第二十八話 道がないなら作ればいい
イリアの魔術〝
だが——その力を
(あれの破壊が可能なのはやはり、この身に
一刻も早くあちらへ渡り対処すべきだが、
ならば——と、策を思案していると後方が騒がしくなり、ルーカスは振り返った。
急いで駆け上がって来たのだろう四人は深呼吸を繰り返していた。
気持ちが
いち早く呼吸を整えたロベルトが一歩前へ踏み出し、ルーカスに問い掛ける。
「それで、どうするのですか?」
「あの場へ行き
「
「待っていては時間がかかりすぎる」
「では……?」
ルーカスは首を
吊り上がった
「
あちらへ渡る方法はいくつか思いつくが——
一瞬、思考する様子を見せたアイシャは、期待を裏切らなかった。
「ええ、その通りですね」
ルーカスの意図を汲み、自信に満ちた表情でアイシャが微笑む。
彼女はすぐさま行動を起こし、
「貴方達、手伝って
「道……ですか?」
戸惑った様子の魔術師がルーカスへ視線を送って来る。
「俺の持つ力なら
ルーカスは
彼女の元へ行くには、彼らの協力も必要だ。
暫しの間を置いて、彼らは
「それが今、私達に出来る事ですね」と、力強い光を瞳に宿して。
そうしてアイシャと魔術師達は魔術の準備を始めた。
ルーカスはロベルトへ視線を戻し、告げる。
「ロベルト、
ロベルトの
隣のシャノンと、ハーシェル、アーネストも驚いた表情でこちらを見つめている。
第二限定解除——。
それが意味するのは更なる力の開放。
相応の
「驚くのも無理はないが、必要な事だ」
「……
「ああ、頼んだぞ」
ルーカスの言葉に
それを横目に、ルーカスは
(すぐに行く。もう少しだけ、待っていてくれ)
左腕に
(俺に
過去は消えない。
(だが、愛する人を守る
揺るぎない想いを胸に、拳をぐっと握り込んだ。
しかして、ルーカスは残りのメンバーに必要な指示を伝えるため振り返る。
「アーネスト、手の空いてる者と一緒に
「はい、団長」
アーネストは敬礼を返すと、近くの騎士達に声を掛け、足早に制御機関の置いてある
もう間もなく
ルーカスが先行するにしても、橋を上げたままでは事態の収拾に遅れが
『舞い踊る雪、吹き抜ける風——』
アイシャたちの準備が整ったようで、透明感のある声が詠唱の
キラキラと輝きを放ち、銀色のマナが淡い青色へと色付いて舞い踊っている。
「ハーシェル」
「はいよ! 『
身体速度を大幅に向上させる強化術を受け、身体が羽根の様に軽く感じる。
「助かる。ハーシェル、騎士団が到着したら状況を見て合流するよう伝えてくれ」
「了解っす。気を付けて下さいね。ま、団長なら万が一もないでしょうけど」
「お兄様、私は?」
隣に立つシャノンが、自分も何かしたいと言いたげにルーカスを見上げた。
「橋が
ルーカスはシャノンの頭を優しく
桃色の髪はふわふわでさらりとした指通りの良い感触だ。
シャノンが「わかった」と
魔術の完成が近付いている証拠だろう。
肌寒さを感じながらルーカスはその時を待った。
『——大地を伝い、汝がための道を
魔術師とアイシャの声が重なり響き渡り、辺りに雪が舞い落ちる。
『
術名が
するとそこを起点に波が一瞬の内に
街道へ続く、氷の道の完成だ。
ルーカスは体を低くし、地に付いた足へ力を
「お兄様、気を付けてね!」
「ああ、行って来る」
シャノンに微笑んで告げたルーカスは、ハーシェルと、通話を続けるロベルトに見送られながら地を蹴って
氷に向かって跳び降りる。
ひんやりとした冷気が肌を刺した。
着地と同時に氷を蹴って再度跳び上がり、
イリアの元を目指して——。
距離が近付くにつれ視界が
閃光が絶えず生まれ、
戦場はもう目の間に見えている。
(あと少し——!)
ルーカスは氷を踏み台に強く蹴り込むと、街道目指し一気に跳んだ。
強化術の助けもあり、
ルーカスは足を地に着け反動を押し殺すように
瞬時に顔を上げる。
目の前は光線が降り
次の瞬間、光が地面を削った。
触れていれば魔獣と同じく身を焼かれていただろう、と先細りして消えて行く
しかし、この光の包囲網を抜けねば彼女の元へは
ルーカスは空気を吸い込み、深呼吸。
(——行こう)
無数の魔法陣から落ちる激しい光の雨の中へ。
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