第六話 イシュケの森の異変
ナビアの女王との
(イシュケの森へ行き
そしてマナ欠乏症の原因を探るため、イリアから進言のあったパール神殿を目指そう)
出発前にルーカスは特務部隊を
一班のルーカス、ロベルト、アイシャ、ハーシェル、アーネストの五名。
それとイリア、シャノン、シェリル、リシアの四名。
以上、計
それ以外の班をバランスよく
——そうして準備を整えたルーカス達は、首都ザフィエルを出発。
主力の九名の陣形は、最前列をルーカスとハーシェルが担当。
中列には殲滅魔術に
神殿への道のり——イシュケの森の中は、
陽の当たる時間であるにも関わらず薄暗く、
「やな感じだなぁ。リエゾンの坑道もそうだったすけど、薄暗いところってあんまり好きじゃないんすよね」
「気が
陣形を
「そうっすよね? せめて明るく楽しい話題で、気分を上げて行かないとやってらんないっすよ」
「まあ、一理ある」
ナビアの現状を
前向きな思考と言うのは、時に活力になる。
「ってことで、団長! 〝救国の英雄〟と〝旋律の戦姫〟の
にやりと口角の端を上げて歯を見せたハーシェルが、
ルーカスは自分を
こういう時の彼らは、面倒この上ない。
「
「えぇー……あんな公開大告白しといて?」
「……それはそれ、これはこれだ」
人目のある船上で想いを伝えてしまったがために、イリアとの事は特務部隊の団員に広く知れ渡ってしまった。
好奇の目で見られる事は覚悟していたので、後悔はない。
が、
船旅の
「少しくらい良いじゃないすか。ね、イリアさん?」
後頭部で手を組み合わせたハーシェルが後ろへ振り返った。
話題が急に飛び火したイリアは「え!?」と驚きの声を上げている。
ルーカスも振り返ってイリアを見れば、その声に反応した皆の視線が集まっており——たちまち顔を赤へ染めていった。
「えっと、ええっと……そうだ! 暗いのが苦手なら照らしてあげるね」
イリアが慌てふためいた様子で、右の手のひらを胸の位置に
すると、太陽に
「おー。さっすが団長の恋人。気が
ハーシェルの発言は無視して、球体の輝く様をルーカスが
「——団長、前方に魔犬の反応があります。数は五」
探知魔術を発動中のアイシャから、
ルーカスは視線を落とすと、
その後イリアがほっと息を吐く姿を見ながら前方へと向き直り、左腰に帯刀した刀の
「おしゃべりは終わりだ。ハーシェル」
「ういっす」
ハーシェルも剣帯から引き抜いた双剣を構えて、
——そうして、道中で魔獣と遭遇して戦闘になる事もあったが、アイシャの迅速な知らせで的確に対処していった。
時に
それぞれの役割をこなして魔獣を倒し、凍結された
各部隊とも連携を取って、
パール神殿のある
休まず進み、情報提供のあった
ルーカス達は、
まるで燃え
「何ですか? これ……」
「マナ……ですよね。マナが魔術の属性に感化されて、
「……輝きもなく、真っ黒。闇系統の魔術でも、こんなの見たことない」
後方からリシアと、
異変——それは、視覚化して大気を舞うマナが、輝きを失って黒く染まっていたのだ。
「気味が悪いですね」
「……それに、心なしか息苦しさが増した気がします」
両翼を守るアーネストとロベルトも言葉を
イリアの作り出した
陽が
どんよりとした空気が
『
マナと同義の物質——
大気を舞うこれが、そうなのではないかと考えた。
「イリア、これが……
「……うん。
あの夜は言葉に詰まっていたイリアが、迷いなく答えた。
振り返って見れば、揺るぎない
——
(記憶の
それは喜ばしい事であった。
しかし、教皇ノエルやディーンによって得ていた断片的な情報から、
(イリアは教皇ノエルの姉で、その事実は
教皇は
ディーンもまた内部
彼女を取り巻く環境は、考えれば考えるほど、不穏の影しかない。
「ルーカス、見えて来たよ」
耳に心地よい
気付けばイリアが横に並び立っており、前方を差し
指先を追うと、木々の合間から青色が見えた。
(
パール神殿がある
ルーカスは
——すると、
ナビアの騎士の姿は周囲に見当たらず、
そこから断続的に魔獣——
「
「大分壊して来ましたが、まだあったのですね」
「アイシャ、周囲の状況はどうだ?」
「魔獣の反応がまばらにありますね。この近くの
「各部隊からも今のところ、新たな
アイシャの返答に続いて、ロベルトが告げた。
ルーカスはうなずくと、
震えは——ない。
ここまでの道中、
「さっさと
告げれば「了解!」と気のいい返事が
ルーカスは立ち止まる時間を惜しんで、
目的地であるパール神殿は目と鼻の先だ。
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