第二十一話 微睡む者を救う耀き
探知魔術と人海戦術により、
傷の治療を受けているアイシャが「目覚めない」と聞かされたからだ。
場へ
元より色の白いアイシャの肌が、血色を失い青白く見える。
その横には
「アイシャ、しっかりしろ!」
ロベルトが
ルーカス、そして行動を共にしていたハーシェルとディーンは、水を含んで重くなった土を踏みしめて、彼らの側へと歩み寄った。
「……アイシャの
「
ルーカスの問い掛けに、アーネストは眉間へ
「毒の可能性は疑ったか?」
「はい、ディーン先輩。
「なら何が原因なんだよ! ちょっと
ハーシェルの叫び声が、雨音に負けず響いた。
しかしこの場に居る者は、その答えを持ち合わせておらず、沈黙に雨の音が
ルーカスは
思い当たる
「……
皆の視線が、ルーカスへと集まった。
魔神の力にマナが
ジュリアスが魔瘴石を
瘴気は
人体に悪影響を及ぼす可能性もゼロではない。
「——イリアなら、何か知っているかもしれないな」
隠された真実に一早く触れていた事から、この手の話題は彼女が詳しいだろう。
「イリアさんなら、アイシャを……治癒、出来るでしょうか」
ロベルトが取り
いつもは
二人は幼馴染。
そこに特別な感情があったとしても不思議ではない。
イリアは
断言は出来ないが、彼女ならば——という期待があった。
「ともかく一旦、オンブル
雨の中いつまでもこのような場に
ルーカス達はアイシャを休ませ、イリアと合流するためにオンブル砦へと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
移動中にリンクベルを鳴らしてイリアと連絡を取れば、ルーカス達が到着した時には彼女も砦へ帰還していた。
アイシャの診察は一班の団員が見守る中、ベッドの備え付けられた救護室で
「……瘴気が体内へ入り込んだのね。多少なら問題ないけど、瘴気は私達にとって〝毒〟でしかないから」
アーネストから症状を聞き、アイシャを
「解毒も解呪も効きませんでしたが、どうすれば……?」
ベッドへ寝かせられたアイシャに寄り添ったロベルトが、表情に影を落として問いかけた。
雨で
不安を
「私が宿す【太陽】の
イリアはアイシャの手を握ると、
『——聖なる清めの賛歌、
イリアの腹部、丁度、聖痕の刻まれた辺りが白い輝きを放つ。
アイシャの下には魔法陣が出現し、その身体を純白のマナが包んだ。
まるで陽光の
『聖なる光、魔を
〝
その
術の余波だろうか、部屋の空気が澄み渡り、清らかになるのをルーカスは感じた。
光が収まるとイリアの
「……うん、これでもう大丈夫。しばらくすれば目を覚ますと思うわ」
アイシャの手を解放し、見守る面々へそう告げた彼女の表情は、まるで
アイシャを見ると、肌の
中でもロベルトとハーシェルの反応が
「本当に、無事で良かった……」
「っすね。一時はどうなる事かとヒヤヒヤしたっすよ」
ロベルトはイリアが離したアイシャの手を代わりに握ってほっとした表情を浮かべ、ハーシェルは安堵感から気が抜けたのか、「はー、マジでビックリしたぁ」と大きな息を吐きながらその場に座り込んだ。
「ありがとうございます、イリアさん」
「どういたしまして。ロベルトさんは風邪を引かないように、気を付けてね」
床にはロベルトの衣服から
そんな一コマに、ディーンが意味深に含んだ笑いをして、
「副団長とハーシェルの取り乱し
同意を求めるように、こちらへ視線を送る幼馴染に、ルーカスは深いため息をつく。
「ディーン、
「おっと、
ルーカス自身も
アイシャの治療を終えたイリアが、〝
神力を扱える
現状では、浄化のための人員と手段が限られる。
両者の危険性を速やかに周知し、瘴気や魔瘴石を発見した際は、細心の注意を払う必要があるだろう。
ルーカスはこの件の報告とこれからの行動について、総大将であるゼノンと指揮官の父レナートに相談するため、救護室を後にした。
アイシャの事はロベルトを始めとした団員に任せておけば大丈夫、とその目覚めを待たずに。
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