『幕間 ノエルからイリアへ宛てた手紙』

 愛する姉さん

 イルディリア・フィーネ・エスペランドへ



 記憶を取り戻したみたいだね。


 全てが終わるまで静かに待っていて欲しいけど、姉さんの事だから、静観してはくれないだろう。


 けれど、聖地巡礼ペレグリヌスの祭儀も、終着点を残すのみだ。

 もうすぐ僕らの犠牲の上に成り立つ楽園は、正しく形を変える事になる。


 姉さんにも、誰にも邪魔はさせないよ。


 でも、呪詛じゅそやぶってまであらがおうとする姉さんに、チャンスがないのはフェアじゃないよね。


 丁度、聖地巡礼ペレグリヌス完遂かんすいを前に、国をあげて前祝いの祝宴しゅくえんを開くつもりだったから、まずはそのうたげへ招待するよ。


 他国からの賓客ひんきゃくを呼ぶつもりはないけど、姉さんは特別だ。

 誰を連れて来ても、何人で来ても構わないよ。


 枢機卿団カーディナル……己をかえりみぬ、悪辣あくらつみにく咎人とかびと達を断罪にしょうたげの、特等席を用意しようじゃないか。


 女神が重んじる慈愛じあいの意味を都合よく解釈かいしゃくし、甘い汁をすす俗物ぞくぶつに、女神の代理人としてほどこ慈悲じひを、見届けて欲しい。


 僕らをかこ牢獄ろうごく

 地獄と呼ぶに相応ふさわしい第二の故郷、アルカディア神聖国。


 あまり長くは待てないけれど、聖都フェレティにある教団本部で姉さんの帰郷ききょうを待っているよ。



 ノルディエル・ルクス・エスペランド

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