━━。



「いらっしゃいませ。ご注文は?」


「俺は倭の酒、ジュノは?」


「俺は......オレンジで」


「ふふっ.....随分と可愛いご注文ですね」


「よく言われますよ」


「おいおい、そんなもんで良いのか? 酒は?」


「お二人には定年前に見えるでしょうが、俺はこう見えてまだ未成年なんでね━━」


「ふっ......確かに見た目は若いが、その瞳の奥に何かを背負ってるような雰囲気を感じたんだ。だからてっきり成人してるかと思ったよ」


「なるほど......それならこの後教会で背後霊をお祓いしてもらおうかな」


「ははは......君は冗談が好きなんだな。ところで何故ジュノは俺を助けてくれたんだ? 勇兵団に手を出せば取り返しがつかない事になるのは知ってただろ?」


「親切な野次馬が教えてくれたよ。それもヤツを倒した後にさ......」


「えっ!? って事は知らずに倒したのか!?」


「その通り。お姉さん......この店で1番強いお酒を貰えるかな?」


「ふふっ......お酒を飲んで記憶を消してもやらかした事実は飛びませんよイケメン君」


「そりゃ残念。それより......ルークは手を出したら殺されるのを分かった上でヤツを殺そうとしたって事だよね? 何故なんだ?」


「それは......愛する人を目の前で奪われたら何がなんでも復讐したくなるものだよ......」


 その気持ちは痛いほど分かる━━、でなきゃ俺も報復するために戻ってきてないしな......。



「俺はガイルを殺した後死ぬつもりだったんだ......アンナが居ない人生なんて生きている意味が無いからね。でも君が助けてくれた事で少し目が覚めた、勇兵団に追われようがアンナの分まで俺は生きるよ」


 ルークはグラスに残っていた酒を一気に飲み干した━━。



「ふう......ジュノの過去に何があったかは詮索はしないが辛くなったらいつでも言ってくれ。俺は出来る限り君の力になるよ」


 ルークは俺に手を向けて握手を待っていた。


「うん、ありが━━」


「おい! ここに銀髪の少年は居るか!? もしソイツを匿っているのならその者も同罪として処刑する!」


 集会所の扉は勢いよく開かれ扉の向こうから赤髪の女ともう1人が姿を現した━━。


「ん? お前は......」

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