第十九話 もし、叶うのなら
自分の事を娘の様に想ってくれるルーカスの両親の優しさに触れて——。
「……ありがとうございます、ユリエルさん、公爵様」
イリアは
「ダメよ、イリアお
「
双子の姉妹がレナートの横へ並んで、
「〝
「はい! 国を挙げての盛大なイベントになる事、間違いなしですね」
馬上から楽しそうな声が降り、双子達から一歩引いた場所に立つリシアが、夜を思わせる
彼らは全てを知っているはずなのに、同情の目を向けるどころか、
(ルーカスが優しくて強いのは、愛情深いご両親と家族、ちょっと癖はあるけど思いやりのあるゼノン王子やディーンさんみたいなお友達がいたからだね)
彼らの温かさに触れて、語られる未来に想いを
イリアの瞳から熱を
(——生きたいよ)
女神様の血を継ぐ一族、【女教皇】の
(どちらも私。使命を
……だけど——)
使命を果たすため、何事も
ルーカスと出会って様々な感情を知り、想いを通わせて得た幸福。
知らない頃には戻れない。
だから、強く願わずにはいられなかった。
(……もし、叶うのなら。
使命なんて忘れて、どちらでもないただの〝イリア・ラディウス〟として生きたいよ。
ルーカスと、
——頬に流れた雫を
「イリアちゃん、辛かったらいつでも言うのよ」
「……はい、お
最悪の事態を考えて気持ちが沈んでしまったけれど、可能性はある。
親子なだけあって、笑った顔がそっくりだ。
その後、
公爵様がどことなく
見た目にそぐわず可愛らしい一面を持つ公爵様に、ほっこりした気持ちになる。
機会を見て「お
——
雲行きの怪しかった空からは
「レーシュ様、こちらを」
一部始終を静観していたフェイヴァから、教団で使用していた純白の
イリアは「ありがとう」と告げて衣服の上へ
「……大丈夫ですか?」
彼は振りしきる雨が衣服を
薄暗いせいか、赤い
相変わらず感情の読めない無表情で言葉数も少ないが、長年の付き合いもあってフェイヴァが考えている事は大体わかる。
あんな風に人前で涙を見せるなんて以前には考えられなかった事だから、心配してくれたのだろう。
イリアは
「大丈夫、覚悟は出来ているもの。後悔のないように、私は歩むだけよ」
どのような結末を迎える事になろうとも——。
女神様の意思を継ぎ、私の意志で
「そうですか。ならば盾として、役目を果たす
フェイヴァが
「——
ゼノンが黒馬を
魔術師隊は文言を唱え始め、レナートを皮切りに銀の鎧を
イリアも左腕を
(……ルーカス)
彼も今頃、別動隊として
過去の
(彼に、そして何より自分に恥じないように、私も
イリアは宝剣を
(願わくば、この身に宿る力と歌が
開戦の
そうして優位に立った王国軍は、敵軍ど真ん中へ食い込んだルーカス
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