第10話 目も当てられないプロフィール

 

 渦巻く空間に手を伸ばしあの世界から戻ってきた。

 目を開けるとそこはリーゼと出会い、そして殺されたあの展望台だった。


「40年ぶりか...とは言ってもこっちじゃ一年だっけ。それにしても久しぶりに明るい空を見たな」


 目を瞑っても瞼に光が照らされる現象に懐かしさを感じる。

 本当に戻ってきたんだ...


 とりあえずここを降りて街に向かってみよう。

 あまりいい思い出がない故郷とはいえやはり一年経ってどうなっているのか気になる。


 早速瞬間移動で街外れの森から街の様子を伺うことにした。

 俺の能力の一つである瞬間移動は一度行ったことのある場所になら一瞬で行ける能力である。

 転移魔法とは違い目的地に陣があればどこへでも行けるというわけではないが、呪文の詠唱と陣を生成する必要がなくいつでも発動出来るのがメリットだ。



*      *      *


「とりあえずクズ勇者の情報を聞き出さないとな」


 森から街道に出て街の門を潜ろうとするがガチムチな門兵に止められた


「すみません、カードはお持ちですか?」


 あ...街へ入るにはギルドで登録したカードが必要だったのをすっかり忘れてた!

 ポッケからカードを探すが一つ重大な過ちに気が付く。

 元のカードに登録されている名前と顔写真が今の俺と全く一致しないのだ....

 焦りながらカードを探すフリをして何とかこの場所をやり過ごそうとするが━━━


「君カード持ってないの? 無くしたならギルドで再発行の手続き取って」


「す、すみません...ついうっかり燃やしちゃって」


「おっちょこちょいだねぇ...とりあえず案内するからついて来なさい」


 門番に案内されてギルドの集会所受付に到着した


「この方のカード再発行をお願いします」


「はい、再発行と再登録ですね。ではこちらに手を預けてください」


 受付のお姉さんに言われるまま石板に手を乗せる。

 すると石板から青い光が放たれ空間に文字が浮かぶ


 《プロフィール》


 【名前】ジュノ

 【性別】男性

 【年齢】16歳


 次々と俺のプロフィールが浮かび上がる


 【種族】:人�Ж族

 【職業】:無し


「まだ無職なんですね...」


 受付のお姉さんの言葉が刺さる。

 そんな冷たい目でこっちを見ないでくれ...


「とりあえず冒険者で登録しておきます」


「よ、よろしくお願いします」


 流れで冒険者になってしまった...

 

 【Lv】9�ム


「レベル9...ふっ..」


 この女笑ってやがる!


 だがそれは仕方ない事でもあった。

 この世界のレベル9とは9歳の少年の8割が到達しているレベル。

 それを16歳の俺がそのレベルなんだから笑われてもおかしくない......しかし帰ってくる前より下がってるってどういうことだろう?

 そして次の項目でさらに驚愕する━━━



 【魔力】0


 0!? そんなはずはない...ここに戻ってくる前は少なくとも上位魔導士レベルの魔力はあったはずだ。

 この石板イカれてるのか?


「あなた魔力持っていないんですか!? 個人差はあれど皆少なからず持っていると言うのに...だからレベルが低いのですね...」


 そんな哀しい目でこっちを見ないで...


 【スキル】魅了

 【スキル】床上手


 床上手...だと...?

 まさかルキさんと40年毎日交わったからそのせいで━━━


「ふふっ...あなたその見た目だし冒険者辞めて女性貴族相手に床上手な商売をしたらどうでしょうか?」


 受付のクソ女はこちらを見て完全にバカにしているな。

 勇者の前にコイツにまず報復したいと拳に力が入る。

 そんな想いをよそに文字は次々と浮かび上がる


 【スキル】拷問上手


 最悪のタイミングで最悪のスキルが出てきた...

 どっちかと言えばされてた側なのに上手ってなんだ!

 


 「きも...」


 クソ女はバカにした眼差しから軽蔑の眼差しへと変わった


 【スキル】�ム舒�チ殼

 【スキル】�ソ傴�ウ鏽

 【エ�畢】---

 【エ�畢】---


「うーん、さっきから文字の表示がおかしいですねぇ...まいっか。とりあえずこの辺でカードを発行します」


 普通ならこの後にHPやらMPが諸々出てくるはずだがこれ以上俺のプロフィールが出てくることはなかった


「それとこちらの魔写機で写真撮りますのでそこに座ってください」


 写真が撮られ新たなギルドカードが発行された。

 振り返ると先ほどのプロフィールがバレていたのか周りからクスクスと笑う声や会話が耳に入る


「レベル9だってぇ...」


「うちの子より弱いんじゃね?」


「さっさと帰ってレベル上げしとけって...」


「アイツ今まで何して生きてきたんだ?」


「良いのは顔だけじゃん...」


 みんな言いたい放題言ってくれる。

 俺が幼い頃はもっとみんな優しくて温かい人達のはずだったんだがな...

 まあ気にしても仕方ない。

 まずは勇者にどうやって近付くか策を練らないと...


「おいクソガキ。お前みたいな雑魚は俺に金置いてさっさとママの所に帰りな」


 男の一声でボソボソ喋っていた声がピタリと止む。

 声の主は女を両肩に抱いて立つ大男だった━━━

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