第一部 第五章 女神のゆりかご
『間奏曲 悪魔達の狂詩曲≪ラプソディ≫①』
闇——魔に
闇はいつも、光の裏側に存在している。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
聖歴
夜の色濃い闇に
明かりは所々に置かれた
湿気が
「ふんふんふーん♪ いい
そんな場所に似付かわしくない陽気な鼻歌と、鈴を鳴らしたような声が響く。
少女は
「おいお
男は少女に気付くなり、床と一体化していた顔を上げて怒鳴り出す。
少女と同じ赤と青の
「そんな事言われても、私は情報を渡しただけだし? 決断したのはそっちでしょ?」
少女は首を
自分はただ、舞台を整えて役割を提示しただけ。
男が奥歯を噛み締めて、
「クソ、クソォ! あの悪魔が、戦姫がいなけりゃうまく行ってたのに! こんな失態、母上に、
ううう、怒られるのは、嫌だああぁ!」
いい歳して泣きべそを
けれど、叫び声だけは素敵だと、少女は思った。
「あはっ! いい声ね♪
その調子で、美しい
「お前、何言って——」
少女は唇を
たちどころに
「ぎゃああぁ!」
闇の中から赤い眼を光らせた灰毛の獣が現れ、男の
「痛い、痛いぃィ!?」
獣は二頭。
「あがぁあッ!! やめ……やめてくれぇ!!」
「だーめ。出番の終えた役者が居座ってたら、舞台は進まないでしょ?
命
追い打ちと言わんばかりに再度指を鳴らして、もう一頭の獣が現れると、男の顔が絶望に染まった。
「あぎゃあぁあ!!」
獣が牙を突き立てる
やっぱり、絶望は甘美である、と。
男が静かになるまで、そう時間は掛からなかった。
一部始終を見届けた少女は立ち上がり、獣を出現させた時と同じように指を
そうすれば獣は黒い
「さよなら、
霧が晴れるとそこに少女の姿はなく、獣に
——〝光〟と〝闇〟は表裏一体。
「これであっちのお使いは終わり。ノエル様のところへ戻らなくちゃ」
少女は二つの間を行き
〝光〟と〝闇〟のために、舞台を整えるのが少女に与えられた役割。
役者を
そうやって
そして、これまでの苦労と努力が実を結ぶ瞬間は、もう間もなくだ。
「さあ、幕を上げましょう。あの方へ
待望の時が訪れる
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