第十五話 会敵
戦の早期決着を狙って決行された奇襲作戦。
任務を遂行するため足を踏み入れた南東の森林地帯で、同じく奇襲を狙ったアディシェス帝国の部隊と
ルーカスは現れた複数の帝国兵と対峙していた。
彼らはルーカスを取り囲むと、容赦なく斬り掛かって来た。
ルーカスは一人目の
「ぐあ!」
気持ちの良いものではないが、気に
すぐさま振り返れば、頭上に剣を振りかぶって迫る三人目の敵と目が合い、その表情が驚きに染まった。
恐らくこちらが反応出来るとは思っていなかったのだろう。
「がはッ!」
太刀筋の
ルーカスは
肉薄すると敵は「ひ……!」と悲鳴を上げ、全て聞き終わる前に一刀のもとに斬り捨てた。
——背後から殺気を感じて、横へ飛ぶ。
すると、黒剣が地を
一瞬で距離を詰めると、背から心臓へ刃を
「あがッ……こ……の、化け、ものめ……」
(悪いな。
何も感じない訳ではないが、戦場に情は不要だ。
各所から戦闘の音が響いて来る。
ルーカスはその音を聞きながら、木々の合間から黒剣を両手で握り締め、鬼の形相で迫る新たな五人目の敵を瞳に
対処するため踏み込む姿勢を取る。
しかし、またしても風を切るような音が耳へ届き、直感で危険を悟った。
前進しようとする体を後方へと
すると、後退した事を好機と見たのだろう。
「もらったぞ!」
敵がにたりと笑い、黒剣が上段から振り下ろされた。
更に背後から二人の敵が現れ、挟み撃ちの形だ。
遠方から狙う
何故ならば——。
「
「チャチャッとあっちを片付けて来るっす!」
帯電した大剣を
この展開をルーカスは読んでいた。
対処すべきは目の前の敵だ。
剣が振り切られる前に、胴へ神速の
にたりと笑った敵の表情は苦しみに
「歯応えがねぇなぁ」
後方へ視線を向けると、ディーンの足元には、白の
大剣の斬撃と
正直、遭遇した兵の練度はそれほど高くないようにルーカスも思った。
しかし、何が起きるかわからないのが戦場の怖いところだ。
「油断するなよ。残りも片付けるぞ」
「
今はただ、
そうしてルーカスはディーンと遊撃に回ったハーシェルと共闘し、敵の奇襲部隊を片付けて行った。
周囲から響く戦闘音は
戦闘が終わる頃には、いつの間にか降り始めた雨の
鼻を刺す
ルーカスはディーン、ハーシェル、アーネストを
「あまりにもあっけなさ過ぎますね」
ロベルトが
それは
「不気味だな」
ルーカスは同意して
奇襲を狙ったのであれば、任務を
もう少し苦戦するものと思ったが、あっさりと一方的に制圧出来てしまった。
「今のところ他の部隊の反応は見られませんが、後続があるものと考え警戒致します」
「ああ。頼んだぞ、アイシャ」
「はい」
警戒して備えておくに越した事はない。
しかして、ルーカスは各班の隊長と会話を交わし状況の確認を終えた。
帝国軍の奇襲部隊が
感じていた違和感の通りの結果だ。
だが、それを考察している時間はない。
そうしていると、こちらへ近付く三名の団員の姿が見えた。
それぞれ細身な体格、バランスの良い体格、がっちりと大きな体格をした三人組だ。
リエゾンの
「団長、副団長、アイシャさん。帝国兵がこの様な物を所持していました」
細身な体格の団員、リクがそう言って、手のひらを差し出した。
ネイト、ブライスも同様に手のひらを差し出し、そこには何やら黒く大ぶりな石つぶての様な物が乗せられている。
ルーカス達はそれを手に取り、まじまじと見つめた。
透けもなく光を通さない黒い石——。
物体からは
「
リクが
マナが結晶化した鉱物、
未加工の原石はこのような形状であるが、無色である事が
「……
耀きを失った黒。
まるでイシュケの森で見た
「
アイシャの
視線を向けると、
「こんな物まで存在しているとは驚きですね」
「解析の必要がありますね。陣へ戻ったら私から解析班に回しておきます」
アイシャは
鉱石はルーカスとロベルトの分も回収され、そこへ
「三人共、報告に感謝する」
「とんでもありません。では、ボクらは配置に戻りますね」
ルーカスが告げると、三人は手早く敬礼をして隊列へと戻って行った。
また新たな謎が一つ増えた。
(その用途は不明だが……魔神と少なからず繋がりがあると思われるアディシェス帝国の兵が所持していた事には、きっと意味がある)
この世界にはあと一体いくつの秘密が隠されていると言うのか——。
哨戒組と合流したルーカスは、湧き上がる疑念を
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