第十六話 余興の終曲(フィナーレ)
ルーカスは次に倒すべき相手を探して戦場へ目を向けた。
残っているのは——状況的に、
だが、ラメドはロベルト達に任せておけば大丈夫だろう。
人数差もあって、もうすぐ決着しそうな流れにある。
対処すべきは大量の魔獣の幻影を操るアインだ。
「ルーカス、アインの幻影を断ち切って」
イリアが一体の魔獣を差し示して見せた。
指先を追っていくと、
地上で魔獣と
仕留めたと思った数秒後には元通りの姿で飛んでいた。
「
イリアの言葉にルーカスは
「大きな的だ、ここからでも届くだろう」
両手で
「当たるなよ、フェイヴァ!」
刀身を離れた紅い斬撃が空を
二つの斬撃が
一発目は翼に、二発目は胴体に命中して——不死性を持つという
後は大量の幻影を排除して、アインを
どちらも今の状況ならば難しい事ではない。
「もう一手だな、決めて幕引きとしよう」
「そうね、舞踏会は終わる。
イリアが宝剣を抜き、幻影の魔獣が埋め尽くす戦場へ向けた。
魔術で一掃するつもりだろう。
であれば、自分はアインに
『神なる
『
ルーカスはいつでも駆け出せるように、開いた足に力を
目を
『
展開した魔法陣から一斉に
目を覆いたくなる照度の中、ルーカスは魔術から
上だ。隆起する巨大な
魔術の及ばない——恐らく意図的にイリアがそうしたのだろう——場所に、アインは退避している。
【世界】の
「詰みだ、アイン」
少しでもおかしな動きを見せれば、力で消し去れる距離だ。
色素が薄く白い彼女の頬を
「うっそぉ……あの距離から一瞬?
騎士様、人間辞めちゃった?」
「……今更だな」
ルーカスは眉根を寄せて
使徒となった者の大半は、
それはさておき、これでこの戦いも決着だ。
残すはラメドと戦うロベルト達の勝敗の行方だが——。
「あちらも決着したようだ」
と、下から跳んで来て、アインの背後に槍を突き付けたフェイヴァが告げた。
両手を上げて
「残念、もっと踊りたかったのになぁ。
——でも、騎士様。
本当の試練はここからよ?」
瞳の色に近い
どことなく、不気味な
ノエルは健在だが、
(彼一人で逆転する手立てがあるとでもいうのか——?)
ルーカスが疑問を
奥の
「人数のハンデに【星】の裏切り。
予想外の
「カツン」と
そうして一番下まで降り立つと、彼は
「……アイン、いつまでそうしてるつもりだ?」
「えー? 死と隣り合わせの
「悪い
「はぁーい。
——ってことで、今回もごめんね?」
それはルーカスとフェイヴァが反応するよりも早く起きた事。
一瞬にして濃い闇がアインの姿を隠し、次の瞬間には、彼女はノエルの隣へ並び立っていた。
二人で囲んでいたのに「してやられた」とルーカスは唇を結ぶ。
フェイヴァも
この場に留まる理由はなくなった。
見下ろすとノエルの元へ歩むイリアの姿が見えたので、跳んで降りて彼女の
フェイヴァも彼女の後ろに
ノエルへ最接近したところでイリアは立ち止まり、ルーカスもそれに合わせた。
「ノエル、〝
イリアが右手に
気丈に振舞っているが、彼女の剣は
血を分けた弟、ただ一人の家族と敵対し刃を向けているのだ。
心を痛めて当然だろう。
ルーカスはその心境を察して、剣を持つイリアの手に己の手を重ね、彼女の剣を強引に下げた。
それから一歩前へ出て、自分の刀をノエルへ向ける。
必要とあらば引導を渡すのは、自分の役目だ。
「聖下、約束通り
戦いの前。
『僕が世界へもたらす変革、〝
「よもや忘れてはいませんよね?
『約束を守る主義』なのでしょう?」
見る角度や当てる光によって色を変化させる、
彼は
「負け……? フ、フフフ! アハハハッ!」
狂ったように笑い声を上げた。
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