第十三話 獅子の誇り
ルーカスは
ディーンやフェイヴァとも話したい事は
軍議の間へ到着すると、入口を守る騎士との挨拶はそこそこに、ノック音を響かせて室内へ訪問を
入室すれば、
ルーカスは彼らの
「ルーカス・フォン・グランベル、
「戻ったか。呼び戻して悪いな、ご苦労だった」
顔を上げると、
その両隣には同じく
「陛下、状況はどうなっていますか?」
ルーカスの後ろから透き通る
この場へ
後ろ背に続いた彼女が隣へ並び立つと、円卓の席へ着く師団長達のざわめき立つ声が聞え、その内の一人、壮年の男性が立ち上がる姿が見えた。
「ルーカス団長、そちらのお嬢さんは一体?」
壮年の男性が眼鏡越しに
彼は第一師団の団長、バーナード
アーネストの父親でもあり、軍部では高い地位に
(父上も信を置く人物だと記憶していたが……)
レナートへ視線を送ると首を横に振る動作を見せたため、イリアの事に関しては伝えていなかったようだ。
であるならば、誰とも知れない彼女の発言と存在に疑問を
皆の注目が一身に集まる中、ルーカスはイリアを手のひらで示して見せた。
「皆さんも素顔の彼女と会うのは初めてでしたね。
彼女は
ルーカスの紹介を受けたイリアが
正体を明かす事は、事前に彼女も同意している。
「
バーナード侯爵ではない、別の師団長の驚く声が聞えた。
彼らの反応は、目を丸くする者や、
初めに疑問を投げかけた、バーナード侯爵はというと。
「そうとは知らず、大変失礼致しました。大災害の際、王都をお守り下さった事、感謝しております」
一度目を見張って見せたが、すぐさま事情を飲み下したのか、銀の髪が輝く彼の頭が深々と下げられた。
すると、その姿を見た他の師団長達が弾かれたように立ち上がり、そして、一斉に礼を示して見せる。
これは少し予想外の展開だ。
感謝を表すため、十数人がそうしていると
まるで君主を
「わ、私は出来る事をしたまでです。それよりも今は、迫る
気恥ずかしさからだろう、イリアはほんの少し動転した様子で話し、それから困った様に
彼女は正しく感謝されて
だが、
ルーカスは軍議を進めるべく、話題を投げる。
「アディシェス帝国が国境へ迫っている事は聞き
「報告では約
話題を拾ったのはゼノンだ。
それは師団長達も同様で、彼らは礼を解くと重苦しい雰囲気を
「……思い立ってすぐに動かせる数ではないですね」
「帝国の事だ、大人しいフリして機を狙っていたのだろう」
「奇襲は奴らの得意とする戦術だからな」
師団長達からそんな発言が
確かに、六年前ゼナーチェ王国が
前兆すら見せず一昼夜の内に攻め上がって、かの国を
他国へ
「宣戦布告は驚きましたが、あちらの
そう
ルーカスは父へ問い掛ける。
「
「教団——厳密に言えば、帝国領に入った巡礼団からだ。
ロベルト副団長から報告があった件は無論、
案の定というか。
情報源である彼らが、こちらの足止めを狙ってあえて情報を伝えたのだろうという、思惑が透けて見えた。
「……やっぱり、あの子が絡んでいるのね」
声の
「急がないと。ノエルが
「——陛下」
焦りを
ロベルトの報告を「承知している」と言ったが「どうするつもりなのか?」と問いかけるように。
間を置かず、陛下は告げる。
「ルーカス団長が言いたい事は理解している。
アディシェス帝国の侵略、そして教皇ノエルの独善を許してはならん。
——我らは打って出るぞ」
力の
両隣に座る父とゼノンも
師団長達からは「おぉッ!」と雄叫びが上がる。
既に彼らもその
元より理不尽を
「それを聞いて安心しました。
帝国と
王国騎士が
アディシェス帝国軍は国境へと迫り、巡礼団はその帝国領内に入っている。
(俺とイリア、それとフェイヴァ。使徒の力はこちらも有しているが、事を
時間的
事態は切迫しているが、方向性が固まった事で、心に
それはイリアも同じだった様で、ほっとしたような微笑みを浮かべていた。
「ありがとうございます。私も女神様の代理人として、最善を尽くします」
彼女は握った右手の拳を胸に当て、左手で衣服の
(こういったところは、本当にブレないな……)
イリアの
この身に宿る〝破壊の力〟のように、全てのしがらみを消し去り、彼女が気負う事なく笑える未来を切り開きたいと、
そうして、ゼノンを総大将として、父レナートを指揮官に
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