第二十二話 終焉の鐘が鳴る
〝
世間ではそのように認識されているが、正しくは空間を繋ぎ、クリフォトより
これの発生についてはアディシェス帝国、ひいては
そして、ディアナが帝国の出身である事も——ノエルは知っていた。
けれども、まさか。
まさか、彼女が——。
「ディアナ……どういう、事だ!?」
「どう、と問われましても。
こちらを
階下にいくつもの
が、音は耳を通り抜けて行き、状況を把握するには至らない。
「何故?」「どうして?」と渦巻く疑念が
「君は、
ノエルは奥歯を噛み、拳を握り締めた。
彼女との出会いは、教団に来て間も無くの事だ。
ノエルの世話係に選ばれた、名も無き子ども。
宿した【悪魔】の
そのように認識していた。
彼女の——〝ディアナ〟と言う名は、ノエルが
主従の
共に過ごした歳月で作り上げた絆が、重ね合わせたぬくもりが、そう思わせた。
——だというのに。
「一体、いつから……っ!」
彼女は自分を
ノエルは胸の痛みに、息苦しさを覚えた。
「……最初からですよ。
ノエル様と出会ったのは、
私の
忘れるはずがない。
使い勝手の良い力に、何度頼ったかわからない。
「精神操作……呪い……幻影……魔術」
「ええ、そうです。
人を
面白かったですよ? 人を意のままに操るというのは。
ああ、そうそう。もう一つ、面白い事を教えて差し上げますね」
欠けてゆく月の様に口元を三日月へと変えて、ディアナは告げる。
「
あれを
ノエルは「ひゅっ」と吸い込んだ息を詰まらせ、耳を疑った。
ノエルが
術者の命を
「君……が……奴らに……」
声が震えて、音が上手く出せない。
「ノエル様の不幸は全部、ぜーんぶ!
……仕組まれていたんです。
ノエル様は、レーシュが一番大切。
それ以外はどうなっても構わないと
それが、貴方の弱点。敗因ですよ」
信じ
人は
そのことは、
だから、情に流されて
ディアナは、それでも心を許した数少ない相手だった。
「僕、は……」
何を、思えばいいのか。
白紙となった頭では思考できず、様々な感情が巡る心は
「
貴方は絶望している姿が一番、美しい」
悪魔が
頬をラナンキュラスの花のように赤く染めて。
自分が今、どのような表情を浮かべているのかなんて、知りたくない。
「話が長くなりましたね。
さあ、
ディアナが右手を垂直に
と、
円を
「——やめろ!!」
突きつけられた事実に打ちのめされていたノエルは、一瞬、反応が遅れた。
それが、致命的なミスを
ノエルは神槍を作り出して短剣を撃ち落としたが、撃ち漏らした最初の一本が、
音を立てて、崩壊した。
『——警告。
『術式の改変を
安定起動のためのマナが不足しています。
術式の改変は
失われれば、成り立たないのは当然だ。
すぐに立て直さなければ、これまでの努力が水泡へ帰す。
それにはまず、
ノエルは力を
指先が冷えて、酷く震えている。
こんな状況になって初めて、思い知らされた。
自分で思っていた以上に、ディアナへ感情を傾けていた事に。
裏切られたとわかっても
(——今更、裏切り
何を犠牲にしても——姉さんを守ると、決めたんだ!!
不要な感情は切り捨てろ!!)
ノエルは叫ぶ。
「ディアナァァッ!!」
あらん限りの声量で。
自らを鼓舞し、情を捨て去り、目の前の少女を殺すために。
しかして、神槍を生み出して、ディアナへ放った。
——だが。
照準の定まらない
「僕は……僕は……ッ!!」
苦しさだけが、胸に降り積もって行く。
ノエルはままならぬ自身の感情と行動に
「……可哀想なノエル様。
でも、大丈夫です。私が終わらせて差し上げますから。
貴方の痛みも、哀しみも……死の安息が、
「おやすみなさい、愛しい人」
こんなところで終わる訳にはいかないと、ノエルは
槍を放つよりも早く、魔獣の牙と短剣の雨が襲来した。
迫るそれらが、ノエルには
この感覚は、何度か経験した事がある。
危機に直面した時に
もうすぐそこに、自分を貫こうとする鋭利な刃が迫っていた。
まるで時の流れが引き延ばされたような感覚の中で、終わりを予感した——次の瞬間。
『
ひやりとした冷気の防壁がノエルを包み、刃を
次いで焼け付く熱気を
「まったく、何がどうなってるのやらだわ」
「
桃色の髪を
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