第三話 深淵の地に、女神の使徒(アポストロス)と獅子が立つ
テットと対峙するシャノンとシェリルを残して、ルーカス達はラメドの先導に従い神殿の中へと入って行った。
神殿内部の造りはパール神殿とそれほど変わりない。
白い壁に高い天井、白く太い丸柱が間隔よく立ち並ぶ
階段の終着点には、壁画の描かれた扉——女神の血族にしか開錠出来ぬよう、魔法陣によって封印の
その先は
前回のように世界樹の根が張った、薄暗い空間があるとばかりルーカスは思っていたのだが——。
地響きを立てて開かれた扉を抜ければそこは、視覚化したマナが満ちて、床も、壁も、天井も、一面が銀色に
恐らくは
——
この場に足を踏み入れた誰もが、美しい景色に目を奪われるに違いない、とルーカスは息を飲んで思った。
その証拠に、仲間達は足を止めて景色に
「なんて綺麗なところ……」
「これ全部、
「ああ、多分……な」
リシアが
「こんな場所が現実に存在するとは、夢のようですね」
「
ロベルトとディーンは美しさだけでなく、その価値にも
暮らしを豊かにする上で欠かせない資源だが、
希少価値が上がっているため、そんな風に考えてしまうのも
「……やはり無知は罪ですね」
前を歩いていたラメドがどこか
ルーカスがイリアを見ると、彼女は浮かない表情を浮かべている。
含みのあるラメドの言葉とイリアの表情——それらの意味は、すぐに知る事となる。
「綺麗だろう?
ラメドが歩んで行った方向から、
視線を向けると、広場のように開けた場所に並び立つ
ノエルはゆったりとした動きで
「ここにある
この空間を埋め尽くす輝きが、世界を生かすために捧げられた〝彼女達〟のものである事を。
「んなぁ!?」
「そんな……っ!」
皆に動揺が走り、ハーシェルの叫びと、リシアの悲鳴が聞こえた。
(術式と何らかの関わりはあるだろうと思っていたが……)
哀しい事実に、ルーカスも顔を
動じていないのは、この事実を知っていたであろうイリアとフェイヴァだけだ。
「一体どれ程の命が、犠牲に……」
長い
使徒達の元へ降り立ったノエルが「……そうだね」と宙を
「
最初はそれほど
……まあ、結構な人数が
ノエルが下ってきた階段の上に
恐らくはあれも、
「僕は姉さんを、彼女らと同じ物言わぬ鉱石になどさせない」
ノエルが歯をくいしばり、鋭い感情を宿して冷え込む
「そのためならば、喜んで世界の敵となろう!」
彼は両腕を広げて、身震いのする
「ノエル!」
一歩前に出たイリアが悲痛な
「最早言葉は必要ない。僕を止めたければ、力で制してみせろ!」
ノエルの言葉に
届かぬ想いに、イリアが眉根を下げて唇を噛んだ。
——戦いは避けられない。
ルーカスはイリアの隣に並んで立つと、
「俺達も
刃先をノエルに向けて、
「信念を
そうすればルーカスに呼応した仲間達が次々と得物を手に取って構え、両陣営が
「どちらの想いが勝るか、
ノエルが不敵に笑う。
それから「……ああ、それと」とおもむろにルーカスの魔術器を差し示すと——。
『——
魔術器から機械の音声が聞こえた。
ルーカスが視線を落として見れば、本来は
「君の〝力〟は女神の代理人である僕の前では使えないからね。その魔術器が、どこで作られた物であるのか、忘れてはいないだろう?」
勿論、覚えている。
魔術器はルーカスが教団に
〝破壊〟と〝崩壊〟——双方の力を
「
(確かに痛手ではあるが……)
ルーカスは
「丁度いいハンデだ。俺はまだ、貴方の説得を
「
ノエルが口角の端を上げて笑い——。
「聖下、お下がり
と、ルーカスからノエルを隠すように一人の男が間に立った。
がたいの良い体に白銀の鎧を
抜かれた彼の剣先がルーカスへ向けられる。
「ふふっ、私はレーシュと遊びたいな♪」
立ち並んだ使徒のうち、鈴のような声色の少女、ゴシック調の黒のワンピースをくるりと
そして——。
「今こそ【
長い海色の前髪で若葉の様に
彼は以前見た
「こいつらはオレ達が片付けます。
——
燃え盛る炎のように赤く長い髪、
威圧的な視線で射抜いて来る青年——。
十色の
「【
糸のように細められた
「……ボクは【死神】。女神様の意思に従い、命を刈り取るだけ」
中性的な顔立ちの使徒ヌン——背教者を
雪のように白い肌は生気があまり感じられず、夕焼けを思わせる
「すべては……【
主様は、傷つけさせない……!」
ウェーブの掛かった
——総勢、七人の
「さて、英雄殿と王国騎士のお手並み拝見と行こう」
彼らの後ろで
ノエルに手を伸ばすためには、
「存分に
そして最期には勝ちを掴み取る、俺達の雄姿を——!」
ルーカスは決意を口に、ブレぬ意思で刀を握り締め、
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