第三十八話 軍議の間への招集
聖歴
エターク王国王城、軍議の間。
三日の強制休暇を経て、出勤したルーカスは、その場を
部屋は四方が窓に
円卓の席に着いていたのは扉を開けて正面奥に国王レックス陛下。
その左手に
右手に
ルーカスは皇太子妃が居る事に違和感を感じつつも、部屋へと入室し、その後ろからは銀の髪を
何故イリアも一緒にいるのかと言うと「大地震に続く
その
「呼び出して悪いな、ルーカス。ああ、この場は見知った顔しかおらん、礼は不要だぞ」
黒のアシンメトリーの短髪に、風格のある熟年の男性——レックス陛下は、切れ長の紅の瞳を細め、
「では、お言葉に甘えて。休暇をいただきありがとうございました、
「ゆっくり休めたか?」
「はい、お陰様で。この大変な状況下に俺だけ休んでいるのは気が引けましたが……」
「それもまた必要な事だ。放っておくとおまえもレナート同様、働きすぎるきらいがあるからな」
陛下は「なあ?」と、自分に似た容姿の特徴を持つ、くせ毛にセミロングの
話を振られたレナートは「それは否定できんな」と苦笑いを浮かべた。
働きすぎと言う点については、ルーカスも自覚があったので、痛いところを突かれて、父と同じく苦笑いを浮かべるしかない。
すると集まった面々からかみ殺したような笑い声が
そんな様子に陛下は「ははは!」と大声を上げて、ひとしきり笑った後。
「こうして素顔の貴女と会うのは初めてだな、戦姫レーシュ殿。
陛下は頭を下げて感謝を伝えた。
それに対しイリアは一歩前へ出ると、右足を斜め後ろ、左足の内側に引いて膝を曲げる。
背筋は伸ばしたまま両手でスカートの
「国王陛下、お目に掛かれて光栄です。その件は
それに感謝を伝えなければならないのは私です。記憶を無くし寄る
「そう
「それもまた、女神様の
イリアは姿勢を戻しながら
感謝を当然のものとして受け入れず、
「イリア、素直に感謝を受けても
「でも、私は
彼女の精神は、
「君の恩人は、
ゼノンが金髪の輝く頭をわずかに
珍しく同意であったため「全くだな……」とルーカスは
イリアを盗み見れば「そんなことない」と言わんばかりに眉根を寄せられた。
「けど、記憶が戻って良かったじゃないか。君の
ゼノンは陽気に声を弾ませ、紅い瞳を三日月に変えて、いつもの
きっと笑顔の仮面の下で、
ルーカスが次に発せられる言葉を想像して
「ゼノン様。そのような顔で、そのような事を
容姿は
彼女はゼノンの妻、皇太子妃アザレアだ。
「おっと、これは手厳しいな。でも、そうだね。ルーカスに嫌われては困る」
アザレアはナビア連合王国の王女で、同盟を締結した際、両国間の
言わば政略結婚であるのだが、二人は存外に相性がいいらしく、このように信頼があって
それはそれとして、ルーカスは疑問を投げかける。
「それで、今回はどのような意図があってこの場を
父レナートが居ると言うことは、軍事に関わる件だろう。
だが、国政はともかく、皇太子妃アザレアが軍議に顔を出すことなどこれまでなかった。
「まあ、まずは二人とも掛けなさい」
レナートが空いている席を示して
腰を据えてじっくりと、という事だろう。
ルーカスはその言葉に従ってイリアと共に移動し、隣り合う席に腰を下ろした。
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