第十四話 ディチェス平原の争乱、再び
聖歴
エターク王国とアディシェス帝国の国境——ディチェス
〝ディチェス平原の争乱〟で大きく地形を変えたその地は〝破壊〟と〝崩壊〟の力の影響からか、
エターク王国軍は、両国を
現在の王国軍の戦力は、王都を出立した内の半数、魔術と早馬を
帝国軍はまだ国境へ姿を見せていないが、
関所の一つに建設された〝オンブル
決定した作戦に従い、ルーカス
——国境の南東、限られた狭い範囲に広がる森林地帯。
「しっかし、ゼノンも思い切ったよな」
雨水を吸ってぬかるむ道を、特務部隊の団員達と列を
ルーカスは足を止めず、視線だけをディーンへ向ける。
黒色の
「あいつは昔からそうだろ? 使えるものは何でも利用する。それが例え家族や友人、そして自分自身であったとしても、勝算があると踏めば
「ま、そうなんだけどさ。最前線に立って自分を
ディーンが口角の端をくっと持ち上げ、さも
早期決着を狙ってゼノンが
その心意気は見事だ。
だが、こうと決めたら
最終的にゼノンはイリアを味方につけ、「私が殿下の
そして特務部隊は〝敵将の制圧〟という重大任務を任され——ルーカス達はここにいる。
「……ゼノンは出来ないと思った事は言わない主義だ。俺達も期待に
ルーカスはディーンへ向けた視線を、
あちらはイリアとフェイヴァだけでなく、
(
悪天候の中、限られた人数で敵の
別動隊として動員された団員の人数は
作戦会議を終えて
今回、大軍と渡り合うため〝第三限定解除〟——
『大丈夫?』
と、眉根を下げて腕を引くイリアの姿が思い返される。
確かに過去を思うと心は未だに痛む。
けれども、悔やんでばかりはいられない。
心を砕き思い遣ってくれる彼女に、ルーカスは胸の内を伝えた。
『俺は大丈夫だよ。辛くないと言ったら嘘だが……過ぎ去った戻らない日々を悲しむよりも、この先へ続く未来の方が大切だ』
彼女の手を握り、瞳を射抜いて。
暗にイリアと
イリアは頬を赤らめて
『なら、こっちは任せて。気を付けて行って来てね』
銀糸が
柔らかく温かな
責任は重く、巡礼団の出方次第では難しい任務だが、不思議と〝失敗〟の二文字は浮かばない。
「必ず
「——団長、どうやら敵も奇襲を狙っている様です。
まだ距離はありますが、南方から
後方を歩くアイシャが
それと同時に、開戦を
戦いの
「
ルーカスは
ナビアでの独立戦争から二年——。
その間、王国では国境で小さな
これより先、
訓練は重ねていても、実戦とは違うものだ。
「了解っす」
「久々の戦場は気が重いですね」
「このところ魔獣の相手ばっかしてたから、余計にそうだよなぁ」
「ハーシェル、アーネスト、
ディーンが二人に声を掛けながら、
「んでもって、苦しませず、
空いた手が剣身へと触れ、魔術の
〝
「
「無論です」
団員達が足を止めて次々と、
「——来るわよ!」
「魔術と飛び道具への警戒を
ルーカスは目を
草木が
ルーカスが地を
『
タイミングを合わせたかの様に展開した、
再び、
こちらの急所を狙って飛来する一本の
そして数度、同じ要領で矢を落として見せる。
すると「チッ」と舌を打つ音が聞こえて、左右から白い
一見すると
「帝国の兵だな」
刀身の黒い剣を振りかざした敵が、問答無用に斬り掛かって来た。
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