第八話 ロベルトが強く在る為の理由 王国騎士と女神の使徒①
ルーカスが【
ロベルトはディーン、ハーシェル、アーネスト、そして
「はああッ!」
意気込むような掛け声に
纏っていた輝きが剣閃の先へ、光の衝撃波が地面を走る。
これは〝
ロベルトはディーンと並走し、ラメドへ向かって駆けた。
前方から連続して飛んで来る光を
ラメドが剣を振り切った直後、目配せでディーンとタイミングを合わせ、左右から同時に斬り込んで行く。
「甘い!」
すかさずラメドの剣が真横へ
驚異的な反応速度にロベルトは舌を巻く。
ロベルトとディーンは風圧により飛ばされた。
その合間を「オレの存在も忘れるなよ!」と、
「
ベートが杖で地を打ち鳴らした。
すると頭上から〝
皆、魔術を回避する行動を取り、ラメドと切り結んだハーシェルも後退していった。
『
飛び
『
後方に
だが、シンがベートへ向けて右手を差し出すと、純白の翼を思わせる光の結界が展開し、魔術から彼の身を護った。
ハーシェルが「ダメか」と舌打ちをしている。
「そら、お返しだ」
先ほどよりも大きな、杖を打ち鳴らす音が聞こえた。
次の瞬間「ゴロゴロ」と雷鳴が響き、空から
一人一人を狙って的確に、
『——母なる大地よ、
アーネストの唱えた結界魔術が、頭上に光の盾を作り出し雷を
お陰で事なきを得るが、ほっと一息つく間もなく、ラメドの
回避した先にはハーシェルの姿があり、そこへ目掛けてもう一発、光が撃ち込まれる。
体を横に
「あっぶね! 使徒ってのはほんと規格外っすね……っ!」
ハーシェルの言葉にロベルトは「ああ」と
「威力・速度・リーチに優れたラメドの神聖剣、無詠唱で発動するベートの高位魔術、タイムラグのない的確なシンの支援。もう一人の少女の能力はまだわからないが、圧倒的に不利な状況だ」
——せめてこちらも大規模な魔術で
(こんな時、アイシャが居れば……)
と、一瞬ロベルトは思ってしまう。
けれどすぐ、そう考えてしまった自分の
(駄目だ、弱気になるな。思い出せ、何のために騎士を
ロベルトは自分が騎士となったきっかけに、想いを
——ハミルトン
家族構成は両親と、歳の離れた弟が一人。
伯爵家は騎士の家系ではなく、商家だ。
長男のため、順当にいけば家を継ぐ立場にあった。
本来であれば、騎士を志すなどあり得ない選択肢だ。
ならば何故、その道を選んだのか——。
魔術の才能があるから、と本人の意思を無視して軍属の道へ進まされた彼女を守るために、ロベルトは騎士になった。
——アイシャとの出会いは幼少期。
商談へ
幼い彼女の容姿は目を
〝一目惚れ〟というやつだろう。
会話を交わせば〝愛想のない、
アイシャはちょっと不器用なだけで、本当は人一倍、好奇心が強く活発な子。
加えて頭の回転が速く
だが、出世欲が強く野心家な男爵夫妻は、アイシャをのし上がるための道具としか見ておらず、彼女が子供らしくあるのを許さなかった。
才能を伸ばすために勉学を強要し、狭い価値観という
羽ばたけぬよう、翼を奪った。
アイシャは——自由を奪われた鳥だ。
ロベルトも伯爵家の後継ぎとして、色々な制約を課される事はあったが、そこから考えても男爵夫妻の行動は異常である。
〝何者にも縛られず、自由に羽ばたいて欲しい〟と。
それが叶わぬのならせめて。
〝アイシャが傷つく事のないように、自分が彼女を守ろう〟とも。
——そんな想いで、騎士となる道を選んだ。
両親の反対は勿論あったが、対話を繰り返し、最終的には納得してくれた。
〝信念に
送り出してくれた父に恥じぬよう、信念と彼女のために生きようとロベルトは
——だと言うのに。
先日の戦いでは、アイシャを危険な目に合わせてしまった。
運よく危機は脱したが、一歩間違えば彼女を永遠に失っていたかもしれない。
あの瞬間を思うと、恐怖心に全身の熱が引いて行った。
(……守れなかったくせに。都合よくアイシャを頼ろうとするなんて笑い
もう二度とあんな事が起きないよう、自分は強くあらねばならない。
ロベルトは奥歯を噛み締めて、対峙する
負傷した【
深手のようだが、一瞬のうちに治る様子を見て「シンは治癒術も厄介だなぁ」とぼやくディーンがの声が聞こえた。
再び、ラメドが閃光を放ち、ベートが杖で地を叩いて鳴らす音が響く。
ロベルトは被弾しないよう攻撃を
ラメドとベートの猛攻を抜けて、刃を届かせるための策を
「【星】のお嬢さんが動かないうちに、ベートかシンのどっちか一方……いや、狙うなら
ディーンの言うように、
しかし、圧倒的物量で押し切るには火力が足りず、接近戦で優位を取るのも困難な状況。
持てる
(さて、どうするか……)
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