第9話 行ってきます
ルキさんと出会ってからこっちの時間で40年が経過した━━。
俺はその間で無の力と創造の力の両方を7割程度会得することが出来た。
試練という名の拷問に耐え少しでも長く生き延びるため彼女に対抗しあらゆる攻撃方法、体の使い方や力の制御を叩き込み全神経を極限まで研ぎ澄ませた所でようやく多少渡り合えるようになるまでになった。
そして現在は外見こそ昔と変わらないが身体的強化も人間の限界を遥か彼方に置いていく領域まで到達した━━。
「あれから40年か......長いようで短かったな」
禍々しい渦が巻く異次元の扉の前で俺は毎日繰り返された拷問の数々やルキさんと交わした日々を思い出していた━━。
そういえばバターナイフで身体をゆっくり切り刻まれたこともあったっけ......。
何度も何度も逃げ出したいと思ったが、ルキさんの温もりとあの3人に対する復讐心のおかげでここまでくることが出来た。
「いよいよじゃな。今まで我の遊びに精神崩壊せずよく耐えた、今のお前ならたとえ神でも赤子の手をひねるように勝てるじゃろ。我には勝てないけどなっ!」
ルキさんは腰に手を当て誇らしげにふんぞり返っている。
「そりゃ勝てっこないよ。ルキは存在が反則だからさ」
「まあな、ただ油断するなよ? 負けるとは思わんがどんな相手でもお前の道を阻む者には全力で叩き潰せ! 我と戦った時のようにな━━」
「分かってる。例えどんな奴が相手だろうと"文字通り"叩き潰してやるさ」
「なら良い。ここを出る前に幾つか良い事を教えてやる、我の力でお前の世界を見たが勇者一行は随分と英雄扱いされておるな。まだ魔神を倒していないのにも拘らずあらゆる国々で持ち上げられておる。その権力を用いて散々の悪行しているが完全に揉み消されていた。その陰で泣いてる者もおる━━」
なるほど、相変わらずのクズ野郎で良かった。
そうでなくちゃぶっ潰し甲斐がない━━!
「それともう一つ。勇者に唯一刃向かったお前は大罪人扱いされ、勇者が愛する妻によって死刑に処されたとなっている。その妻とは━━」
「リーゼの事だな」
「そうじゃ。ただ勇者はそやつ以外にも色々妻を控えているな。そしてお前の母は━━」
「それは言わなくて良いよ......実際にこの目で見て確認する」
「そうじゃな、あらゆるものを己で見て判断しろ。それとコレが最後の選別だ━━」
ルキは俺の顔に手を翳し青白い光を放つ━━。
「......一体何をした?」
「お前の顔を我好みに変えた。前の顔も悪くは無かったが、大罪人且つ死んだとされているお前には変えた方が色々好都合じゃろ?」
ルキさんが生み出した鏡で自分の顔を覗くと以前とは全く違いミディアムな長さの青白い銀髪、顔は彫刻のように整っていたが少しか弱そうな印象を与える中性的なモノだった━━。
「これが僕......」
「日弱そうに見えた方がギャップあるじゃろ? まあ気に入らなかったらお前の力で変えるが良い」
「いや、ありがとう助かるよ。この顔は大事にする。あっちでありとあらゆる女を引っ掛けてやるさ」
「お前初手から浮気かぁぁっ! 微塵切りにされたいようだな?」
「じ、ジョークだよ! 本当にやりかねないから怖いっ!」
「わはは! 我もジョークじゃ、そもそも浮気という概念は我には存在しないからな。それと名前もフェルからジュノに変えておけ。我が名付けた名前には特別な力が宿る━━」
「ジュノか......ありがとうルキさん」
「そして最後に......お前の敵は勇者だけではない。ヤツだけに凝り固まらず視野を広く持つのだ」
他の敵......まあ何だって良い。
俺はアイツらをどん底に突き落とせるなら悪魔にだってなってやる......それを阻止する奴も子虫のように潰すまでだ━━!
「大丈夫、ここで培ったモノを最大限使う。復讐終えたら力を使ってまたココに戻ってくるよ」
「ああ、我は待っておる......。フェルの事をいつまでもな」
「最後の最後で僕の名前を呼んでくれたね。ありがとう」
「良いんじゃ。それとどんな時でもジョークを忘れるなよ?」
「もちろん! 行って来ます!」
クズ勇者共首洗って待ってろ......!
俺は禍々しく渦巻く空間に手を伸ばした━━。
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