第4話 おまけ①【時間の支配者】

こもれび

おまけ①【時間の支配者】


 おまけ①【時間の支配者】




























 「ジューク、いる?」


 「いるよー、なにー?」


 「また烏夜が悪だくみしてるらしいけど、いいの?」


 「んー、よくないけど」


 「けど?」


 「面倒臭い」


 「それか」


 「それに、テトとかシェドレとかみんなが監視してくれてるんじゃないの?」


 「なんか上手くかいくぐってるってさ。シェドレが見つけられないみたい」


 「じゃあ難しいね。アダムは?」


 「アダムはお前のこと嫌いだろ」


 「そっか」


 部屋というか空間にもともといた男は、赤い髪に紫の目、左目の下にはホクロがついている。


 その場所にやってきた水色の髪に黄色の目、右目の下にホクロのある男。


 「放っておくとまた大変なことになるかもしれないよ」


 「大変なことって?」


 「人間が食われ過ぎて人口が減るとか?」


 「別にいいんじゃない?そういう選択をしたってことでしょ。一応、烏夜は決定権を与えてるからね。勝手に動いてるわけじゃない」


 「そうだけど」


 「ねえねえ、そんなことより知ってる?」


 「なにが?」


 「最近さぁ、美味しいクレープ屋さんが出来てんだって。食べたいね」


 「クレープ?甘いもの好きだったっけ?」


 「そこまで好きじゃないけど、甘いものって必要でしょ?」


 「そういえば、一縷とは仲良く出来てる?」


 「・・・・・・」


 「喧嘩でもしたの?」


 「だってさー超真面目なんだもん」


 「そういう役割だからな。あいつが役目を疎かにすると、人間は希望を見なくなる」


 「別にいいじゃん。見なくたって」


 「そういうわけにはいかないんだよ」


 「なんで一縷はそんなに人間が好きなんだろうね」


 「好きとか嫌いじゃなくて。それが役目なの」


 「わかってるけどさ」


 「あいつの役目は“一縷の望み”を生みだすこと。そのために存在してる」


 「まったく。人間のためによくやるよ。雅楽だっけ?あいつも元人間とはいえ、別に人間のために頑張る必要はないのに」


 「信じたいだけだろ」


 「何を?」


 「人間ってやつをさ」


 「意味分かんない」


 「大人になればわかるよ」


 「俺を幾つだと思ってるの?」


 「精神年齢の話だから」


 「テトに喧嘩売られたー。買わないけど。わらび餅食べようよ。冷蔵庫に入ってるから」


 「あ、俺食べた」


 「やっぱ喧嘩買うよ」








 「・・・なんだこれは」


 「クレープだよ、知らないの?」


 「知ってるが、食べろってことか?」


 「そうだよ。一縷くんと仲良くしたいなーと思ってね。クレープで仲良くなろうかなーって」


 「・・・・・・いらねぇから失せろ」


 「酷い。悲しい。泣いちゃう」


 「勝手に泣いてろ」


 「一縷の望み、俺にはくれないの?」


 男、ジュークの言葉に一縷と呼ばれた男はため息を吐きながら睨みつける。


 「てめぇで時間でも戻しゃあいいだろう」


 そう言って去ってしまった一縷を見て、ジュークは手に持っているクレープを2つとも口に運ぶ。


 口元をクリームだらけにしながら、言葉とは裏腹に笑みを浮かべる。


 「・・・冷たいなぁ」


 ぺろりと唇を舐めとると、ジュークは鼻歌を歌いながら一縷とは逆方向に進んで行く。








 「何してるんだ?」


 「んー?一縷くんと仲良くなるために、まずは和装かなーって。似合う?」


 「・・・それ和装っていうか一昔前の泥棒の格好だぞ」


 「唐草~♪」









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