第四話 忠義の騎士
教皇ノエルを追ってやって来た
「僕が世界へもたらす変革、〝
戦闘態勢を取った
ルーカスは
「ルーカス殿、お相手願います」
と、名指しで剣先を向けてくる男を
神聖騎士団長アイゼン・シルヴェスター。
一年前、ノエルの教皇就任と同時に表舞台へ現れ、元帥の地位に
当時、無名だった彼が
隙のない構えや、鍛え抜かれた身体からも
横から「団長」「ルーカス」と呼ぶロベルトとイリアの声が聞こえて、ルーカスは視線をそのままに告げる。
「聖騎士長アイゼン殿の相手は俺がしよう。すまないがロベルトは指揮を
「
「誰が相手だろうと、やる事は変わらんさ」
「ここが大一番の見せ場っすね!」
「
「治癒と援護は任せて下さい!」
力強いロベルトの返答と、ディーン、ハーシェル、アーネスト、リシアの意気込む頼もしい声にルーカスは口角を上げた。
「頼んだ。イリアは——」
「アインの相手をするわ。彼女も私をご指名だし、何より彼女の持つ力は
「……
銀糸の髪を
「そうこなくちゃ! 一緒に踊りましょう、レーシュ♪」
「戦いは遊びじゃないのよ」
アインはまるで舞踏会にでも来たかのように、
程なくして【
ロベルト達とフェイヴァも五人の使徒へ向かって行き——戦いが幕を上げる。
周囲から戦闘音が聞こえ始める中、ルーカスは剣を眼前に構えたアイゼンと、
ルーカスは相手を探り、一瞬の動きも逃さぬように、
紫みを帯びた
(——やはり、隙が無いな)
彼の堂々たる
気を
——お互い攻め込む機が見当たらないまま、時間が過ぎていく。
「
との言葉を皮切りに、アイゼンが動いた。
勢い良く地を蹴り、身に着けた鎧の重みを一切感じさせない
「ぬんッ!」という掛け声の下、鍛え抜かれた剛腕が振りかぶられ、剣の軌道がルーカスへと迫った。
「——ふっ!」
アイゼンの動きを追っていたルーカスは、瞬時に刀の刃を斬撃へ打ち合わせ、受ける。
見た目に相応しく、重みのある一撃。
刃がぶつかる金属音と火花が散り、衝撃が刀を通してルーカスの腕へ伝わった。
力比べでは分が悪いと
間を置かずアイゼンが追って来て、胴を狙い剣が振り抜かれた。
ルーカスは地に足が着いた瞬間、もう一歩後ろへ下がる。
そして胴を
下段から斬り込んでいく。
アイゼンは空振りに終わった勢いを殺さずそのまま体を一回転させ、ルーカスの刀を正面から受け止めると——力で強引に剣を横へ振り切った。
ルーカスの身体が押し
若干の痛みは走るが、傷は浅い。
ルーカスは身体のバランスを崩さぬよう体勢を立て直すと、次に来るであろう
すかさず、
剣筋に合わせて刀の角度を変え、刃を
アイゼンの剣は一言で表せば剛。
(受けて力で押そうとすれば、先ほどのように押し切られる。
極力、腕力勝負には持ち込まず、流れを
ルーカスはその事に注力した。
一撃が重い分、容易な事ではないが、機動力の高さはルーカスにまだ分がある。
ルーカスは利点を
繰り出される剣技を
刃を合わせる度に「ガキンッ」と金属の不協和音が響いて火花が起こり、一進一退の攻防が続いて行った。
「やはり剣の打ち合いだけでは、決定打に欠けてしまうか」
と、
——何をするつもりなのか。
警戒心を
「その若さで見事な腕前です、ルーカス殿」
アイゼンが持っていた剣の刃を下へ向けて、涼しい顔で告げる。
息一つ乱さずに皮肉もいいところだ、とルーカスは呼吸を整え、
そして、手加減をしないと言っておきながら、アイゼンはまだ全力を出していないという確信がある。
剣の腕が立つのは打ち合いでも十分に思い知ったが、ノエルに仕えているからには男も
「……貴方も使徒なのだろう?
構えを維持したまま、瞳を細めて問う。
すると男は一瞬
けして
「これは失礼を。気分を害したのなら謝りましょう。貴方を
アイゼンが剣の
「期待にお応えして、我が
同時に周囲にマナを含んだ風が吹き荒れた。
風はアイゼンの両脇に渦を巻いた竜巻を発生させ、あるものへ変化して収束していく。
——それは白と黒。
「……なるほど。それが貴方の力か」
「私が
炎を
端的に見れば三対一。
かなり分の悪い戦いだ。
刀の
しかし
ルーカスは立ち塞がる困難に打ち勝つため、気持ちを強く持って己を
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